マスログ

2020/04/04

ABC予想が証明された!!解決したのは日本人数学者!?でも、ABC予想って何?


2020年4月3日に、日本の数学界において非常に大きなニュースがありました。
数学で未解決だった難問「ABC予想」が、京都大学の望月新一教授によって証明されたのです!
2012年に証明を望月先生のWEBページで一般公開してから、なんと8年が経過してからの出来事です。

ですが、

  • ・望月教授ってどんな人?
  • ・「ABC予想」って何なのか?
  • ・なぜ8年もの年月がかかったのか?

など疑問に思っている方も多くいらっしゃると思います。
今日は、ABC予想をめぐるあれこれを少し紹介したいと思います。

ABC予想を解決した望月新一教授とは?

まず、望月先生とはどんな人でしょうか?

望月先生は16歳でプリンストン大学に入学してから、23歳でph. D(博士号の学位)を取得しています。一般的に大学に入学するのは18歳、ph. Dを取得するのは27歳ですから、ものすごい早さで飛び級をしていることになります。
卒業後も、32歳の若さで京都大学数理解析研究所の教授に就任するなど、大のつく天才だったのです!

そんな望月教授が2012年8月に提出した論文が、ABC予想に関する内容でした。

ABC予想とは何か?

数学には未解決の問題がたくさんあり、それを「予想」と呼びます。数学者によって「予想」が証明されることで、はじめて「定理」と呼ばれるようになります。

ABC予想は1985年にジョゼフ・オステルレデイヴィッド・マッサーにより提起された、数論という分野(数の性質を研究する分野)での予想です。

実際の予想の内容を覗いてみましょう。
数式が苦手!という方も雰囲気だけ見ていただければ大丈夫です。

ABC予想
① \(a+b=c\)を満たす、互いに素な自然数の組\((a,b,c)\)に対し、
② 積\(abc\)の「互いに異なる素因数の積」をdと表す。
③ このとき、任意の\(\epsilon > 0 \)に対して、\(c>d^{1+\epsilon}\)を満たす組\((a,b,c)\)は、
④ たかだか有限個しか存在しないであろう。

細かい数式部分は機会があればまたお話しするとして、この予想を理解する上で重要なポイントは①の\(a + b\)という足し算と、②の\(abc\)という掛け算(厳密には「互いに異なる素因数の積」)を、③で大小関係を比較している点です。

つまり、「足し算と掛け算の関係についての予想」、ということになります。

足し算と掛け算と聞くと一見簡単そうに感じてしまいますが、非常に奥が深く、実はまだ数学者の間でも分からないことがたくさんあるのです。

ABC予想が正しければ、人類は数論について考えるために必要な非常に強力な道具を手に入れることになります。「ABC予想が正しければ成り立つ」とされる予想が数多く存在しており、ABC予想の証明が完成すればそれらの予想も次々に解決されると言われています。

なぜ、8年もの年月がかかったのか?

一般的に学術誌に論文を投稿すると、出典に誤りがないか、論理に不足がないか等チェックを行い問題ないと判断されれば論文として掲載されます。これを査読と言います。
しかし、望月教授の論文は査読を行なったものの全く理解できず、一般公開して研究者たちで検証を行うことになりました。

2012年時点ですでに研究者の間で天才・望月新一の名は知られており、数論の非常に重要なテーマであるABC予想ということもあって、世界中の数学者たちが一斉に注目しました。

そうして論文に目を通し始めた数学者たちは、皆一同に目を丸くします。

この論文はなんだ?

ここで当時の雰囲気を感じ取るために、望月教授が2012年に公開した論文のタイトルを見てみましょう。
四部構成からなり、全600ページ越えの大長編です。

  • ・Inter-universal Teichmuller Theory I: Construction of Hodge Theaters.
  • ・Inter-universal Teichmuller Theory II: Hodge-Arakelov-theoretic Evaluation.
  • ・Inter-universal Teichmuller Theory III: Canonical Splittings of the Log-theta-lattice.
  • ・Inter-universal Teichmuller Theory IV: Log-volume Computations and Set-theoretic Foundations.

ABC予想とは一言も出てきませんね。Inter-universal Teichmuller Theoryってなんでしょう?間、宇宙、タイヒミュラー理論?

足し算と掛け算の話をしているのではないの?なぜ宇宙?

あなたが意味不明に思うのも無理はありません。
ほとんどの数学者も同じ反応をしました。

なぜなら、これは望月教授がABC予想を解決するために自ら生み出した宇宙際タイヒミュラー理論という全く新しい理論だからです。

(ちなみに歴史上新しい理論が生まれるとき、しばしばこういうことは起きます。例えばアイザック=ニュートンは物理の問題を解決するために微積分学を作りましたし、アインシュタインも矛盾のない重力の理論を作るために、一般相対性理論を生み出しました。)

ウィスコンシン-マディソン大学のジョーダン・エレンバーグという世界有数の数学者は、当時自身のブログでこのように述べています。

like you might be reading a paper from the future, or from outer space
まるで未来から、宇宙の外から来た論文を読んでいるような気分だ。

論文を理解するためには、望月教授の生み出した宇宙際タイヒミュラー理論を一から勉強する必要があります。
望月教授ご自身が世界有数の数学者たちに何度も講義を行い、8年間という長い年月を経て、この論文は本当に正しい、ということで落ち着いたのです。
これが8年もの年月がかかった理由です。

さいごに

いかがでしたでしょうか。

小学生で習う足し算と掛け算の関係を考えているうちに、天才数学者たちを8年も悩ませる全く新しい理論が生まれるとは非常に面白いですね。

今回の望月教授の証明は、ノーベル賞に相当すると考える専門家もいるくらいに、今後の数学に大きな影響を与えるものであると言われています。

ぜひ皆さんも詳しく調べたり、ABC予想(これから「ABC定理」と呼ばれるようになるかもしれませんね)の中身について考えてみたりしてください。

書籍としては唯一の一般向け書である加藤文元教授の「宇宙と宇宙をつなぐ数学 IUT理論の衝撃」が詳しいです。

電子版もあるので是非ご覧ください。

 

それではごきげんよう。引き続き数学をお楽しみください!

<文/岡崎 凌>
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