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【難関】モーリーの定理の証明-アラン・コンヌによる代数的証明-

公開日

2021年2月14日

更新日

2024年7月14日


こんにちは。和からの数学講師の岡本です。以前、モーリーの定理を紹介し、三角比を使った証明を解説しました。今回は1982年に“数学界のノーベル賞”とも言われるフィールズ賞を受賞した天才数学者アラン・コンヌによる「代数的な別証明」の概説をしていこうと思います。(※もちろんですが、モーリーの定理の別証明がフィールズ賞受賞理由ではありません。)
なお、コンヌによる証明は以下のURLから読むことができます。きちんと内容を理解したい方はこちらをご覧ください!

http://www.numdam.org/item/PMIHES_1998__S88__43_0.pdf

1.モーリーの定理(再掲)

ひとまず、モーリーの定理の主張を述べます(詳しくは過去のマスログをご覧ください)

モーリーの奇跡

定理(フランク・モーリー,1899)
任意の三角形の各頂点から、角の3等分線を伸ばす。
2つの頂点の隣り合う3等分線の交点を結ぶと正三角形ができる。

いやー!何度見ても美しいですね!!
このシンプルな結論の美しさにコンヌも魅了され、証明を一生懸命考えたのでしょう。

2.不動点という視点

例のように各頂点から3等分線を引きます。こうしてできた「交点」をコンヌは「ある変換の不動点」と考えました。なかなか思いつかない発想ですよね…!
ここでいう変換というのは「回転」や「平行移動」、またそれらの組み合わせを意味します(「運動」と表現するとわかり易いかもしれません)。
実際に、点Aを中心に\(2\alpha\)回転させる変換を\(g_A\)、点Bを中心に\(2\beta\)回転させる変換を\(g_B\)、点Cを中心に\(2\gamma\)回転させる変換を\(g_C\)としましょう。三角形ABCに関して\(g_A\)の変換を行うと、もちろんですが回転の中心Aだけ動きません。このような、変換しても動かない点を不動点と呼び、変換\(S\)の不動点を\(\text{Fix}(S)\)と書くことにします。では、変換\(g_A\)の後に変換\(g_B\)を続けて行う合成変換\(g_Ag_B\)を考えましょう。

この変換で動かない点が実は上図の交点Eなのです。つまり、

\begin{align*}
\text{Fix}(g_Ag_B)=E
\end{align*}

となります。もうひとつ面白い変換を考えてみましょう。それは、変換\(g_A\)を3回行い、変換\(g_B\)を3回を行い、さらに変換\(g_C\)を3回行うという合成変換\(g_A^3g_B^3g_C^3\)を考えます。実際に三角形全体を動かしてみたのが下図です。

なんということでしょう!三角形は元に位置に戻ってきました!つまり、合成変換\(g_A^3g_B^3g_C^3\)は変換を行わない「恒等変換」だったということがわかりました。このような図形や空間を「変換する」という操作全体の集合は数学における「」という構造を持ちます。コンヌはこの群という概念を使った「代数的手法」でモーリーの定理の証明を試みたのです。

3.コンヌの定理とモーリーの定理

まず、モーリーの定理の証明のために、コンヌが示した一般的な形の定理を紹介します。そのためにいくつか準備をしておきましょう。

体という四則演算が大体不自由なくできる集合\(k\)を考え、その上のアフィン群\(G\)を考えます。言い換えると、\(x\in k\)に対して、\(a\in k^{\times}=k\setminus\{0\}\)と\(b\in k\)を用いて

\begin{align*}
x\mapsto ax+b
\end{align*}

という変換全体の集合が\(G\)となります。ざっくりいうと、「\(a\)倍」というのは「回転と拡大・縮小」を表し、「\(+b\)」というのは「平行移動」を表します。そこで、上のような変換を\(g\in G\)とし、この変換の「回転と拡大・縮小」の情報だけを取り出す対応\(\delta:G\longrightarrow k^{\times}\)を考えます。つまり\(\delta(g)=a\)と定義します。この対応\(\delta\)により、\(1\in k^{\times}\)に送られるような\(G\)の元の集合を\(T\)とします(つまり、\(T=\mathrm{Ker}(\delta)\))。\(T\)は平行移動のみの変換となることがわかります。これでコンヌの定理を述べる準備ができました。

定理(アラン・コンヌ)
体\(k\)上のアフィン群\(G\)の元\(g_1, g_2, g_3\)を考える。ただし、\(g_1g_2, g_2g_3, g_3g_1, g_1g_2g_3\)はどれも平行移動でないとする。また、\(j:=\delta(g_1g_2g_3), \alpha :=\text{Fix}(g_1g_2),\beta :=\text{Fix}(g_2g_3),\gamma :=\text{Fix}(g_3g_1)\)と表す。このとき次の(1)と(2)は同値となる。

(1)\(g_1^3g_2^3g_3^3=1\)(ただし、\(1\)は恒等変換を意味する)

(2)\(j^3=1\)であり、\(\alpha +j\beta+j^2\gamma=0\)

もともとのモーリーの定理からかなりかけ離れた内容になってきました。そもそも何をいってるのかわからなくなってきそうですね(笑)。

コンヌの定理の証明は論文(http://www.numdam.org/item/PMIHES_1998__S88__43_0.pdf)あるいはかの有名なブログINTEGERS(http://integers.hatenablog.com/entry/2017/08/30/022712)にて解説があるので興味のある方はご覧ください。

さて、コンヌの定理における体\(k\)を複素数の集合\(\mathbb{C}\)で考えます。すると面白いことに、最初に考察した変換\(g_A,g_B, g_C\)が全てアフィン群の元で、コンヌの定理の\(g_1, g_2, g_3\)として具体的に計算することができます。つまり、点A~Fまでを複素平面上の点と考えるとことで、\(\text{Fix}(g_Ag_B)=E, \text{Fix}(g_Bg_C)=F, \text{Fix}(g_Cg_A)=D\)であり、さらには(1)の条件\(g_A^3g_B^3g_C^3=1\)が成り立っています。つまり、\(j^3=1\)なる複素数\(j\)を使って、以下が成り立ちます。

\begin{align*}
E+jF+j^2D=0
\end{align*}

3乗根\(j\)を使ったこの等式は、E,F,Dの配置が正三角形であることを意味します。つまり、自動的にモーリーの定理が証明できたのです!!

4.さいごに

今回が「群」という、純代数的な手法を使ってモーリーの定理の証明の概略を説明しました。数学って奥が深いですよね!こういった奥深さや感動を手軽に味わえるのも数学のいいところだと思います。

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<文/岡本健太郎>

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