【速報】統計検定1級(統計数理)を振り返る(2021年11月21日実施分)
公開日
2021年12月1日
更新日
2021年12月1日
この記事の主な内容
1.はじめに
こんにちは。和から講師の永井です。先日11月21日は統計検定1級が実施されました。6月の時間に続き、2年ぶりの試験実施となりました。今回は速報として、先日の統計検定1級の試験について振り返っていきます。
統計検定公式HPはこちら
1級は統計数理と統計応用の2つの試験があり、2つの試験に合格することで1級完全取得となります。両試験とも年にもよりますが、合格率が10~20%と低く難関資格の一つとされています。その背景として、2級や準1級までと違いすべての問題が論述で記述しなければならない難しさがあります。
2021年11月現在では問題は公開されていませんが、近々公式のHPでは直近の試験問題がアップロードされると思います。この記事では、著作権の関係から試験問題は公開できませんが解答案を載せていますので、試験を受けて復習に活かしたい方や今後の受験を検討している方は参考にして頂ければ幸いです。
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2.各設問の概要とコメント
2021年11月20日実施 統計検定1級(統計数理、論述5問中3問選択)の各問の難易度をA(易), B(標準), C(やや難), D(難)の4段階でランク付けしています。
大問1 指数分布と一様分布(難易度 B)
確率分布の期待値、畳み込みに関連した数理統計の基礎的な問題です。
(1)(2)は通常の計算問題、(3)は畳み込み積分で和の分布を求めますが、積分範囲に注意すると場合分けがあります。(4)の期待値計算ではガンマ関数の性質を使うと計算が楽です。
大問2 超幾何分布(難易度 B)
2018年以来の超幾何分布を題材にした問題です。モード計算を確率比によって求める問題やベイズ法による問題がテーマとなっています。
(1) 確率変数の定義域も注意して求めます。
(2) ヒントがあるため、導出は難しくはないですが計算を丁寧にやる必要があります。
(3) 離散一様分布の全確率が1になることを利用して定数を決定します。
(4) (2)のベイズ版、(3)からの誘導となっています。
大問3 ポアソン分布(難易度 A)
ポアソン分布のモーメント母関数を求めて、再生性や十分統計量、最尤推定の導出証明が主なテーマとなります。
(1)(2)数理統計の教科書に載っている問題のテーマです。(3)信頼区間の導出ですが問題文に2次不等式なるヒントがついているため丁寧です。(4)最尤推定との関係を述べますが、(3)が解ければ問われていることはシンプルな内容です。
大問4 推定量の期待値計算(難易度 C)
標本歪度に関する不偏推定量を構成するためのテーマで、期待値計算が後半になるほど重めとなっていますが誘導が丁寧です。
(1)サービス問題です。(2)(3)独立性をうまく使います。(4)多項定理による展開と(3)をヒントに不偏にするための定数を計算します。(5)3乗の期待値を\(\tau\)や\(\mu\)、\(\sigma^2\)に関する恒等式に帰着して条件を書き出しますがそれなりに計算量があるので、解かなかった方が多いと思われます。
大問5 正規分布と確率変数ベクトル(難易度 A)
確率変数ベクトルの分散共分散行列や独立性に関する問題です。独立と共分散が0になることを利用すれば実質行列計算のシンプルな問題です。解いた方が少ない印象を受けますが、5問の中で1番計算量が少ないです。
(1)分散計算の基本問題、慣れてないと手が止まるかもしれません。(2)正規分布の独立性と共分散が0行列になることを利用します。(3)(4)フルランクとフルランクでないときの行列処理。特異値分解というヒントがうまく活かせるかどうか?
3.総括
計算量は後半の問題になるほど多くなるため、序盤の問題をしっかり取れたかどうかで合否が決まりそうです。確率、期待値、分散計算に加えてモーメントや最尤推定などの統計数理の基本的な道具の計算をたくさん練習してきたかが大きいと言えます。また、問題の見極めと時間配分を計画立てて試験前は対策を講じる必要があります。
統計数理の勉強の楽しさの一つは統計のための数学を本格的に体得できることにあります。自信をつけて本番の試験に挑める力をしっかり身につけましょう。
4.解答案
参考のため、解答案を作成しました。途中過程での記述、多少の論理飛躍がありますがご容赦ください。また正解を保証するものではないため、あくまで参考としてご参照いただければと思います。
2021年11月20日実施 統計検定1級(統計数理) 解答案
<文/永井>
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