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プラスチック数と3次方程式

公開日

2021年11月24日

更新日

2021年11月24日


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こんにちは。和からの数学講師の岡本です。前回に引き続き、「プラスチック数」についてもう少し掘り下げていきたいと思います。前回の記事がこちら。

魅惑の比率「プラスチック比」をご存じですか?

1.プラスチック比とは(復習)

前回は正方形を3つ相似な長方形で分割する方法を考えました。分割の方法は大きく分けて3通りあり、1つ目は「3等分」、2つ目は「1:3/2」の長方形を使う方法、そして3つ目では、プラスチック数\(\rho=1.3247\ldots\)が現れる、というものでした。

今回の記事では、このあたりをもう少し詳しく、数学的に説明していきたいと思います。

2.プラスチック数の登場

先ほどの長方形分割の話ですが、相似な長方形が大中小と3種類使われています。そこで、中サイズの長方形の短辺を1、長辺を\(a\)とおきましょう。また、大きいサイズは中サイズの\(x\)倍、小サイズは中サイズの\(y\)倍であるとしましょう。これらの設定を図にまとめてみます。

この設定における\(x\)を具体的に求めていきましょう。まず、全体が正方形であることから

\begin{align*}
ax=x+1.
\end{align*}

また、敷き詰められていることから

\begin{align*}
a+y=ax, ay=1
\end{align*}

が成り立ちます。これら3つ式を使ってうまく\(x\)のみの式にすると、最終的に以下のような3次方程式が得られます。

\begin{align*}
x^3=x+1.
\end{align*}

何を隠そう、この方程式の実数解こそがプラスチック数\(\rho\)なのです!

3.3次方程式を解こう

2次方程式なら中学や高校で習う「解の公式」ですぐに求められますが、3次方程式は難しそうです。しかし、高校までで習いはしませんが、3次方程式にも「解の公式」が存在します。この話だけで記事は2つぐらいかけそうなので、今日はあまり深入りはせずにサクッと解いてみましょう。まず、解きたい方程式は

\begin{align*}
x^3-x-1=0
\end{align*}

です。次に\(x=u+v\)とおくと

\begin{align*}
(u+v)^3-(u+v)-1=u^3+v^3-1+(3uv-1)(u+v)=0
\end{align*}

となりますが、もし条件

\begin{align*}
u^3+v^3-1=0\\
3uv-1=0
\end{align*}

を満たす\(u,v\)が求められれば\(u+v\)は考えている方程式の解になります(また、\(y=x^3-x-1\)の関数の形を考えると実数解をただ1つ持つことがわかるので1つでも条件を満たす\(u, v\)が求められれば\(u+v\)が求める実数解になります)。そしてこの条件は

\begin{align*}
u^3+v^3=1\\
u^3v^3=\frac{1}{27}
\end{align*}

と書き換えられるので、\(u^3, v^3\)は2次方程式\(X^2-X+1/27=0\)の解となります。これは2次方程式の解の公式により

\begin{align*}
X=\frac{1\pm \sqrt{1-4/27}}{2}=\frac{1\pm \sqrt{23/27}}{2}=\frac{9\pm \sqrt{69}}{18}.
\end{align*}

したがって、求める実数解\(x\)は上の2次方程式の解それぞれの3乗根を使って

\begin{align*}
x=\sqrt[3]{\frac{9+\sqrt{69}}{18}}+\sqrt[3]{\frac{9-\sqrt{69}}{18}}=1.324717957\ldots
\end{align*}

と表せます(このような解法を「カルダノの解法(公式)」といいます)。実はこの値こそ、プラスチック数なのです!このように、3次方程式\(x^3-x-1=0\)の実数解としてプラスチック数を特徴付けることができました。これはちょうど黄金比が\(x^2-x-1=0\)という2次方程式に対応しているのと似ています。

4.値を使って正方形を分割してみよう

ここまでの計算で\(x=\rho\)(プラスチック数)であり、\(\rho^3=\rho+1\)を満たすことがわかりました。では、先ほどの設定における、\(a, y\)を求めてみましょう。まず\(a\)は

\begin{align*}
a=\frac{x+1}{x}=\frac{\rho^3}{\rho}=\rho^2
\end{align*}

であり、\(a=\rho^2\)であることがわかります、また、\(y=1/x=\rho^{-2}\)であることもすぐにわかります。\(\rho^2=1.7548\ldots\)、\(\rho^{-2}=0.5698\ldots\)であることから、1cm×1.7548cmの長方形と、約1.3247倍(\(\rho\)倍)した大きな長方形と約0.5698倍(\(\rho^{-2}\)倍)した小さな長方形を組み合わせるとうまく正方形を3分割できます。

5.さいごに

いかがでしたでしょうか?今回はプラスチック数の図形的な性質から3次方程式を導き、実際に解を求めてみました。式自体は黄金比をすごく似ていますが、具体的な値は非常に難しい形をしています。今後気が向いたら3次方程式や4次方程式の解の公式の話題についても記事を書いてみようと思います。

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<文/岡本健太郎>

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