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教養としての力学-第6回:人工衛星はなぜ落ちてこないのか?万有引力と円運動で説明してみた【高校物理をやさしく解説】

公開日

2026年5月12日

更新日

2026年9月18日

夜空に、星のような光がゆっくり動いて見えることがあります。その中には、太陽の光を反射している人工衛星もあります。地球の周りでは、多くの人工衛星が観測や通信などのために使われています。

ここで素朴な疑問が浮かびます。なぜ人工衛星は落ちてこないのでしょうか。

ロケットで打ち上げたものなら、エンジンを止めた瞬間に落ちてきそうなものです。しかし実際には何年も、場合によっては何十年も軌道を回り続けます。

この疑問を、「万有引力」と「円運動」から考えます。地上で物が落ちる現象と、人工衛星が地球を回る運動を、同じ法則で説明していきます。


万有引力とは何か?すべての物体は引き合っている

まず「万有引力」という言葉から整理しましょう。

「万有」とは「すべてのものに存在する」という意味です。つまり万有引力とは、宇宙に存在するすべての物体が互いに引き合う力のことです。

リンゴが木から落ちるのは、地球がリンゴを引っ張っているからです。しかし実はリンゴも地球を引っ張っています。リンゴが地球に比べてあまりにも軽いため、リンゴだけが動いているように見えるだけです。

【専門用語の解説】万有引力(ばんゆういんりょく)
質量を持つすべての物体の間に働く引力のことです。
重いものほど、また距離が近いほど、引力は強くなります。
ニュートンが17世紀に発見し、天体の運動から地上の物体の落下まで、同じ法則で説明できることを示しました。

この万有引力は、地球と月の間にも、地球と人工衛星の間にも、もちろん地球とあなたの間にも働いています。あなたが地面に立っていられるのも、万有引力のおかげです。

円運動とは何か?中心に向かう力が円を生み出す

次に「円運動」を説明します。

円運動とは、物体が円を描いて動くことです。観覧車のゴンドラなどが例です。月や人工衛星の軌道には楕円のものもありますが、ここでは説明を簡単にするため、円軌道として考えます。

円運動をしている物体は、常に円の中心に向かって力を受けています。この力を向心力といいます。向心力がなければ、物体は円を描かずにまっすぐ飛んでいってしまいます。

【専門用語の解説】向心力(こうしんりょく)
円運動をしている物体が、常に円の中心に向かって受けている力のことです。
この力があるからこそ、物体は直進せずに円を描き続けられます。
向心力の正体は状況によって異なり、万有引力だったり、摩擦力だったりします。

人工衛星の場合、この向心力の正体が万有引力です。地球が人工衛星を中心に向かって引っ張り続けているから、円を描いて回り続けられるのです。

【図1】円運動

人工衛星が地表に落ちずに回り続ける理由

ここまでの説明をもとに、人工衛星の動きを考えましょう。

人工衛星は重力で地球に引かれながら、横方向にも進んでいます。高度に合った速さで進むことで、地表にぶつからずに地球を回り続けます。

少し詳しく説明しましょう。

ボールを水平に投げると、重力で下向きに曲がりながら進み、地面に落ちます。ここで、空気抵抗の影響が小さい十分に高い場所から、さらに速く水平に投げる場合を考えましょう。

地球の表面も曲がっています。そのため、高度に合った速さで水平に進めば、重力で曲がる軌道が地表にぶつからず、地球を一周できます。円軌道では、地球の中心からの距離が一定に保たれます。

このとき地面が沈んでいるわけではありません。人工衛星が重力に引かれながら進む軌道と、地球の丸い形を合わせて考えることが大切です。

人工衛星は、エンジンで常に支えられているわけではありません。重力を受けながら進む、自由落下の状態にあります。ただし、低い軌道ではわずかな大気の抵抗などで高度が下がるため、軌道を保つための調整が必要になることがあります。

【図2】人工衛星が落ちない仕組み

月も同じ仕組みだった

ニュートンの偉大な発見は、この「落ち続けているのにぶつからない」という仕組みが、夜空に浮かぶ月にも当てはまると気づいたことです。

月は地球から約38万km離れた場所を回っています。月もまた、常に地球に向かって落ち続けていますが、横方向への十分なスピードがあるため、地面に激突することなく軌道を回り続けています。

リンゴが木から落ちる現象と、月が地球を回り続ける現象。一見するとまったく別の出来事に見えますが、ニュートンはどちらも同じ万有引力の法則で説明できることを示しました。

ニュートン力学によって、地上の物体と天体の運動を共通の法則で説明できるようになりました。


力学編のまとめ:6回を振り返って

今回で力学編は最終回です。ここで6回全体を振り返ってみましょう。

第1回はリニアモーターカーを題材に、速さとエネルギーの関係を学びました。第2回はテスラのEVを通じて、速さと加速度の違いを理解しました。第3回はニュートンの3法則を、SpaceXのロケットで読み解きました。第4回は運動量と衝突を、自動運転技術と絡めて説明しました。第5回はエネルギーと仕事を、再生可能エネルギーによる発電を例に学びました。そして第6回は万有引力と円運動を、人工衛星の仕組みで理解しました。

力学は「物体がどう動くか」を説明する学問です。この連載では、乗り物や発電、人工衛星を例に、速さ、加速度、力、運動量、エネルギーを学びました。身近な技術の仕組みを考えるときにも、これらの知識を使えます。

次回予告

次のシリーズでは「熱力学」を取り上げます。エアコンが部屋を冷やす仕組みや、エンジンが熱を仕事に変える仕組みを説明します。

<文/岡崎 凌>

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