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2017/01/06

大人が数学を学び直す時の「取っ掛かり」にオススメの3冊

大人になってから「数学を学び直したいなぁ」と思ったことはありませんか? 学生時代に数学を専攻していたり、理系の学科で学んだりした人は、「数学」の世界がどのような広がりを持っているかを分かっていて、大人になってから数学を役立てられそうな物事に出会った時にも「これは微分方程式を使えばいいんだな」とか、「この問題は確率論で説明がつきそうだ」といったことがすぐに思い浮かぶと思います。

でも、文系に進んだ人や、学校で数学をあまり熱心に勉強しなかった人は、数学にはどんな分野があるのかも分からない人がほとんどでしょうし、仮に「代数学」「幾何学」「集合論」などという分類を聞いても、それぞれが何を扱うものなのか、どんな問題を解決できるものなのか見当がつかないのではないでしょうか。だから「学び直したい」と書店へ行って数学関連の本の棚の前に立っても、どれを手に取ればよいのか分からず、そのまま帰ってきてしまう。

今回はそんな方のために、「まずこの一冊から!」という“大人の数学本”を、3つの目的別に紹介したいと思います。

<目的①>ニュースを数字で読み解きたい!

『算数の発想―人間関係から宇宙の謎まで』小島寛之 著

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『算数の発想―人間関係から宇宙の謎まで』小島寛之 著(NHKブックス)

著者の小島寛之氏はこの本の「はじめに」のなかで、「算数の発想は、人間関係や社会現象、宇宙の謎までを解明する人間にとってもっとも本質的な思考法である」と述べています。

そもそも「算数」と「数学」は何が違うのでしょうか? 小学校では「算数」と呼ばれていたものが、中学に上がると「数学」になり、「算数」は数学の簡単なもの・基礎編、「数学」は算数より難しいもの、といった程度の理解でいる人も多いのではないでしょうか。しかし、算数には算数の「力」があります。「はじめに」の中で、「本書は、算数と数学が名前だけでなく、本質的に違う発想をもつ分野であることをあきらかにする本だ」とも書かれています。

「数学」は、方程式や記号を操り「普遍的」な解法を目指すもの。一方、「算数」は「旅人算」「鶴亀算」「植木算」などのような日常に根ざした感覚を重視し「個別的」に問題を解くもの。このような「算数」には「数学」からは出てこない発想が詰まっており、この本ではその発想が持つ「哲学」に注目します。哲学というと少し大げさに聞こえるかもしれませんが、ものの見方、捉え方と言っていいでしょう。その哲学を用いて、世界のさまざまな事象を読み解いていこうとするのがこの本です。

「旅人算」から宇宙論へ――ものごとを相対的に見る発想
「ガウス算」から環境問題へ――グラフをさかさまに見る発想
「相似図形」からフラクタルへ――無限をイメージするための発想
「仕事算」から経済成長理論へ――景気低迷を読みとく思考
「数え上げ」から不可逆現象へ――格差社会を読みとく思考
「集合算」から協力ゲームへ――政治力学を読みとく思考

上記は目次からの抜き出しですが、「算数」が持つ「ものの見方」を用いて、経済・社会・政治に関する問題までをも読み解くためのヒントが得られる一冊です。

小島寛之氏は数学科卒の経済学者で、ほかにも多数の著書がありますが、ニュースを数字で読み解きたい方には、以下の2冊もオススメです。

『景気を読みとく数学入門』(角川ソフィア文庫)
『世界を読みとく数学入門 日常に隠された「数」をめぐる冒険』

<目的②>ビジネスで統計を使う!

『統計学が最強の学問である[ビジネス編]』西内啓 著

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『統計学が最強の学問である[ビジネス編]』西内啓 著(ダイヤモンド社)

統計学ブームに火を着けたとも言われる『統計学が最強の学問である』。それに続く『統計学が最強の学問である[実践編]』と合わせて累計40万部以上を売り上げたというシリーズの最新刊がこの「ビジネス編」です。

最初に出版『統計学が最強の学問である』では、統計学の主要6分野を分かりやすい事例を用いて横断的に解説し、一通り読めばデータを元に分析することの重要性を体感し、統計リテラシーを獲得できるようになっています。

ビッグデータという言葉は、すでにビジネスの場で当たり前のように使われる言葉になり、実際にデータドリブンな事業運営に取り組もうとしている企業は数多くあるでしょう。メディアでも「成功事例」は紹介されるものの、“各論”が少なくありません。自社に当てはめようとしても上手くいかない、成果が出ないと感じている方も多いのではないでしょうか。

今回紹介する「ビジネス編」では、先進的な企業が統計学をビジネスの現場でどのように使っているのか、どのような分析手法が考えられるのか、「経営戦略」「人事」「マーケティング」「オペレーション」の各領域に即した考え方・やり方の手順をていねいに説明してくれています。“各論”ではなく、実際にビジネスの現場でデータを活用するための、統計学に基づく体系的な方法論を理解することができるはずです。

このほか、統計学の勉強をさらに深めたい方には、以下の2冊がオススメです。

『完全独習 統計学入門』小島 寛之 著(ダイヤモンド社)
『完全独習 ベイズ統計学入門』小島 寛之 著(ダイヤモンド社)

<目的③>論理的思考を身につけたい!

「大人のための算数練習帳―論理思考を育てる文章題の傑作選」佐藤恒雄 著書

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「大人のための算数練習帳―論理思考を育てる文章題の傑作選」佐藤恒雄 著書(講談社)

「練習帳」の名の通り、算数ドリルのようなものです。これを読むと、小学生・中学生時代に算数や数学の宿題をやった時のように、「勉強している!」という感覚になれるかもしれません。ただ、解いて答え合わせをして終わりというものではありません。

この本が特徴的なのは、一つの算数の問題を解くにあたって、「算数の方法」と「数学(代数)の方法」を併記していることです。著者の佐藤恒雄氏は、「算数の方法」の場合、四則演算だけを利用して結論を引き出すため、物事の本質を見極める洞察力をフル活用しなければならない、と言っています。「算数」と「数学」の方法を対比することで、算数に用いられる洞察力を養うのに必要な要素を明確にしながら解説していくのが、本書の構成です。

本質を見きわめる洞察力を養うためには、4つの力が必要だとしています。

(1)問題文を読む → 読解・分析力
(2)問題の内容を理解する → 翻訳力
(3)解答に向かって目標を立てる → 目標設定力
(4)解答をまとめ、結論を得る → 遂行力

これら4つの力は、算数や数学の問題を解くだけでなく、あらゆる物事を論理的に考えるために必要な能力です。これらの能力が、本書で紹介された算数の問題を実際に解いていくことで、網羅的に身につくようになっています。実際にノートを広げて、自分で解きながら読み進めていくと、論理的思考の方法について、より理解が深まりそうです。

◇ ◆ ◇

新しい年を迎える時は、何かを始めようという気持ちも高まるものです。今年こそ、数学を学び直したいと考えている方は、今回ご紹介した本から、数学を学び直す「取っ掛かり」をつかんでみてはいかがでしょうか?

(文=畑邊康浩)