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2020/03/29

厳選!フィボナッチ・フルコース~フィボナッチ数のマニアックな世界へ~


「\(34\)」という数字を見て、何を思い浮かべますか?、、、

そうですね!フィボナッチ数ですね!

今回は、皆さんが大好きな「フィボナッチ数」についてひたすら語っていこうと思います。デザインやアート、植物から株価の分析まで、さまざまなところで登場するフィボナッチ数の世界、スタートです!

1.そもそもフィボナッチ数とは?

念のためフィボナッチ数について確認しておきます。そもそもフィボナッチって何?といったところからはじめましょう。フィボナッチとは主に13世紀に活躍したイタリアの数学者レオナルド・ダ・ピサ(またの名をレオナルド・フィリウス・ボナッチ)の事をさします。なんとフィボナッチというのは「愛称」であり、名前ではないのです。

ちなみに「レオナルド・ダ・ピサ」というのは「ピサ(地名)のレオナルド」という意味で、日本でいう「江戸のはちべぇ」みたいなイメージです。なお「レオナルド・フィリウス・ボナッチ」というのは「ボナッチ家の息子レオナルド」という意味です。19世紀の数学史家のリブリによって「フィボナッチ」と略され、瞬く間にその名が広まってしまい、現在も「フィボナッチ」が一般的になってしまいました。

そんな彼は、次のような数列を考えました。

$$F_n=F_{n-1}+F_{n-2}$$

ただし、\(F_1=F_2=1\)とします。これは漸化式といって、前の番号の数の情報によって新たな数が構成されていく仕組みになっています。こうして得られる数列をフィボナッチ数列、そしてフィボナッチ数列に現れる数をフィボナッチ数と呼びます。
フィボナッチ数は前2つの数を足すことによって構成していきます。例えば、1番目と2番目は\(1\)であることから3番目は\(1+1=2\)。4番目は\(1+2=3\)、5番目は\(2+3=5\)となります。最初のいくつかのフィボナッチ数を求めてみましょう。

$$F_1=1, F_2=1, F_3=2, F_4=3,F_5=5,F_6=8,F_7=13,F_8=21,F_9=34,F_{10}=55,…$$

さて、このフィボナッチ数には実に多くの性質があります。今回は岡本の独断と偏見で選んだ6つの魅力あふれる性質についてじっくりと味わっていただこうと思います。

2.フィボナッチ・フルコース

岡本による、ややマニアックな“厳選フィボナッチ・フルコース”をお楽しみください。
まずは前菜です。

①.フィボナッチ数の整除性(オードブル)

\(p\) を\(5\)で割って\(1\)または\(4\)余る素数とする(たとえば\(11\), \(19\)など)。このとき\(p-1\)離れたフィボナッチ数たちの差は必ず\(p\)の倍数になる。つまり、以下が成り立つ。

$$F_{n+p-1} \equiv F_n \pmod{p}$$

これは中々エキゾチック。ちょっと確かめてみましょう!
\(p=11\) とします。適当に8番目のフィボナッチ数\(F_8=21\)をとってきましょう。定理によると\(p-1=10\)個進んだ18番目のフィボナッチ数\(F_{18}\)を見てみます。すると\(F_{18}=2584\)。結構大きい数になりますね。果たして差は\(11\)の倍数になるのでしょうか?さっそく計算してみましょう。

$$F_{18}-F_8=2584-21=2563=11\times 233$$

なった…!!なりましたよ…。\(11\)で割り切れたとき、興奮で震えました。じゃあ、9番目と19番目は…?

$$F_{19}-F_9=4181-34=4147=11 \times 377$$

ひぃ…。やはり\(11\)で割れました…。絶句です。
二項係数を用いた公式(Catalanの公式)やFermatの小定理、フィボナッチ数の加法定理等を用いることで証明できます。

さあ、フィボナッチ数の奥深い世界に進んでいきましょう。

②.Lameの定理(スープ)

正の整数\(x\)と\(y\)に対して小さい方の桁数を\(n\)とする。このときEuclidの互除法を用いて\(x\)と\(y\)の最大公約数を求める際に行う計算回数は\(5n\)回以内となる。また、\(x\)と\(y\)が隣り合うフィボナッチ数で、桁数が異なる場合、最大回数となる。

なんと、Euclidの互除法の回数は\(5n\)回で評価できるのです。しかも、隣り合うフィボナッチ数のペアの場合、最も作業回数が多い(めんどくさい)とのこと!
例えば、\(144\)と\(89\)のペアを考えて互除法を行いましょう。このとき小さい方の\(89\)の桁は\(2\)桁なので、定理によると\(5\times 2=10\)回も互除法を行わなければならないようです。実際に

$$(144,89)=(144-89,89)=(55,89)\\
=(55,89-55)=(55,34)\\
=(55-34,34)=(34,21)\\
=(34-21,21)=(13,21)\\
=(13,21-13)=(13,8)\\
=(13-8,8)=(5,8)\\
=(5,8-5)=(5,3)\\
=(5-3,3)=(2,3)\\
=(2,3-2)=(2,1)\\
=(2-2\cdot 1,1)=(0,1)$$

となり、ちょうど\(10\)回の操作で完結しました。どうやってこんなことがわかるのか、一見想像がつきません。やっぱり数学はすごいな…と思わせてくれるような定理でした。

証明に関しては「一番手間がかかるペア」を考えていくと自動的にフィボナッチ数の定義式が現れ、フィボナッチ数の考察から\(5n\)という評価式を得ることができます。なお、より精密な評価として黄金比が現れるという結果もあります。

③.Andre-Jeanninの定理(ポアソン)

(ポアソンは数学者ではなくて、魚料理のことです。)

フィボナッチ数の逆数を全て足し合わせると収束する。

$$\sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{F_n} =\frac{1}{1}+\frac{1}{1}+\frac{1}{2}+\frac{1}{3}+\frac{1}{5}+\frac{1}{8}+\cdots = 3.35988566624\cdots$$

さらにこの収束値(逆フィボナッチ定数と呼ぶ)は無理数である。

でました!!逆数和!数が大きくなればなるほどその数の逆数は小さくなります。つまり、足していく逆数はだんだん小さくなり最後は塵のように小さくなります。しかし、フィボナッチ数のみ足すのではなく自然数全てに対して足し上げてみると

$$\sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{n} =\frac{1}{1}+\frac{1}{2}+\frac{1}{3}+\frac{1}{4}+\cdots = \infty$$

となり、なんと、無限大に発散することが知られています。ちなみに素数に限って足し上げてみましょう。すると

$$\sum_{p:\mbox{素数}}\frac{1}{p} =\frac{1}{2}+\frac{1}{3}+\frac{1}{5}+\frac{1}{7}+\cdots = \infty$$

となり、やはり無限大になってしまいます…。なおこの事実から素数は無限に存在することが証明できます(もし有限個だったら無限大にならないはず)。

フィボナッチ数は定義から無限に作れる数であるにも関わらず、その無限和は有限の値に収束してしまう、絶妙な数列になっています。しかもその収束先(逆フィボナッチ定数)が無理数であるとのこと(つまり分数で表せない)!鳥肌が立ちませんか!?

なお、収束することの証明は、フィボナッチ数を\(2\)冪あるいは黄金比の冪で評価することにより比較的簡単に証明できます。無理数性に関しては\(q\)-指数関数、\(q\)-対数関数などを使ったDuverneyによる証明が面白いです。

逆フィボナッチ定数は無理数ですが、超越数(代数方程式の解の範疇外の数)であるかどうかはわかっておらず、なんと未解決問題なのです!!

④.Cohnの定理(ソルベ)

お口直しのシャーベット感覚で次の定理を味わっていきましょう。

平方数であるフィボナッチ数は\(1(=1^2)\)と\(144(=12^2)\)のみである。

えっ!?と思いますよね。
確かめましょうか?小さい方からフィボナッチ数をならべてみましょう。

$$1,1,2,3,5,8,13,21,34,55,89,144,233,377,610,987,1597,2584,4181,…$$

確かに\(144\)以降に平方数はいまのところ現れていませんが、検証することができません…。しかし、数学を使うことで、\(144\)以降には絶対に現れないことが証明できます。
こういうところに数学の美しさや偉大さを感じます。
なお、証明にはフィボナッチ数の親戚にあたるLucas数との諸公式、平方剰余の相互法則等を利用する方法があります。

さて、コースも終盤、メインの肉料理です。

⑤.Zeckendorfの定理(ヴィアンド)

任意の自然数は、連続しない異なるフィボナッチ数の和で一意的に表現することができる。

個人的にフィボナッチ関係の定理で最も好きな定理です。何を言っているのか、実際に例を使って説明しましょう。たとえば適当に100という自然数をとってきます。この\(100\)を連続しない異なるフィボナッチ数の和で表してみましょう。すると

$$100=89+8+3$$

と表せます。たしかに全てフィボナッチ数であり、連続したフィボナッチ数ではないです。
連続したフィボナッチ数を許してしまうと、

$$100=89+8+2+1=89+5+3+2+1$$

というように、いくらでも細かいフィボナッチ数に分解することができます。ですので、定理の主張では、連続するフィボナッチ数を考えないようにしています。
そして衝撃なのが、この表し方は1通りしかないという点です。もういくら探してもこれ以外表し方がないということです。雷に打たれたような衝撃を感じませんか?
しかし、証明は意外とあっさりとしていて、帰納法で証明できます。これはこれでまた衝撃ですね。

最後はデザートといきましょう。

⑥.Lehmerの定理(デザート)

次が成り立つ:

$$\sum_{n=1}^{\infty}\tan^{-1}\left(\frac{1}{F_{2n+1}}\right) =\frac{\pi}{4}$$

ここで\(\tan^{-1}\)は\(\tan\)の逆関数です。

本日初登場、円周率\(\pi\)です。なんとフィボナッチ数はπとも関係していたんですね!これはスクープものです。
証明には\(\tan\)の加法定理、Cassini-Simsonの公式を用いて級数を変形すると各項が相殺され左辺は\(\tan^{-1}(1)\)となり、\(\pi/4\)が得られます。

3.まとめ

いかがでしたでしょうか?定義は単純なフィボナッチ数ですが、素数との関係、や黄金比、無理数、超越数、円周率などとの関係など、整数論のあらゆるトピックに絡んできます。それだけでなく、松ぼっくりやパイナップルなど植物や自然界の様々な現象の中にフィボナッチ数が隠れており、アートの世界にも応用されています。

弊社では岡本による「数学とアート」に関するの無料セミナーもありますので、興味のある方はぜひご参加ください!(数学アート超入門-美しさの中の隠れた数学- https://wakara.co.jp/course/7803

今回ご紹介した定理についてもっと知りたい、証明してみたいという方はぜひ数学教室和までお問い合わせください!みなさんもぜひ身の回りに潜むフィボナッチ数を探してみてはいかがでしょうか。
<文/岡本健太郎>

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