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PISA2025の日本の結果|3分野OECD1位でも低得点層が増えたのはなぜ?

公開日

2026年9月16日

更新日

2026年10月12日

この記事について(2026年9月26日確認)
「家庭環境と得点の関係」の表で、家庭背景が低い25%層の科学得点のOECD平均を「記載の範囲で未確認」としていましたが、国立教育政策研究所の資料に446点と記載されていたため訂正しました。あわせて、LDWの557点は2026年9月に公表された「コンピュテーショナルな問題解決能力」部分の得点であることを追記しました。

この記事のポイント

  • 日本は3分野でOECD加盟国中1位:数学525点、読解力503点、科学538点でした。
  • 低得点層は3分野すべてで増加:順位や平均点だけでは見えない変化が起きています。
  • 平均だけでは、中身の変化は見えません:得点の広がりや、下位層の割合も一緒に見る必要があります。

まず結論|日本は高い水準を保った一方、低得点層が増えた

PISA2025で、日本は数学・読解力・科学の3分野すべてでOECD加盟国中1位でした。

ところが、同じ資料を見ると、低得点層の割合は3分野すべてで有意に増加しています。読解力では、平均得点も2022年より13点下がりました。

つまり、日本全体の水準は依然として高いものの、学習についていくことが難しい層が増えているということです。

この記事では、公表された平均点・順位・習熟度別の割合を見比べ、日本の結果から何が読み取れるかを確認します。

PISA2025の日本の結果|数学525点・読解力503点・科学538点

まず、国立教育政策研究所(NIER)が公表した結果を確認します。PISA2025では科学コンピテンシーが中心分野となり、新領域「デジタル世界における学習(LDW)」も実施されました。

分野 日本の平均得点 OECD加盟国38か国中 全参加国・地域91中 OECD平均 2022年との比較
科学コンピテンシー 538点 1位 5位 482点 −9点(有意差なし)
読解力 503点 1位 4位 461点 −13点(有意に低下)
数学的リテラシー 525点 1位 5位 463点 −11点(有意差なし)
デジタル世界における学習(LDW) 557点 1位 4位 記載の範囲で未確認 新領域のため比較なし

「有意差あり」とは?

有意差があるとは、「偶然のばらつきだけでは説明しにくい差がある」という意味です。

PISAは、日本の15歳全員ではなく、一部の生徒を選んで調査します。そのため、同じ学力水準でも調査するたびに平均点は少し動きます。その通常の揺れを超えたと判断されたときに「有意差あり」と表現します。

今回、統計的に「平均点が下がった」と言えるのは読解力です。数学(−11点)と科学(−9点)も点数は下がっていますが、偶然の揺れの範囲を超えたとは判断されていません。「有意差なし」は「変化なし」という意味ではなく、「この調査だけでは偶然の揺れと区別できない」という意味です。

「OECD1位」と「全参加国5位」は、なぜ両方正しいのか

理由は、比較する相手の数が違うからです。

  • OECD加盟国中1位:OECDに加盟する38か国の中での順位
  • 全参加国・地域中5位:調査に参加した91の国・地域の中での順位

OECDに加盟していない高得点の国・地域もあるため、日本はOECD内では1位、全参加国・地域では4位または5位になります。

順位を見るときは、次の3点を確認しましょう。

  • 何か国中の順位か:比較する集団が変われば、順位も変わります。
  • 得点差は何点か:4位と5位でも、差が2点の場合と50点の場合では意味が違います。
  • 順位に幅があるか:標本調査では順位も多少動くため、NIERは「1~3位」のような順位範囲も示しています。

数学の全参加国・地域中の順位を6位とした報道もありますが、本記事ではNIERの公表資料にある5位を採用しています。

平均点の低下が有意でなくても、低得点層は有意に増える

ここが、この記事で最も大切な点です。

日本の数学は2022年より11点、科学は9点下がりましたが、この低下は統計的に有意とは判断されていません。一方で、低得点層の割合は有意に増えています。

矛盾して見えますが、平均点と得点の分布は別の情報なので、同時に起こり得ます。

PISAでは、得点を習熟度レベルに分けています。ここでは、レベル1以下を低得点層、レベル5以上を上位層として確認します。

分野 低得点層 2022年 低得点層 2025年 変化 上位層 2022年 上位層 2025年 変化
科学 8.0% 11.3% 有意に増加 18.0% 17.2% 有意差なし
読解力 13.8% 18.6% 有意に増加 12.3% 11.2% 有意差なし
数学 12.0% 16.1% 有意に増加 23.0% 22.3% 有意差なし

数学では、低得点層が12.0%から16.1%へ増えました。100人の教室に置き換えると、約12人から約16人へ増えた計算です。

一方、数学の平均点は11点下がったものの、この差は有意とは判断されていません。平均点の差と低得点層の割合の差は別々に検定されるため、同じ調査の中でも判定が分かれることがあります。平均点の低下は有意でないのに、低得点層の増加は有意になるのはなぜでしょうか。

平均点と習熟度別の割合は、それぞれ何を示すのか

平均点は全体の得点水準を、習熟度別の割合は各レベルにいる生徒の多さを示します。同じ調査でも、指標ごとに見ている変化と推定の不確かさが異なります。

今回の日本では、3分野とも低得点層の割合が増え、上位層の割合には有意な変化がありませんでした。平均点は3分野とも下がりましたが、有意な低下と判断されたのは読解力です。

平均点の低下が有意でないことと、すべての習熟度層で変化がないことは別です。順位や平均点とあわせて習熟度別の割合を確認することで、低得点層の増加も捉えられます。

PISAの数学的リテラシーとは?

PISAの数学的リテラシーは、公式を暗記しているか、計算が速いかだけを測るものではありません。

現実の問題を数学で整理し、計算し、その結果が現実に合っているかを判断する力を測ります。簡単に言えば、「数字を使って状況を判断する力」です。

大人が解いても難しく感じる理由は、次の3つです。

  • 問題が整理されていない:何を求めるべきかを自分で決める必要があります。
  • 余分な情報がある:使う数字と使わない数字を選ばなければなりません。
  • 答えの妥当性を判断する:計算結果が現実的か、自分で確かめる必要があります。

これは、売上データを見て何を計算するか決めたり、報告された数字が妥当か判断したりする仕事と同じです。

和からに寄せられる相談でも、「計算方法が分からない」より、「何をどう考えればよいか分からない」という悩みが多くあります。

PISA2025とAI・デジタル|LDW 557点・OECD1位をどう読むか

新領域「デジタル世界における学習(LDW)」で、日本は557点でした。OECD加盟国中1位、全参加国・地域中4位です。

LDWが測るのは、単なるデジタル機器の操作ではありません。NIERの説明では、デジタル環境の中で自分の学習を調整しながら問題を解き、新しい知識を得る力を測ります。ただし、2026年9月に公表されたのは、LDWを構成する「コンピュテーショナルな問題解決能力」と「自己調整学習」のうち前者の部分だけで、557点もこの部分の得点です。自己調整学習を含むLDW全体の結果は、2027年に公表される予定です。

ただし、この結果から「AIやデジタル機器を使えば学力が上がる」とは言えません。PISAは一時点の調査なので、AI利用が原因なのか、学習習慣や家庭環境など別の要因が影響しているのかを区別できないからです。

家庭環境と得点の関係|日本7.6%・OECD平均11.6%

PISAは、生徒の家庭の社会経済的な背景と得点の関係も調べています。

日本では、得点のばらつきのうち、家庭背景の違いと関係する割合が7.6%でした。OECD平均の11.6%より小さい値です。

これは、日本では家庭背景と得点の結びつきが、OECD平均より弱いことを示します。

指標 日本 OECD平均 読み方
家庭背景と関係する得点のばらつき 7.6% 11.6% 小さいほど家庭背景との結びつきが弱い
家庭背景が低い25%層の科学得点 504点 446点 同じ層のOECD平均より58点高い
家庭背景が高い25%層との得点差 71点 85点 日本のほうが差が小さい

ただし、家庭背景との結びつきが弱いことと、低得点層が増えていないことは別の話です。

日本は家庭背景による差が比較的小さい一方で、3分野すべての低得点層が増えました。この資料だけで原因は特定できませんが、「家庭による格差が小さいから問題ない」と結論づけることもできません。

結果を読むときに押さえたいこと

PISA2025の日本の結果を読む際は、比較する国・地域の範囲、平均得点の変化、習熟度別の割合を区別しましょう。「有意差なし」を「変化なし」とせず、原因についてもこの調査だけで断定しないことが大切です。

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よくある質問

PISA2025で、日本の数学の結果はどうでしたか?

数学的リテラシーは525点で、OECD加盟国38か国中1位、全参加国・地域91中5位でした。2022年より11点低いものの、統計的な有意差はありません。一方、低得点層は12.0%から16.1%へ有意に増えました。

PISAの数学的リテラシーは、大人にとってどのような力ですか?

現実の問題を数学で整理し、解き、その結果が現実に合っているか判断する力です。仕事では、「何を計算すべきか」を決め、出た数字が妥当か考える力にあたります。

平均点の低下が有意でないのに、低得点層が有意に増えるのはなぜですか?

平均点は全体の得点水準を、低得点層の割合は基準を下回る生徒の多さを示します。それぞれの差は別々に検定されるため、有意差の判定が分かれることがあります。日本の数学は11点下がりましたが有意差はなく、低得点層の増加は有意でした。平均点と習熟度別の割合をあわせて読む必要があります。

PISA2025の結果から、AIの影響は分かりますか?

この調査だけでは分かりません。AI利用と得点に関係が見つかっても、AIが原因なのか、学習習慣や家庭環境など別の要因が影響したのかを区別できないためです。

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出典・注記

出典:文部科学省・国立教育政策研究所「PISA2025のポイント」(PDF資料)、OECDプレスリリース(PISA 2025: Students’ reading and mathematics performance declined sharply across the OECD)。

本記事は、PISA2025 Volume Iが公表された2026年9月時点の情報に基づいています。以降の巻が公表され次第、必要に応じて追記します。

<監修/和から株式会社 堀口智之>

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