電験二種の数学レベルと勉強順序|微分積分・微分方程式はどこまで必要?
公開日
2026年9月1日
更新日
2026年10月18日
電験二種の数学は、式変形・三角関数・複素数を土台に、微分積分と微分方程式を電気の問題へ使えるようにすることが学習の目安です。微分は「変化の速さ」、積分は「たまった量」を表す道具です。まず交流やコンデンサの簡単な例で意味をつかみ、公式過去問を解きながら必要な範囲へ広げましょう。
この記事の主な内容
この記事のポイント
- 電験二種の目的と、一次試験・二次試験での数学の使い方を確認します
- 交流の三角関数・複素数、微分・積分、RC回路の微分方程式を順に説明します
- 数学の公式一覧を覚えるだけでなく、式の意味・単位・初期条件を確かめます
- 例題の後に学習順序と振り返り方を示し、公式過去問につなげます
電験二種とは?一次試験と二次試験の役割
第二種電気主任技術者試験は、電圧17万ボルト未満の事業用電気工作物の主任技術者に必要な知識を確認する試験です。数学は独立した試験科目ではなく、回路や機器の動作を理解し、電圧・電流などを計算するために使います。
| 試験 | 科目・解答方式 | 学習で意識すること |
|---|---|---|
| 一次試験 | 理論・電力・機械・法規の4科目。多肢選択方式 | 電気の基本法則と条件を読み、必要な式を選び計算する |
| 二次試験 | 電力・管理、機械・制御の2科目。記述方式 | 条件から式を立て、解答へ至る過程を説明する |
公式の試験概要は電気分野ごとの範囲を示しており、「微積はここまで」という数学単元の一覧は示していません。下の説明は電気数学を学ぶ入口であり、公式な数学の出題範囲や、試験全体を網羅する一覧ではありません。制度・解答方式は電気技術者試験センターの試験概要で確認してください。
三角関数と複素数は、交流の何を表すのか
三角関数:電圧・電流が繰り返し変化する様子を表す
正弦波の交流電圧は、たとえばv(t)=100√2 sin(2π×50t) Vと表せます。これは説明用の仮の波形で、tは秒単位の時刻です。
- 100√2 V:電圧の最大値。正弦波では実効値100 Vの√2倍です
- 50 Hz:1秒間に50回繰り返す周波数。1周期は1÷50=0.02秒です
- sin:時刻とともに正負に変わる波形を表します
t=0.005秒では、sinの中身はπ/2となるため、電圧は100√2 V、約141 Vです。電流が電圧より遅れて変化する場合は、三角関数の角度に差が付きます。この波のずれを位相差と呼びます。

複素数:交流の大きさと位相をまとめて計算する
正弦波交流の定常状態では、電圧・電流の大きさと位相をフェーザという複素数で表すと、回路の計算を整理できます。電気では虚数単位をjと書き、j²=−1とします。実部を横軸、虚部を縦軸に取れば、複素数を矢印として描けます。
たとえばインピーダンス(交流に対する電流の流れにくさ)がZ=3+j4 Ωなら、矢印の横成分は3、縦成分は4です。大きさは√(3²+4²)=5 Ωで、角度は約53.1度です。
電圧のフェーザを実効値で100+j0 Vとすると、電流は次のように計算できます。
I=100÷(3+j4)
=100(3−j4)÷{(3+j4)(3−j4)}
=100(3−j4)÷25=12−j16 A
電流の実効値は√(12²+16²)=20 Aです。虚部が負なので、この基準では電流は電圧より約53.1度遅れます。複素数の計算、ベクトル図、電気的な意味を一緒に確認すると、記号だけの暗記を避けられます。なお、この方法は同じ周波数の正弦波の定常状態を扱うもので、スイッチを入れた直後の過渡変化とは区別します。
微分は「変化の速さ」、積分は「たまった量」
微分:その瞬間に、どれだけ速く変わるか
コンデンサの電圧をv(t)、静電容量をC、充電する向きを正とする電流をi(t)とすると、理想的なコンデンサではi(t)=C dv(t)/dtです。dv/dtは電圧の瞬間的な変化率で、単位はV/sです。
たとえばC=100 µF=0.0001 Fで、ある瞬間の電圧の変化率が20 V/sなら、電流は0.0001×20=0.002 A、つまり2 mAです。同じコンデンサなら、電圧が速く変わるほど大きな電流が流れると読めます。
積分:流れた電流を時間について足し合わせる
電流は1秒あたりに移動する電荷の量です。電流を時間について積み重ねると、移動した電荷が求められます。初めの電荷が0なら、q(t)=∫0t i(s) dsです。ここでsは積分の中で使う時刻の記号です。
たとえば、別の仮の条件として2 mAの一定電流を0.1秒間流した場合、移動した電荷は0.002 A×0.1 s=0.0002 Cです。静電容量100 µFの理想コンデンサなら、電圧の増加は0.0002÷0.0001=2 Vです。この場合のCという単位はクーロン、Fはファラドです。
一定電流なら長方形の面積として計算でき、時間で変わる電流なら細かい時間ごとの量を足す積分を使います。次のRC回路では電流が一定ではないため、同じ2 Vという計算をそのまま当てはめることはできません。
微分方程式をRC回路の充電で理解する
微分方程式は、求めたい量と、その変化率が同じ式に入った方程式です。電気では、コンデンサの充電のように時間とともに変わる現象を表すために使います。
ここでは抵抗とコンデンサを直列につないだ理想的なRC回路を考えます。初めにコンデンサの電圧は0 Vとし、時刻0で一定の直流電源をつなぎます。以下は理解のための自作例で、実際の試験問題ではありません。
- 電源電圧E=10 V
- 抵抗R=1 kΩ=1,000 Ω
- 静電容量C=100 µF=0.0001 F
- 初期条件v(0)=0 V
回路の法則から式を立てる
電源の電圧Eは、抵抗の電圧Riとコンデンサの電圧vの和になります。E=Ri+vに、i=C dv/dtを代入すると、
RC dv/dt+v=E
という一次微分方程式が得られます。「電圧がまだ低いときは速く充電し、電源電圧に近づくほど変化がゆっくりになる」と読めます。式をdv/dt=(E−v)/(RC)に直すと、この関係を確認できます。
初期条件を使って電圧を求める
E、R、Cが一定のとき、この式の解はv(t)=E+K e−t/(RC)と書けます。Kは初めの状態で決まる定数、eは約2.718の数です。初期条件v(0)=0を代入すると0=E+Kなので、K=−Eとなります。
v(t)=E{1−e−t/(RC)}
このように、微分方程式だけでなく初期条件を使って具体的な解を決めます。初めから電圧がある場合は、同じ式を無条件には使えません。
0.1秒後は何Vか:単位と時定数も確認する
RとCの積τ=RCを時定数といい、変化の時間の目安になります。この例では、
RC=1,000 Ω×0.0001 F=0.1 s
v(0.1)=10{1−e−0.1/0.1}
=10(1−e−1)≈10×0.632=6.32 V
時定数と同じ0.1秒が経つと、電圧は最終的に近づく10 Vの約63.2%になります。「0.1秒で充電が完了する」という意味ではありません。時間が十分に経つと電圧は10 Vへ近づきます。
単位も確かめましょう。Ω×F=(V/A)×(C/V)=C/A=sなので、RCの単位は秒です。指数の中のt/(RC)は秒÷秒となり、単位を持ちません。また、RC dv/dtは秒×V/s=Vとなり、式の他の項とそろいます。
求めた式を微分して、元の式に戻るか確かめる
v(t)=E{1−e−t/(RC)}を微分すると、dv/dt={E/(RC)}e−t/(RC)です。これをRC dv/dt+vへ入れると、E e−t/(RC)+E{1−e−t/(RC)}=Eとなり、元の方程式を満たします。
さらにt=0でv=0、時間が十分に経つとvは10 Vへ近づくので、初期条件と最終状態も確認できます。電流はi(t)=(E/R)e−t/(RC)となり、初めの10 mAから小さくなります。微分・積分・回路の法則が、一つの現象の中でつながっています。
この計算は部品を理想的とし、電源電圧と抵抗・静電容量が一定というモデルです。実回路の漏れ電流や部品のばらつきなどは含みません。式の考え方はMIT OpenCourseWare「Chapter 7: DC Circuits」7.6節でも確認できます。
どこまで学ぶ?基礎から電気の問題へ進む順序
最初から数学の参考書をすべて終えるのではなく、次の順で電気の例に使ってみましょう。既に説明できる部分は先へ進み、つまずいた箇所へ戻ります。
- 式変形と単位換算:分数・連立方程式・指数を確認し、kΩやµFを基本の単位に直せるようにします。
- 三角関数・複素数・ベクトル表示:正弦波、位相差、実効値、インピーダンスを結びつけ、交流計算に使います。
- 微分積分:変化率と積み重ねの意味を押さえ、指数関数・三角関数などの基本的な微分積分を電気の例で練習します。
- 微分方程式:まずRC回路などで、式を立て、初期条件から解を決め、時定数と最終状態を説明します。
- 公式過去問へ進む:理論だけに限らず、機械・制御などで必要な数学を確認し、問題に応じて学ぶ範囲を広げます。

RC回路の一次微分方程式だけで、電験二種のすべてを扱えるわけではありません。たとえば令和7年度二次「機械・制御」問4ではラプラス変換・伝達関数を使う制御系が扱われています。微分方程式の基本を学んだ後は、取り組む公式過去問に応じて、制御の計算などへ進めてください。
公式過去問で、戻るべき単元を見つける
公式過去問は、必要な数学と電気理論の結び付きを確かめる材料です。令和8年度一次「理論」には、運動方程式、磁界の積分、回路の連立方程式、交流の位相などを扱う問題があります。これらは確認した年度の例であり、出題頻度の順位や次年度の予想ではありません。
また、令和7年度二次「機械・制御」の注意事項は、計算問題で解答へ至る過程を示すことを求めています。答えだけを合わせず、使った法則、立てた式、単位、途中計算を書いて練習しましょう。
上の例を読んだ後は、次の3つで理解を確かめられます。時間や点数を決めた能力判定ではなく、復習箇所を見つけるための確認です。
- 交流:Z=3+j4 Ωの大きさが5 Ωになる理由を、式と矢印で説明できますか。計算で止まるなら平方根や複素数へ、位相の意味で止まるなら正弦波とフェーザへ戻ります。
- 変化:RC回路の例で、初期電圧0 V、時定数0.1秒、最終的に近づく電圧10 Vを、式から読み取れますか。代入や指数で止まるなら数学へ、なぜRCになるかで止まるなら回路の法則へ戻ります。
- 過去問:公式過去問を1題選び、どの条件からどの式を使ったかを書けますか。式の選択で止まるなら電気理論、変形で止まるなら数学、説明が飛ぶなら記述の練習をします。
答えが合っていても理由が説明できなければ、該当する基礎を確認します。解説を読んだ後に自分で途中式を再現し、数値や条件が変わっても同じ考え方を使えるか試してください。必要な学習時間や独学の進み方は、現在の基礎力によって異なります。

よくある質問(FAQ)
Q1. 電験二種に大学数学は必要ですか?
大学初級でも扱う微分積分・微分方程式などの考え方が役立ちます。ただし、数学全体を先に学び終える必要はありません。式変形、三角関数、複素数を土台に、電気の例と公式過去問に結びつけて必要な内容を学びます。
Q2. 三種との差は何ですか?
二種は一次試験に加えて記述方式の二次試験があります。条件から式を立て、計算の途中過程や電気的な意味を説明する練習が重要です。数学の単元だけで難しさを決めず、公式過去問で実際の要求を確認してください。
Q3. 微分方程式はRC回路が解ければ十分ですか?
RC回路の一次微分方程式は、変化率・初期条件・時定数を結びつける入口です。それだけで二種の出題範囲を網羅できるわけではありません。制御分野のラプラス変換・伝達関数など、取り組む公式過去問に必要な内容へ広げてください。
Q4. 数学が苦手な場合、何から始めればよいですか?
まず分数・指数・単位換算と式変形を確認し、その後に三角関数・複素数・ベクトル表示を交流回路と結びつけて学びます。既にできる部分は進み、例題や公式過去問で手が止まった箇所に戻ると学習内容を絞れます。独学の可否や必要期間は基礎力と学習時間によって異なります。
確認に使った公式資料・参考資料
- 電気技術者試験センター「第二種電気主任技術者の試験概要」(資格の対象・試験科目・解答方式)
- 同「第二種電気主任技術者試験の問題と解答」(公式過去問)
- 令和8年度第二種電気主任技術者一次試験「理論」(数学と電気理論の接点の確認)
- 令和7年度第二種電気主任技術者二次試験「機械・制御」(導出過程の指示、フェーザ・制御の出題例)
- MIT OpenCourseWare「Chapter 7: DC Circuits」(7.6節:RC回路の充電、初期条件、時定数)
まとめ|数学の意味を電気の例と結びつけて学ぶ
電験二種の数学は、交流の大きさと位相を扱う三角関数・複素数から、変化率と蓄積を扱う微分積分へ進めると、役割が見えてきます。RC回路では、回路の法則から微分方程式を立て、初期条件で解を決める流れを学べます。これを入口に、公式過去問で必要な範囲へ広げ、二次試験に向けて途中式と電気的な意味を説明する練習を重ねましょう。
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