中小企業診断士 事例Ⅳの計算対策|経営分析・CVP・NPVでつまずく人の原因と解き方
公開日
2026年7月29日
更新日
2026年10月18日
この記事の主な内容
事例Ⅳで何を学ぶ?財務・会計から企業を分析する
中小企業診断士の第2次試験では、事例企業の資料を読み、診断や助言を行います。財務・会計を中心に扱う事例Ⅳの計算では、経営分析で企業の状態を比べ、CVPで売上・費用・利益の関係を整理し、NPVで投資が生む価値を考えることが基本です。
土台になるのは、割合・比率・四則演算や一次方程式です。計算式を覚えるだけでなく、「何を知るための計算か」を理解し、問題文の条件を式へ移す練習を重ねましょう。以下では、実際の過去問とは別の学習用の仮定例で、意味から計算までを確認します。
この記事のポイント
- 経営分析・CVP・NPVを、基本の意味と数値例から学びます。
- 計算後は単位・符号・条件を確かめ、数値が示す意味を説明します。
- 基本問題の反復から過去問演習へ進み、80分の時間配分を調整します。
- 出題構成や難易度は年度によって変わります。特定のテーマだけに頼らず、当該年度の公式案内も確認します。
事例Ⅳで問われる主な計算テーマ
主な学習テーマを次の表に整理しました。年度によって設問や組み合わせは変わるため、これは出題を網羅した一覧ではありません。
| テーマ | 主な内容 | 使う計算 |
|---|---|---|
| 経営分析 | 収益性・効率性・安全性の財務指標を計算し、強み・課題を読み取る | 割合・比率(%) |
| CVP分析 | 損益分岐点や、目標利益を達成する売上高などを求める | 一次方程式・割合 |
| NPV(投資の意思決定) | 将来のキャッシュフローを現在価値に割り引き、投資の可否を判断する | 掛け算・割引計算 |
| その他 | キャッシュフロー計算書、EOQ(経済的発注量)、WACC(加重平均資本コスト)など | 四則演算・比率・平方根など |
経営分析の解き方|比率を計算し、比較して意味を読む
経営分析では、財務諸表の金額を比率などに直し、企業の収益性(利益を生む力)・効率性(資産の使い方)・安全性(財務の安定性)を確認します。損益計算書は一定期間の売上や費用・利益を、貸借対照表はある時点の資産・負債・純資産を示す資料です。
計算例|売上高営業利益率を求める
仮定例:A社の年間売上高が1,000万円、営業利益が80万円だったとします。営業利益は、売上総利益から販売費及び一般管理費を差し引いた、本業の利益を表す金額です。
式:売上高営業利益率 = 営業利益 ÷ 売上高 × 100
計算:80万円 ÷ 1,000万円 × 100 = 8%
売上100円に対して営業利益が8円ある、という意味です。同じ条件で比較できるB社の売上高営業利益率が5%なら、A社の方が売上に対する営業利益の割合は高いと読めます。ただし、その理由が販売価格・原価・販管費のどれにあるかは、この比率だけでは分かりません。与件文やほかの指標も確認します。
指標はすべて%で表すわけではありません。たとえば有形固定資産回転率 = 売上高 ÷ 有形固定資産は通常「回」で表し、自己資本比率 = 自己資本 ÷ 総資本 × 100は%で表します。問題の指示に沿って分子・分母と単位を選び、過年度や同業他社と比べて説明しましょう。
CVPの解き方|固定費・変動費から損益分岐点を求める
CVP分析は、費用(Cost)・販売量(Volume)・利益(Profit)の関係を調べる方法です。売上に応じて変わる費用を変動費、一定の期間・操業範囲では売上が変わっても総額が変わらない費用を固定費と考えます。たとえば販売量に比例する材料費は変動費、一定額の家賃は固定費として扱う基本例があります。実際の分類は問題の条件に従います。
売上高 − 変動費 = 限界利益
限界利益 − 固定費 = 利益
限界利益は、固定費をまかない、その後に利益を生むために残る金額です。損益分岐点は、売上高と総費用が等しく、利益がゼロになる点を指します。
計算例|いくら売れば赤字を抜けるか
仮定例:ある月の売上高が100万円、変動費が60万円、固定費が30万円とします。検討する売上の範囲では、変動費率と固定費は一定と仮定します。
- 変動費率:60万円 ÷ 100万円 = 0.6(60%)
- 限界利益率:1 − 0.6 = 0.4(40%)
- 損益分岐点売上高:固定費30万円 ÷ 0.4 = 75万円
売上高をS万円とすれば、利益ゼロの式はS − 0.6S − 30 = 0です。これを整理すると0.4S=30、S=75となります。売上75万円のとき、変動費45万円と固定費30万円の合計も75万円になり、検算できます。
目標利益が10万円なら、必要な売上高は(固定費30万円 + 目標利益10万円)÷ 0.4 = 100万円です。利益ゼロを求めるのか、目標利益を上乗せするのかを読み分けましょう。複数商品では販売構成、設備の増設などがある場合は固定費が変わる条件にも注意します。

NPVの解き方|将来の入金を現在価値に直して投資額と比べる
NPV(正味現在価値)は、投資によって将来得られるキャッシュフローの現在価値の合計から、初期投資額を差し引いた金額です。キャッシュフローは現金の流入・流出を表し、会計上の利益とは区別します。
現在価値は、将来の金額を今の時点の価値に換算したものです。たとえば割引率を年10%とすれば、今の100万円に対応する1年後の金額は110万円なので、1年後の110万円の現在価値は110万円÷1.1=100万円です。将来へ増やす計算を逆向きにするのが「割引」です。
計算例|2年間のキャッシュフローで判断する
仮定例:今100万円を投資し、1年後と2年後の各年末に60万円ずつの正味キャッシュフローを得るとします。割引率は年10%で一定とし、税金・追加投資・運転資本の増減・最終処分額は考慮しません。
- 今:初期投資の支出100万円
- 1年後:60万円 ÷ 1.1 = 約54.55万円
- 2年後:60万円 ÷ 1.12 = 約49.59万円
NPV = 60万円 ÷ 1.1 + 60万円 ÷ 1.12 − 100万円 = 約4.13万円
途中の現在価値は表示のために丸めていますが、上の答えは途中で丸めず最後に小数第2位まで求めています。試験では、指定された現価係数と端数処理に従います。
この仮定ではNPVが正なので、設定した割引率を基準に、投資額を上回る現在価値が見込まれます。将来の入金120万円から投資額100万円を単純に引いた20万円とは異なり、入金までの時間を考慮している点が重要です。実際の設問では税金、減価償却の税効果、運転資本、売却・処分などの条件を加味し、利益をそのままキャッシュフローに置き換えないようにしましょう。

基本を理解した後は「図→式→概算」で確認する
数字を見てすぐ電卓を打つと、使う数値や符号を取り違えやすくなります。基本例を解くときも、次のように順序を分けると条件を確認しやすくなります。
- 図:売上・費用・時間軸など、数字の関係を1枚に置く
- 式:何を求めるかを日本語で書いてから数式にする
- 概算:電卓の前後に、答えの桁と方向を確かめる
NPVなら、まず年ごとのキャッシュフローを時間軸に置き、現在価値へ戻す向きを確認します。この一手間が、計算ミスだけでなく設問解釈のずれも減らします。
計算が止まるときに確認したい点
原因1:経営分析で「どの指標を選ぶか」に迷う
収益性・効率性・安全性から指標を選ぶ場面で、候補が多く手が止まります。
対策:売上高総利益率・売上高営業利益率(収益性)、有形固定資産回転率(効率性)、自己資本比率(安全性)など、基本指標の意味と式を覚え、設問で求められる観点と与件文に対応するものを選びます。
原因2:電卓の打ち間違いに気づけない
桁数の多い計算が続き、打ち間違いに気づかず失点します。
対策:計算前に答えの桁数をざっくり見積もる「概算での検算」を習慣化し、明らかにおかしい数値に気づけるようにします。
原因3:CVPで「固定費・変動費」の区別があいまい
損益分岐点の式に何を代入するか迷い、式が立てられません。
対策:「売上高−変動費=限界利益」「限界利益−固定費=利益」という2本の関係を、図で先に描いてから数字を入れます。
原因4:NPVの「割引計算」で手順が崩れる
将来のキャッシュフローを現在価値に割り引く計算で、年ごとの処理が混乱します。
対策:各年のキャッシュフローに、その年に対応する現価係数を掛けて合計し、初期投資額を差し引く、という手順を毎回同じ順番で処理します。時間軸の図(タイムテーブル)を描くと崩れにくくなります。
原因5:時間配分ミスで「解ける問題」を落とす
難問に時間をかけすぎ、確実に取れる経営分析や記述で失点します。
対策:「経営分析→確実に解ける計算→記述→難問」などの順を練習で試し、配点や自分の得意分野に合わせて調整します。採点基準を決めつけず、解答できる設問や要求された過程を丁寧に書きます。
基礎から過去問へ進む学習方法
- 割合・比率・一次方程式など、計算の土台を算数〜中学数学レベルで確認する
- 経営分析の基本指標を、意味・計算式・単位とセットで覚える
- CVP・NPVを「図を描いてから式に落とす」手順で、基本問題を反復する
- 過去問を時間を計って解き、着手順と時間配分を調整する
最初は時間を区切らず、基本問題で「なぜその分子・分母か」「どの時点のお金か」を説明できるようにします。その後、過去問を80分で解き、読み取り・計算・記述・見直しのどこに時間がかかったか記録しましょう。
解き直しでは、答えだけでなく、条件の読み落とし・式の選択・単位・符号・入力ミスを区別します。途中で止まった問題は、その原因になった基本計算へ戻ります。年度によって設問構成や難易度が変わるため、ひとつの着手順や出題予想だけに依存しないことが大切です。
受験前に確認する当該年度の公式条件
2026年度の第2次試験は、各事例80分の筆記試験です。2026年度から口述試験が廃止されました。受験資格は2026年度・2025年度の第1次試験合格者などで、過年度合格者の例外を含む詳細は公式案内で確認してください。
第2次試験では、四則計算・平方根・%・数値メモリなどの単純な機能を持つ携帯用電卓が認められています。関数電卓やプログラム機能付き電卓などは使えず、大きさや机上に置ける台数にも条件があります。
※2026年10月に公式案内を確認しました。年度が変わるときは、受験資格・時間・使用できる電卓の条件を含め、最新情報を日本中小企業診断士協会連合会の試験案内でご確認ください。
確認資料:2026年度第2次試験の概要、2026年度第2次試験案内(PDF)。
よくある質問(FAQ)
Q1. 事例Ⅳに高度な数学は必要ですか?
経営分析・CVP・NPVの基本では、割合・比率・四則演算・一次方程式などが土台になります。公式の暗記だけでなく、問題文の条件を整理し、何を計算しているかを説明できるようにしましょう。
Q2. 2次試験で電卓は使えますか?
使えます。ただし、四則計算・平方根・%・数値メモリなどの単純な機能を持つ携帯用電卓が対象です。関数電卓やプログラム機能付き電卓などは認められていません。大きさや台数を含め、受験年度の試験案内を確認してください。
Q3. 数学が苦手でも事例Ⅳを得点源にできますか?
得点源にすることは目指せます。基本問題で計算の意味を理解し、条件整理・式の選択・検算を反復しましょう。割合や方程式で止まる場合は、その単元まで戻って学び直します。
Q4. 経営分析とCVP・NPV、どれから手をつけるべきですか?
まずは経営分析の基本指標で、比率計算と与件文の結び付け方を確認しましょう。その後、CVP、NPVへ進むと、割合・利益構造・時間価値を段階的に積み上げられます。
まとめ|経営分析・CVP・NPVを意味と計算でつなぐ
経営分析は企業の状態を比率で捉え、CVPは売上・費用・利益の関係を整理し、NPVは将来のキャッシュフローを現在価値に直して投資額と比べます。まず基本例を自分で計算し、答えの単位と、その数字が意味することまで確かめましょう。
そのうえで「図→式→概算」を使って条件や計算ミスを確認し、過去問で時間配分を練習します。出題の変化に対応するためにも、解き方の型と、問題ごとの条件を読み取る力の両方を育てることが大切です。
あわせて読みたい:社会人の数学学び直し完全ガイド|30代・40代・50代別ロードマップと最短独学法
<監修/和から株式会社 堀口智之>
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