ミニチュアの数の世界~キラキラ数学を探せ!第3話~
公開日
2020年4月1日
更新日
2020年4月1日
皆さんこんにちは、和講師の松中です。
キラキラ数学プロジェクトに「ミニチュアの数の世界」と題して動画を追加しましたので報告します!
素数と私
突然ですが、私は素数のことが大好きです。
ただ、大学で数論という分野を学んだことのない方(日本人口の99%以上!)には、この気持ちは伝わりにくいかもしれません。。。
実際私も中学生時代に初めて素数と出会ったときには、特に好きという感情は抱かず、素因数分解は整数問題を解くのに便利な方法なんだなと思った程度でした。
中学高校時代の私にとって素数は確かに魅力的でしたが、それは「sin」や「微分」など他の数学概念に対しても同様で、素数だけが特別な存在ではなかったのです。
数学科に限らず理系大学生は「微分積分」、「線形代数」、「微分方程式」など、どの理系分野でも必要とされる数学を学びますが、そこには素数は全くと言っていいほど出てきません。それは工学部情報学科だった私にとっても例外ではなく、素数のことを意識することがなくなってしまいました。
当時の私に好きな数学分野を聞くと「解析学」と即答するはずです。微分や積分を操り、物理や工学にガンガン応用される解析学は若い私にとって魅力的で、いつしか私は解析学に溺れていったのです。
大学を卒業した私はエンジニアとして働きながら、土日は自由に好きな数学の勉強をしていました。当時たまたま購入した「代数系入門(松坂和夫著)」を読むうちに、「代数学」という数学分野にどんどんはまっていきました。
無人島に一冊だけ本を持って行けるなら私はこの数学書を持っていきます。本当に大好きな数学書です。当時勤めていた会社にはワンダーフォーゲル部があり、有志で毎年富士山に登っていました。富士山に向かう上司の車の中で、富士山に登りながら、富士山下山後の旅館の打ち上げで、私は「代数系入門」を読み続けていたのです。
現在の私が好きな数学分野は間違いなく「代数学」です。そして代数学にはあいつが、そう、素数が住んでいたのです。
解析学ではわきに追いやられていた素数も、代数学の分野では主役です。代数学には「pが素数の時○○○が成り立つ」という定理がごまんと存在します。素数の魅力を忘れていた私は素数に謝り、中学高校時代の何倍もの熱い気持ちで素数を迎え入れました。
「ごめん、もう絶対お前のこと忘れないよ!」
ミニチュアの数の世界
今回の動画で私が話しているのは私が初めて「素数すげー!」となったお話です。
普段私たちは、実数という数の世界に囲まれて暮らしています。しかし実は1、2、3、4、という自然数一つ一つに対応する数の世界が存在します。その数の世界は実数に比べれば遥かに小さな世界で、私は「ミニチュアの数の世界(※)」と呼んでいます。
このミニチュアの数の世界では足し算、引き算、掛け算ができるのですが、割り算はできるとは限りません。
「割り算ができないとはどういうことか?」
「どんな時に割り算ができるのか?」
「そこには素数が密接に絡んでいた!」
是非ご覧ください。
※「数学ガール(フェルマーの最終定理)」内で結城浩先生が有限体を「ミニチュアモデル」と表現しておりました。その表現がとても好きで、授業ではいつも「ミニチュアの数の世界」として紹介しています。
P.S.
素数が好きすぎて素数コレクターというアプリも作りました。動画の中で私が思う素数の魅力を「無秩序の中の秩序」という一言で表しています。こちらも是非ご覧ください。
<文/松中宏樹>