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統計検定1級(統計応用、人文科学)の受験対策について

公開日

2021年10月11日

更新日

2021年10月11日

1.はじめに

こんにちは。和から講師の永井です。前回は統計検定1級(統計数理)についてご紹介してきました。引き続き今回は統計応用の「人文科学」を受験する方に傾向や対策・アドバイス等を紹介します。

統計検定1級(統計数理)の受験対策について

統計検定公式HP

統計応用は4つの選択分野である人文科学・社会科学・理工学・医薬生物学から1つ選択する必要があり、それぞれの専門分野で試験勉強の内容が若干異なっています。

統計応用はあまり触れられている記事がないので、今回から4テーマのそれぞれついて具体的な試験対策を紹介してまいります。受験を検討されている方や統計応用のテーマ選択にお困りの方は参考にしてください。

2.過去の試験内容

2012~2019年まで(2020年は新型コロナウイルス感染防止のため、試験中止)の試験テーマと主な設問内容は下記の表の通りです。具体的な問題は掲載できませんが、感じた難易度をA(易), B(標準), C(やや難), D(難)の4段階でランク付けしています。

※2012年の大問3,4,5は統計応用の共通問題で1問選択、大問1,2が必答問題です。2013年以降は大問1~5の中から3題選択し解答します。大問5は全分野の共通問題となります。

2012年

大問1 大問2 大問3 大問4 大問5
分野 t検定 正規分布 回帰分析 適合度検定 Wilcoxonの順位和検定
項目 相関係数、差の平均、SD 条件付き確率 決定係数、予測値の信頼区間 ポアソン分布、ワルド、スコア型の信頼区間 P値、正規分布近似
難易度 A B B B C

2013年

大問1 大問2 大問3 大問4 大問5
分野 項目反応理論 3変量正規分布 主成分分析、因子分析 尤度比検定 回帰分析
項目 パラメータの説明、平均、分散、尤度 確率計算、サンプルサイズ 設定 主成分、因子分析の解釈、因子分析の回転 尤度、自由度計算 回帰分析の解釈、決定係数
難易度 C C B C B

2014年

大問1 大問2 大問3 大問4 大問5
分野 正規分布の計算 数量化I類 ロジスティック回帰分析 クラスター分析 分割表の分析
項目 条件付き期待値、分散 データの解釈、最小二乗法、相関係数 解釈 階層型(最短距離、最長距離の違い) カイ二乗検定、二項分布、多項分布、超幾何分布
難易度 B C C B C

2015年

大問1 大問2 大問3 大問4 大問5
分野 項目反応理論 主成分分析、因子分析 多次元尺度法 判別分析 2元配置分散分析
項目 プロビット、ロジットモデル、最尤推定 解釈、自由度 行列計算 確率比、誤判別計算 交互作用、自由度、F値
難易度 C D D C B

2016年

大問1 大問2 大問3 大問4 大問5
分野 因子分析 正規分布 2段抽出法 共分散構造モデル t検定
項目 共通性、相関係数、回転 確率計算、条件付き期待値 分散評価 自由度、分散、共分散 平均の差の検定、信頼区間
難易度 A B C B B

2017年

大問1 大問2 大問3 大問4 大問5
分野 因子分析 1元配置分散分析 2変量正規分布 層化抽出法 振り分け法の問題
項目 回転の決定と解釈、相関係数 平方和と自由度、F値、プーリング 条件付き期待値 期待値、分散評価 確率、期待値計算、信頼区間幅の比、サンプルサイズ 設計
難易度 B B A C B

2018年

大問1 大問2 大問3 大問4 大問5
分野 分割表の解析 マハラノビスの距離、判別分析 パス解析 クラスター分析 混合正規分布
項目 超幾何分布、φ係数、カイ二乗検定 相関係数、距離計算 解釈、相関係数、総合効果 最短距離法、ウォード法、解釈 期待値、分散計算、2峰性条件
難易度 A C B B B

2019年

大問1 大問2 大問3 大問4 大問5
分野 正規分布 クラスター分析 項目反応理論 共分散構造モデル 適合度検定
項目 確率計算、条件付き期待値、分散 階層、非階層 確率計算、情報関数、パラメータの解釈 効果の計算 カイ2乗検定、EMアルゴリズムの導出
難易度 B A B A B

問題を参照したい方は過去問(1冊につき2年分)をご覧ください。

   

3.主な小問のテーマ

①確率分布の確率、期待値、分散の計算

統計数理と重複する内容にはなりますが、正規分布を中心とした確率計算や(条件付き)期待値、分散の計算問題がよく問われるのでガウス積分の理解は必須といえます。

②多変量解析法

重回帰分析をはじめとして、判別分析、主成分・因子分析、クラスター分析、数量化手法、共分散構造分析などが主テーマ
となっています。
分析結果の解釈やp値や自由度の計算、行列計算による証明など線形代数に多少馴染んでおく必要があります。

③項目反応理論

毎回出題されるわけではありませんが、プロット図やパラメータの解釈、情報関数などの基本的な扱いが問われます。実務で使われている方は、数式の本質的な理解があると試験では有利です。

④標本抽出法

単純無作為以外の多段抽出のばらつきの精度に関する問題が主軸になっており、今後もアレンジで問われる可能性が高いといえます。

書籍紹介

基本的な勉強方法は統計数理と変わりありませんが、演習問題が不足している部分もあるのでなかなか独学での勉強は難しい部分があります。しかし、ある程度専門的なテキスト1冊は読み込んで理解しておく価値はあると思います。人文科学の学習をする際に参考にするとよいテキストをいくつか紹介します。

多変量解析法入門 (ライブラリ新数学大系) (サイエンス社、永田靖、棟近雅彦 著)

→多変量解析の例題と行列計算を含めて勉強したい方はこの1冊で十分です。これがスラスラ解ければ計算部分は十分な実力があると言えます。

多変量解析がわかる(技術評論社 涌井良幸、涌井貞美 著)

→上記の多変量解析から入るのが敷居を感じる方は、こちらの書籍から入ると例のイメージがつくので理解のベースが作れると思います。

多変量データ解析法-心理・教育・社会系のための入門-(ナカニシヤ出版、足立浩平著)

→多変量解析全般の例も紹介されてますが、パスモデリングや共分散構造分析を例を通じて理解しておきたい方にはおすすめです。

項目反応理論[入門篇] (朝倉書店、豊田秀樹 著)

→IRT(項目反応理論)の概要を掴みたい方はオススメしたい1冊です。本書が読めれば、十分な理解が達成したと言えますが、実践的にも理解したい場合は理論編や中級編、実例編もありますので、その後にそちらにチャレンジすると良いでしょう。

まとめ

今回は統計検定1級統計応用の人文科学についてご紹介しました。基本的な対策は、統計数理と同じようにテキスト学習と過去問演習が重要となりますが演習量が少なくなりがちなのでテキスト学習をより本質的に学習する必要があります。

<文/永井>

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