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統計検定1級(統計数理)の受験対策について

公開日

2021年9月16日

更新日

2021年9月16日

1.はじめに

こんにちは。和から講師の永井です。前回の記事までは直近の統計検定2級と準1級について概要を紹介してきました。

統計検定2級を振り返る(2021年6月20日実施分)

統計検定準1級を振り返る(2021年6月20日実施分)

今回は、11月に実施予定の統計検定1級(統計数理)について傾向や対策、学習のアドバイス等を紹介します。

統計検定公式HP

1級は統計数理と統計応用の2つの試験があり、2つの試験に合格することで1級完全取得となります。両試験とも年にもよりますが、合格率が10~20%と低く難関資格の一つとされています。

その背景として、2級や準1級までと違いすべての問題が論述で記述しなければならない難しさがあります。

2021年11月中旬以降に試験が2年ぶりに実施される予定なので、受験を目指している方や今後の参考にしたい方は、ご一読頂ければ幸いです。

2.過去の試験内容

2012~2019年まで(2020年は新型コロナウイルス感染防止のため、試験中止)の試験テーマと主な出題テーマは下記の表の通りです。
具体的な問題は掲載できませんが、感じた難易度をA(易), B(標準), C(やや難), D(難)の4段階でランク付けしています。

2012年

大問1 大問2 大問3 大問4 大問5
分布 一様分布 ガンマ分布、カイ2乗分布 指数分布 正規分布 多次元正規分布
項目 順序統計量、期待値 モーメント母関数、変数変換 期待値、分散、最尤推定、フィッシャー情報量、デルタ法 母平均の区間推定、UMPtest 条件付き期待値、条件付き分散
項目 B B B C C

2013年

大問1 大問2 大問3 大問4 大問5
分布 一様分布 正規分布 二項分布 ベルヌーイ分布 多項分布
項目 期待値、分散、中央値、商の分布 条件付き分布 期待値、分散、最尤推定、不偏推定 順位和検定 尤度比検定、カイ二乗検定
難易度 A C B B C

2014年

大問1 大問2 大問3 大問4 大問5
分布 一様分布 ガンマ分布 正規分布、t分布 非心カイ二乗分布 二項分布
項目 条件付き分布、順序統計量 モーメント母関数、期待値、分散、変数変換、順序統計量 信頼区間と検定統計量 回帰分析、F検定 尤度比検定、カイ二乗検定
難易度 B C B D B

2015年

大問1 大問2 大問3 大問4 大問5
分布 正規分布 正規分布 正規分布 多項分布 正規分布
項目 不偏、一致、モーメント P値、検出力、UMPtest 重回帰、分散の評価 対称性の検定、最尤推定、変数変換 混合平均、分散、相関係数、条件付き期待値
難易度 C B C C C

2016年

大問1 大問2 大問3 大問4 大問5
分布 正規分布 指数分布 正規分布 正規分布 F分布
項目 最尤推定、不偏、フィッシャー情報量 期待値、不偏、ガンマ分布 回帰、推定量の分散 二項分布、分散 混合分布、検定統計量
難易度 B B B B C

2017年

大問1 大問2 大問3 大問4 大問5
分布 正規分布 一様分布 ポアソン分布 正規分布 正規分布
項目 期待値、分散、歪度、尖度、不偏性 最尤推定、不偏、有効、順序統計 二項分布、モーメント、期待値、分散、分布収束 相関係数、条件付き分布 カイ二乗分布、t分布、F分布、変数変換
難易度 C A B A B

2018年

大問1 大問2 大問3 大問4 大問5
大問1 大問2 大問3 大問4 大問5
分布 カイ2乗分布 超幾何分布 二項分布 正規分布 一様分布
項目 期待値、分散、デルタ法 期待値、分散、推定量構成 期待値、分散、条件付き期待値、分散、モーメント推定 条件付き分布 順序統計、期待値、分散、同時分布
難易度 B C B C B

2019年

大問1 大問2 大問3 大問4 大問5
分布 二項分布 指数分布 一様分布 コーシー分布 ラプラス分布
項目 期待値、分散、確率母関数 期待値、変数変換 十分統計量、条件付き分布、不偏 第一種、二種の過誤、尤度比、MPtest 期待値、分散、ベイズ推定
難易度 B A B A C

問題を参照したい方は過去問(1冊につき2年分)をご覧ください。

   

3.主な小問のテーマ

小問としては、「確率分布」「推測統計の理論」の2項目に大まかに分類されます。

確率分布では具体的に、
・期待値、分散、相関係数の計算→試験の大半を占める。
・確率計算→簡単なものから積分計算を行うものまで。
・変数変換→分布関数を利用したり、ヤコビアンからの周辺化など。
・母関数の計算→有名分布は一通り導出
・条件付き分布→ベイズ推定と絡めた問題もあり

推測統計の理論では具体的に、
・点推定の理論→不偏、有効、一致、十分性の証明
・最尤推定やモーメント法→関連して漸近分布
・ネイマンピアソンの基本定理→仮説検定の検出力など
・回帰分析や分散分析→最小二乗推定や回帰係数の検定など

が重要なテーマとなっております。計算力に加え、教科書で扱っている証明問題も多く出題されるので、ただ答えをだせばよいだけでなく、論理的に記述できているかがポイントとなります。

4.勉強の進め方と書籍

数学力に自信のある方は数理統計の演習問題をより多く解いた方が自信につながります。自信のレベルにあわせて、書籍の演習問題を繰り返し演習することが重要です。基礎がまだ不安な人は、要点整理からしっかり始めて徐々に演習力をつける必要があります。

具体的には以下の3点を徹底するとよいでしょう。

・要点整理→基本公式の確認、分布の曼荼羅(http://www.math.wm.edu/~leemis/chart/UDR/UDR.html)を参考にノートに作る
・演習問題消化→演習テキストを繰り返し解く
・過去問研究→2.で記述したように、具体的なテーマの絞り込みを行う・教科書で定義、定理の確認等

また、おすすめの書籍としては下記が挙げられます。

現代数理統計学の基礎(久保川達也著、共立出版)

→統計検定1級を意識した書籍で、多くの合格者が読んでいる聖書(バイブル)といっても過言ではありません。章末問題とその解説が丁寧なので、
確実に実力をつけたい方はこの書籍でしっかりと演習問題を多くことなすことが重要です。

新装改訂版 現代数理統計学(竹村彰通著、学術図書出版社)

→統計検定協会が推奨する書籍の1つで、新装版は旧版に比べて演習問題の解説がついてます。教科書的な役割の1冊といえるでしょう。

数理統計学(稲垣宣生著、裳華房)

→久保川先生や竹村先生の書籍と同じような構成のテキストです。演習問題もほどほどのものから、考えさせられるものまで幅広くあります。

明解演習 数理統計(小寺平治著、共立出版)

→もともとはアクチュアリー数学向けに書かれた本ですが、チャート式のように問題のカテゴライズ化がされているので、弱点と思われる分野と答案の書き方を学ぶことができます。要点のまとまったページは手法整理にも役立ちます。

大学1・2年生のためのすぐわかる統計学(藤田岳彦・吉田直広著、東京書籍)

→明解演習が難しく感じた方は、こちらをおススメします。こちらもチャート式のような構成になっています。加えて補充問題が充実しているのでより深く計算力を鍛えることが可能です。

入門・演習 数理統計(野田一雄・宮岡悦良著、共立出版)

→演習量のボリュームは1番の書籍です。条件付き分布や推定・検定の理論演習が充実しているので、そこを徹底的に鍛えたい方はおすすめです。

5.本番に向けて

本番では問題を見て、解答の指針が立ちそうな問題選びができるかどうかが当日の出来を左右するといっても過言ではありません。5題中3題選ぶことになるので、その選球眼ならぬ選問眼は大切です。最初は行き当たりばったりにいきなり解こうとせず、確実に解けそうな問題を選び、そのなかの小問で確実に取れる問題を解いていくことが重要です。

以上を踏まえて、下記の3点を心がけると良いと思います。

・問題選択→解ける問題の多そうな問を選ぶ、演習を通じてやってきた経験のある問題を選ぶと良いでしょう。
・解答指針→数学の試験にも共通して言えますが、示したいことを明示するだけでも点数になることがあります。
・時間配分→90分なので、1問にかけられる時間は約30分です。集中しすぎて他が手が付けられないことがないようにしましょう。

6.まとめ

統計検定1級(統計数理)の試験は、統計学の試験というよりかは数学の試験に近い要素が多いです。理論背景を学ぶことも重要ですが、しっかりとした演習力の養成が合格の鍵を握ってます。テクニックや裏技があるわけではありませんので、地道にコツコツと勉強していくことをお勧めします。数学や統計学が好きな方なら積極的に受験して、自身のキャリアアップや統計力の箔付を目指しましょう。

<文/永井>

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