q-二項定理の証明
公開日
2021年11月17日
更新日
2021年11月17日

こんにちは。和からの数学講師の岡本です。前回はq-二項定理を使った二項定理の天下り的な証明をご紹介しました。
今回は「q-二項定理の証明」を解説していきたいと思います。
この記事の主な内容
1.q-二項定理とは
まずは復習としてq-二項定理の主張を記しておきます。
\begin{align*} (1+x)(1+qx)\cdots(1+q^{n-1}x)=\sum_{k=0}^n\frac{(1-q^{n})(1-q^{n-1})\cdots (1-q^{n-k+1})}{(1-q^k)(1-q^{k-1})\cdots(1-q)}q^{\frac{1}{2}k(k-1)}x^k \end{align*}
パラメータqは|q|<1としておきましょう。そして、q\to1という極限を考えることで、上の等式は
\begin{align*} (1+x)^n=\sum_{k=0}^n\binom{n}{k}x^k \end{align*}
となり、二項定理が得られます。つまり、q-二項定理とは、二項定理の一般化(q-変形)と考えることができます。
2.オイラーの計算
q-二項定理の証明に入る前に、天才数学者レオンハルト・オイラーの計算をご紹介します。オイラーが計算した以下のような無限積の計算がq-二項定理証明のカギになっています。
この関数f(x)を展開したときのx^nの係数をA_nとします。つまり
\begin{align*} f(x)=A_0+A_1x+A_2x^2+A_3x^3+\cdots \end{align*}
この係数A_nを求めてみましょう。まず、A_0=1なのは積の形からすぐに分かります。また、f(x)の定義により
\begin{align*} f(x)=\frac{1-ax}{1-x}f(qx)\Longleftrightarrow (1-x)f(x)=(1-ax)f(qx) \end{align*}
であることがわかります。これにより、右辺と左辺の係数比較を行うことにより
となり、これにより
\begin{align*} f(x)=\sum_{k=0}^{\infty}\frac{(1-a)(1-qa)\cdots(1-q^{k-1}a)}{(1-q^k)(1-q^{k-1})\cdots(1-q)}x^k \end{align*}
が得られました。
3.q-二項定理の証明
それではいよいよq-二項定理の証明に入ります。まず、先ほどの関数f(x)に対して、xを-x/aと置き換えます。
次に、aをq^{-n}に置き換えます。すると
となり、左辺の無限積は分母が約分により消え、有限積になります。同時に右辺もx^{n+1}以降の係数が0になることから有限和になります(k>nのとき、係数の分母に(1-q^0)が現れるため)。
したがって、q-二項定理が証明できました!
4.さいごに
いかがでしたでしょうか?前回は「二項定理」を証明するために一般化である「q-二項定理」を用いて証明しました。しかし、今回ご紹介したように二項定理を直接経由せずにq-二項定理を証明することができます。このように、【「A」を証明するのに「A」の一般化である「A’」を利用すること】はなんだか変な感覚かもしれませんが、数学ではしばしば起こります。「一般化」や「抽象化」することで初めて気づくことや、他分野とつながることは数学の研究、学習において非常に重要であると考えられますし、これは数学だけの話ではないと個人的には思っています。ものごとを1つ、2つ上に一般化して捉え、考えていくことは日常生活でも大切です。
今回の参考文献はこちらです。オイラーの無限解析に関するお話や、バーゼル問題、q-二項定理や分割数など、おもしろい話題が詰まっています!
オイラーに学ぶ―『無限解析序説』への誘い 野海 正俊(著) 日本評論社
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<文/岡本健太郎>