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【数学の魅力】無理数の奥深さと面白さパート②(無理数と無理数編)

公開日

2025年1月29日

更新日

2025年1月19日

 みなさんこんにちは!和からの数学講師の岡本です。前回に引き続き、無理数についてもう少し深堀していきたいと思います。今回は、「無理数同士を使って新しい無理数を構成することができるのか?」についてお話していきます。

1.無理数とは(復習)

 まず、無理数について復習しておきましょう。無理数とは有理数でない数のことで、「整数/整数」の形で書けない数のことを指します。具体的には、\(\sqrt{2},\sqrt{3}, \pi, e\)などが挙げられます。さらに、数は有理数を係数とする代数方程式(多項式=0の形の方程式)の解として実現できる「代数的数」と、そうでない「超越数」に分類できます。代数的数の例として、\(\sqrt{2}, \sqrt{3}, i=\sqrt{-1}\)などが挙げられます。また、\(\pi, e\)は超越数であることが知られています。
 このように、数の世界の分類は様々あり、無理数にはいまだ解決されていない問題も多々存在します。

2.無理数から無理数は作れるか?

 さて、今回のメイントピックに入ります。「無理数と無理数を組み合わせることで新しい無理数を構成できるか?」という問題を考えてみます(注:無理数+有理数や無理数×有理数(0を除く)は必ず無理数になることは明らかなので、「無理数同士」を考えることに意味があります)。
 例えば、\(\sqrt{2}\times\sqrt{3}=\sqrt{6}\)という掛け算により、新しい無理数\(\sqrt{6}\)を構成することができます。これは一般にも成り立つでしょうか?つまり、無理数同士の掛け算は必ず無理数になるでしょうか?これは、すぐにわかることですが一般には正しくありません。反例として、\(\sqrt{2}\times\sqrt{2}=2\)があります。では、無理数同士の足し算(あるいは引き算)は必ず無理数になるでしょうか?
 これも答えはNoです。例えば、\(\pi+(-\pi)=0\)を考えればわかるように、必ずしも無理数になるとは言えそうにありません。「異なる無理数」という条件を付ければいいというものでもありません。例えば\(\frac{1+\sqrt{5}}{2}+\frac{1-\sqrt{5}}{2}=1\)が考えられます。また、前回のマスログでも言及しましたが、\(\pi+e\)が無理数か否かはいまだわかっていません…!
 このように、無理数同士の四則演算により無理数を構成する方法は意外にも難しいということがわかります。では、「無理数の無理数乗」はどうでしょうか?さすがにこれは無理数になりそうな気がしますが、この話題は意外にも奥が深いのです。

3.無理数の無理数乗は必ず無理数?

 例えば、\(a:=\sqrt{2}^{\sqrt{2}}\)という数を考えてみましょう。\(\sqrt{2}\)は無理数なので、\(a\)は「無理数の無理数乗」という数であることがわかります。いかにも無理数であるように見えますが、この数が実際に無理数か否かを判定するのは非常に難しそうです。そこで、場合分けをしてみましょう。
【1】\(a\)が有理数であるとき、これは「無理数の無理数乗は無理数」という予想の反例になります。
【2】\(a\)が無理数であるとします。このとき、\(a^{\sqrt{2}}\)は「無理数の無理数乗」となります。しかし、指数法則を用いて計算を行うと

\begin{align*}
a^{\sqrt{2}}=\big(\sqrt{2}^{\sqrt{2}}\big)^{\sqrt{2}}=\sqrt{2}^{\sqrt{2}\times\sqrt{2}}=\sqrt{2}^2=2
\end{align*}

となり、\(a^{\sqrt{2}}\)は有理数となってしまいます。したがって、いずれの場合も「無理数の無理数乗が有理数となる場合が存在する」ことが示されてしまいました…!
 この話の面白いところは、\(\sqrt{2}^{\sqrt{2}}\)が有理数か無理数かは分からない点です。どちらの場合であっても「無理数の無理数乗が無理数」であることの反例となってしまう不思議な証明です。ちなみに、\(\sqrt{2}^{\sqrt{2}}\)は無理数であることが知られています。この辺りの話題で非常に有名な「ゲルフォント・シュナイダーの定理」を使うとすぐに示せます。

【ゲルフォント・シュナイダーの定理】\(\alpha, \beta\)が代数的数で、\(\alpha\neq 0, 1\)かつ、\(\beta\)が有理数でないならば、\(\alpha^\beta\)は超越数となる。

 この定理はとんでもなく強力で、条件を満たす\(\alpha, \beta\)から、超越数を構成することができます。また、ある数が\(\alpha^\beta\)の形で表現できれば、その数は無理数であるだけでなく、超越数であることも証明できる優れものです!実際に、\(\alpha=\sqrt{2}, \beta=\sqrt{2}\)は条件を満たしますので、\(\sqrt{2}^{\sqrt{2}}\)は超越数、つまり無理数であることがわかります!
この他にも、\(\alpha=i, \beta=-2i\)とします。これは、ゲルフォント・シュナイダーの定理の仮定を満たします。このとき、\(i^{-2i}\)は、ド・モアブルの定理:\(\cos \theta=i\sin \theta=e^{i\theta}\)を用いると以下のように計算できます。

\begin{align*}
i^{-2i}=\Big(\cos \frac{\pi}{2}+i\sin \frac{\pi}{2}\Big)^{-2i}=(e^{\frac{i\pi}{2}})^{-2i}=e^{\pi}
\end{align*}

したがって、\(e^{\pi}\)は超越数であることが証明できました!

4.さいごに

 いかがでしたでしょうか。与えられた数が無理数や超越数であることや、新しく無理数を構成することは意外にも難しく、奥が深いことがわかりました。和からでは、こうした高校や大学以上の数学を個別授業形式が学習することができます。お客様に合った授業が実現できるように柔軟に対応することができます。個別授業に興味のある方はぜひ一度無料カウンセリングにご参加ください!

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<文/岡本健太郎>

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