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AIエージェント導入の前にやるべき業務棚卸し|自動化すべき仕事・すべきでない仕事

公開日

2026年9月14日

更新日

2026年10月16日

AIエージェントを導入する前には、まず日々の仕事を工程ごとに書き出す「業務棚卸し」を行います。仕事の名前だけで判断せず、どこで情報を集め、どんな処理をして、誰が確認しているかを整理することが出発点です。

AIエージェントという言葉に統一された定義はありませんが、この記事では、目的に応じて複数の手順を計画し、必要なツールを使って処理する仕組みを指します。自律性や操作できる範囲は、製品や設定によって異なります。

この記事では、週次レポートを例に、業務を書き出すところから、AIに任せる工程の選び方、試行前に決めることまでを順に説明します。例は説明用の想定であり、特定の企業の導入実績ではありません。

この記事のポイント

  • 業務棚卸しは、普段の仕事を「何を受け取り、何をして、誰に渡すか」まで書き出すことです。
  • 仕事を工程に分けると、AIに任せる部分と、人が確認する部分を具体的に決められます。
  • 候補を選ぶときは、手順の決まり方、誤ったときの影響、例外の多さ、扱う情報を確認します。
  • 許す操作、停止条件、作業記録、元に戻す方法を整えてから、小さく試します。

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業務棚卸しとは何か

業務棚卸しとは、担当している仕事の内容や進め方を整理することです。AIの導入を検討する場合は、「週次レポートを作る」「問い合わせに対応する」といった業務名から、実際の作業へ一段細かく分けてみます。

たとえば週次レポートには、データを取り出す、集計する、説明文を書く、内容を確認する、関係者に配布する、といった工程があります。それぞれに必要な情報、担当者、確認方法を書き添えると、どの工程を支援してほしいのかが見えてきます。

最初から全社の業務を詳しく調べる必要はありません。まずは担当部署で繰り返している仕事を挙げ、負担がかかっているものを1つ選びます。現場の担当者に、通常の手順だけでなく、やり直しや例外が起きる場面も聞くと、実態に合った棚卸しになります。

週次レポートを例に、仕事を工程に分けてみる

ここでは、社内向けの週次レポートを作る仕事を想定します。最初の演習では、架空のデータや利用が認められた公開情報を使い、実際の顧客情報や秘密情報を持ち込まない形で考えます。

  1. データを取り出す。どのファイルやシステムを参照するか、対象の期間はいつかを決めます。必要なデータがそろわない場合の対応も確認します。
  2. 数字を集計する。件数や合計、前週との差など、何を計算するかを書き出します。計算式や集計条件を残し、同じ手順で結果を再現できるようにします。
  3. 説明文の下書きを作る。確認済みの集計結果をもとに、変化した点を文章にします。数字が増減した理由を、根拠がないまま補わせないことも条件にします。
  4. 担当者が内容を確認する。元データとの一致、期間や単位、説明の根拠を確かめます。不明な点は担当者へ戻します。
  5. 関係者へ配布する。承認された内容を、決められた相手に送ります。下書きの作成と配布は、別の操作として扱います。

この例なら、最初は「指定したデータを読み取り、説明文の下書きを作るところまで」を試行候補にできます。集計や文章の確認、配布の判断は人が行います。工程によっては、既存の表計算の機能や定型処理で足りることもあるため、必要な処理に合う方法を選びます。

棚卸しで決めたいのは、仕事全体を自動化するかどうかだけではありません。任せる工程、その前後に必要な確認、うまく進まなかったときに戻す先を明らかにします。

業務を自動化する仕事と人が担う仕事に仕分ける業務棚卸しのイメージ

任せやすさを考える4つの観点

工程が見えたら、次の観点で試行候補を確認します。これは和からの棚卸し用の整理であり、最終判断には業界ルールや社内規程も反映します。

手順と完了条件が決まっているか

毎回の進め方が似ていて、何ができれば完了なのかを説明できるかを見ます。これが「定型性」です。週次レポートなら、参照するデータ、集計方法、出力形式が決まっているほど、試行時の結果を確かめやすくなります。

誤ったときに、どんな影響が出るか

誤りや遅延が、顧客、売上、人の安全や権利などにどのような影響を与えるかを考えます。これが「影響度」です。社内で確認する下書きの作成と、確認なしで社外へ送る操作では、同じ文章を扱っていても影響が異なります。

通常の手順から外れることが多いか

データが欠ける、入力の形式が変わる、担当者への相談が必要になるなど、例外が起きる場面を挙げます。「例外頻度」を考えるときは、起きる回数に加えて、例外だと判別できるかも確認します。判別できないまま処理を続ける仕組みには注意が必要です。

どんな情報を扱うか

個人情報、秘密情報、未公表情報などを扱うかを確認します。これが「機密性」の観点です。社内で閲覧できる情報でも、利用するAIサービスへの入力が認められているとは限りません。入力できる情報と利用できるツールを、社内ルールに照らして確認します。

一般に、手順が決まり、誤りの影響と例外が少なく、機密性が低い工程は、最初の試行候補にしやすくなります。ただし、この条件だけで実行を許可できるわけではありません。後述する権限や停止条件も合わせて確認します。

候補が複数あるときは、定型性と影響度で整理する

複数の候補を見比べるときには、「定型性」と「影響度」の2軸で整理する方法も使えます。次の表は、試し方を考えるための目安です。

手順の決まり方 誤りの影響が比較的小さい 誤りの影響が大きい
定型的 読み取りや下書き作成など、範囲を絞って試行する候補 人の承認を含め、試行できる範囲を個別に検討
例ごとに進め方が変わる 情報整理や案の作成など、補助的な利用から検討 初期の自動実行候補から外し、人が判断する工程を明確にする

この表だけで採否を決めず、例外や扱う情報も確認します。同じ業務名でも、工程や許す操作が変われば、適した使い方は変わります。

人の確認を残す仕事・工程

重大な意思決定、人事評価、法的・倫理的判断、人の安全や権利に大きく影響する対応は、初期の自動実行候補から外します。AIを補助に使う場合も、誰が最終判断をし、判断の理由をどう説明するか、異議や問題をどこへ申し出られるかを明確にします。

身近な業務でも、次のように工程ごとの確認が必要です。

  • 議事録:録音への同意や情報の扱いを確認し、話者、数値、決定事項が正しいかを人が点検します。
  • 定型レポート:参照元と集計条件を決め、数字や説明を元資料と照合します。
  • 問い合わせ対応:回答できる範囲を決め、本人確認が必要な内容や例外は担当者へ引き継ぎます。送信前の承認も検討します。
  • データ収集・整理:取得する権限、取得元の規約、保存先、情報の利用範囲を確認します。

例外が多い業務でも、通常の工程と例外対応を分けて検討できます。その場合は、どの条件で処理を止めて人へ戻すのか、例外を見逃した場合に何が起きるのかを、試行前に確かめます。

試す前に、操作の範囲・停止条件・記録を決める

候補が決まったら、実際に動かす条件を整理します。週次レポートの例でも、「下書きを作る」と「共有ファイルを書き換える」「メールを送る」は別の権限です。必要な範囲に絞って設定します。

  • 許す操作と禁止する操作:閲覧だけか、下書きの作成までか、更新・送信・削除も含むかを具体的に決めます。
  • 停止条件と元に戻す方法:データの不足や想定外の出力があった場合に停止できるか、変更を元に戻せるかを確認します。戻せない操作は、実行前の確認を含めて慎重に扱います。
  • 作業記録と責任者:参照した情報、処理内容、実行した操作、人が承認した箇所を記録し、問題が起きたときの確認先を決めます。

作業記録は「ログ」とも呼びます。後から何が起きたかを追えるようにするためのものです。ログ自体に秘密情報などが残る場合もあるため、保存内容、閲覧できる人、保存期間を社内ルールに合わせます。

1業務の記入例を作り、小さく試す

最後に、ここまで決めたことを1業務分のメモにまとめます。以下は、週次レポートの下書きを作る場合の記入例です。実際の業務では、利用するツールと社内の確認手順に合わせて調整してください。

  • 始める条件と入力:担当者が確認した対象週のデータがそろったら開始する。初回の演習は架空データで行う。
  • 許す操作:指定したデータの読み取りと、担当者向けの下書き作成まで。元データの更新やメール送信は行わない。
  • 期待する出力:集計結果、対象期間、参照元が分かる下書き。数字の増減理由は、根拠がある範囲で記載する。
  • 確認する人と合格基準:担当者が元データと照合し、期間・単位・計算・記述に問題がないか確認する。
  • 停止する条件:必要なデータが欠けている、形式が想定と違う、参照元を確認できない場合は、担当者へ戻す。
  • 記録と戻し方:入力に使ったデータ、出力、修正内容を定めた場所に保存する。問題のある下書きは配布せず、担当者が修正または作り直す。

試行中は、下書きができるまでの時間だけでなく、人が確認・修正した時間、誤り、例外、差し戻しも記録します。同じような仕事を従来の方法で行った場合と比べると、工程全体で負担が減ったかを確かめやすくなります。

結果を見て、続ける、条件を変えて試す、中止する、のいずれかを判断します。最初に試す業務は1〜2つに絞り、確認できた範囲から広げます。任せたい工程と必要な確認が明確になってから、その条件を満たすツールを比較すると、導入の目的に沿って選びやすくなります。

確認に使った一次情報

確認日:2026年8月21日。実装時は、利用する製品の最新仕様・契約条件と、自社の情報セキュリティ・法務要件も確認してください。

よくある質問(FAQ)

Q1. AIエージェントと普通の生成AIは何が違うのですか?

用語の使い方は製品ごとに異なります。この記事では、単発の応答だけでなく、目的に応じて複数の手順を計画し、ツールを使って処理する仕組みをAIエージェントと呼んでいます。自律性と権限の範囲を製品ごとに確認してください。

Q2. まずどの業務から試すべきですか?

定型的で影響と例外が少なく、機密性が低い業務から検討します。まずは読み取り専用、社内向けの下書き、人の承認を挟む形に絞ると、試行時の影響を抑えやすくなります。

Q3. 例外が多い業務は諦めるしかないですか?

業務を定型部分と例外部分に分け、例外を検知したら人へ戻す設計は検討できます。ただし、例外を検知できる条件と、見逃したときの影響を事前に試験してください。

まとめ|工程を書き出してから、任せる範囲を決める

業務棚卸しでは、仕事を「何を受け取り、何をして、誰に渡すか」まで書き出します。週次レポートなら、データ取得、集計、下書き、確認、配布のように工程を分けることから始められます。

工程ごとに定型性・影響度・例外頻度・機密性を確認し、人の確認を残す場所を決めます。許す操作、停止条件、ログ、戻し方まで整理したうえで小さく試し、人の確認・修正時間も含めて効果を確かめましょう。

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<文/和から株式会社 生成AI活用講師>

<監修/和から株式会社 堀口智之>

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