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「席替えに潜む数学」:和から講師岡本(ζWalker) ロマンティック数学ナイト@オンライン20200530

公開日

2024年11月9日

更新日

2025年1月28日

2020年5月30日、オンラインで開催された「ロマンティック数学ナイト」にて、和からの数学講師・岡本(ζWalker)氏が「席替えに潜む数学」と題したプレゼンテーションを行いました。

このプレゼンは、日常の一見平凡な出来事である「席替え」を数学的な視点で掘り下げ、その背後に潜む奥深い数理構造を明らかにしたものです。その内容を振り返りながら、数学のロマンに迫ってみましょう。

▼プレゼン動画はこちらからご覧いただけます▼

数学とロマンを結びつけるユニークな視点

岡本氏は冒頭、自己紹介をユーモアたっぷりに行いました。彼は「生粋のアーティスト」を自称し、Twitterでの活動や数学グッズの販売についても紹介しました。特に話題となったのは、「割れない素数グラス」という製品。グラスのデザインに素数を用い、「素数だから割れない」という数学的ジョークを込めたユニークな商品で、数学ファンの間で人気を集めているそうです。このような数学を楽しむ姿勢は、今回のプレゼン全体を象徴するものでした。

席替えの数学的定義

「席替え」と聞いて、多くの人が思い浮かべるのは学生時代の甘酸っぱい思い出やドキドキする気持ちでしょう。しかし、岡本氏はここに数学的なロマンを見出します。まずは「席替え」を定義から掘り下げ、次のように整理しました。

「定常的に座席配置と構成人員が決定されている集団において、その座席の順番を変更すること」

これを具体例で説明するため、4つの席がある場合を考えました。席替えのパターンは何通りあるのか? これは数学で「階乗」を用いる典型的な問題です。4席の場合、4の階乗である 4×3×2×1=244 \times 3 \times 2 \times 1 = 244×3×2×1=24 通りがあることが示されました。このように、席替えという日常的な行動が、数学的には「組み合わせ」と「順列」の考え方に直結しているのです。

全員が移動する席替えの難しさ

次に岡本氏は、席替えの中でも特に興味深い「全員が元の位置から移動する席替え」、つまり「完全置換」に注目しました。この場合、単純に席替えの総数を求めるよりも複雑になります。

たとえば4席では9通り、一般化すると「モンモール数」と呼ばれる数学的な数列が使われます。このような問題を通して、席替えという日常的な行動が実は数学的には奥深い構造を持つことを紹介しました。

席替えの時間変化に注目する

岡本氏のプレゼンがユニークだった点は、席替えを「時間変化」という観点からも捉えたことです。通常、席替えは「初期状態」と「結果」のみが注目されますが、彼はその「プロセス」に目を向けました。

たとえば、4人の席替えを例に、初期状態から席替え完了までの時間を0.2秒単位で追跡。その過程を視覚化し、座席の移動軌道を線で描くことで、席替えが単なる動きではなく「組紐群」という数学的対象になることを示しました。このアプローチは、席替えの背後にある数学的美しさを際立たせると同時に、ロボット工学など実用的な分野との関連性も明らかにしました。

結び目理論と席替えのリンク

岡本氏のプレゼンはさらに進み、席替えの軌道を「結び目理論」に関連づけました。特定の動きを繰り返す「周期的な席替え」を考えると、軌道が閉じた輪っか、つまり「結び目」や「絡み目」として捉えられるのです。

たとえば、2人の動きがシンプルで解ける場合、それは「Trivial knot(トリビアルノット)」と呼ばれる結び目になります。一方で、複雑な動きが絡み合う場合、古典的な「Trefoil knot(三葉結び目)」として整理されることもあります。このように、席替えという一見単純な行動が、数学の中で壮大な構造に繋がる可能性を示しました。

Perfumeのダンスと数学的美学

プレゼンのクライマックスは、岡本氏が大好きなPerfumeの楽曲「レーザービーム」を題材にした解析でした。Perfumeの3人のメンバー(あ~ちゃん、のっち、かしゆか)のダンスを数学的視点で捉え、3人の配置が入れ替わる軌道を「Whitehead link」という美しい絡み目として表現しました。

特に印象的だったのは、ダンスの終盤で起きた奇跡的な入れ替わりです。このドラマチックな動きが、数学的に見て完璧な「双曲構造」を持つ絡み目を生み出し、岡本氏は「これこそロマンだ」と感動を表現しました。数学と芸術、ロマンが交錯する瞬間を示すプレゼンは、まさに圧巻の一言でした。

数学のロマンは日常の中に

岡本氏のプレゼンは、数学が私たちの日常生活の中に溶け込み、それを楽しむ方法を教えてくれました。「席替え」という平凡な行動を掘り下げるだけで、数学的な構造や理論が次々と浮かび上がるのです。さらに、ダンスやロボット工学といった実用的な応用例まで示されたことで、数学の可能性と魅力がより身近に感じられるものとなりました。

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