電験三種に必要な数学とは|出題される計算分野と独学の進め方
公開日
2026年9月26日
更新日
2026年9月29日
この記事のポイント
- 電験三種は理論・電力・機械・法規の4科目からなり、CBT方式または筆記方式で受験できます
- 四則演算、方程式、三角関数、複素数など、科目ごとに使われる数学分野の代表例を整理します
- 公式過去問で必要な計算を特定し、つまずいた数学だけを戻って復習する進め方を紹介します
「電験三種に挑戦したいけれど、数学に自信がない」「学生時代に数学でつまずいたまま社会人になってしまった」という声は、電験三種の受験を考える方からとてもよく聞かれます。電験三種は電気の知識を問う国家資格ですが、過去問には式の変形や単位換算を伴う問題があり、電気の知識に加えて基礎計算の確認が必要です。
この記事では、電験三種の試験制度を整理したうえで、理論・電力・機械・法規の各科目でどの数学分野が必要になるのかを解説します。中学・高校数学の復習を始める箇所、独学でつまずきやすい点、学習の順序も紹介します。学習計画を立てる際の参考にしてください。
この記事の主な内容
電験三種の資格と試験制度
電験三種(第三種電気主任技術者試験)は、一般財団法人電気技術者試験センターの案内では、電圧5万ボルト未満の事業用電気工作物(一定の発電所を除く)に関する保安監督を担う資格です。対象範囲には条件があるため、資格の業務範囲は公式案内で確認してください。
試験は「理論」「電力」「機械」「法規」の4科目で構成されており、4科目すべてに合格すると、第三種電気主任技術者試験の合格となります。科目ごとに出題内容の性質が異なり、数学との関わり方にも違いがあるため、まずは試験制度全体の仕組みを把握しておくことが、学習計画を立てるうえでの第一歩になります。
- 理論:電気理論、電子理論、電気計測、電子計測など
- 電力:発電所・変電所、送配電線路、電気材料など
- 機械:電気機器、パワーエレクトロニクス、自動制御など
- 法規:電気法規、電気施設管理など
公式案内では各科目とも五肢択一方式で、筆記方式またはCBT方式を選択できます。日程、会場、申込方法は実施回ごとに公式情報を確認してください。
科目合格の免除は自動ではなく申請が必要です。公式案内では、最初に一部科目へ合格した試験以降、連続する最大5回まで、申請により合格科目の免除を受けられます。
試験で使える電卓にも制限があります。四則演算と開平計算を中心とするものに限られ、数式記憶、関数、印刷などの機能を持つ電卓は使用できません。受験予定回の受験案内で最新条件を確認しましょう。
電験三種の合格に数学が欠かせない理由

電験三種は電気に関する資格ですが、実際の試験問題を見ると、理論科目を中心に計算問題が数多く出題されます。電気の法則や公式は、電圧・電流・抵抗の関係のように数式で表現されるものが大半であり、数式の意味を理解していないと、公式を暗記するだけでは応用問題に対応できません。
特に社会人になってから久しぶりに数学に触れる方の場合、三角関数や指数・対数、微分積分といった高校数学の内容を「昔習った気がするが内容は覚えていない」という状態で試験勉強を始めることもあります。まず公式過去問を解き、止まった理由が電気の知識なのか、式変形・単位換算などの数学なのかを分けると、復習範囲を絞れます。
科目別に見る必要な数学分野(理論編)
理論の過去問では、電気回路や電磁気などで数式を扱います。次の分野は代表例であり、必要な計算の例は、直近の公式過去問で確認してください。
三角関数とベクトル
交流回路では、電圧や電流が時間とともにsin波やcos波として変化します。波形の位相のずれや大きさを扱うために、三角関数(sin、cos、tan)の基本的な性質や、直角三角形の辺の比の考え方が必要になります。また、電圧と電流の関係を矢印(ベクトル)で表すベクトル図の理解も欠かせません。
複素数
交流回路の計算では、抵抗成分とリアクタンス成分をあわせ持つインピーダンスを、実数部と虚数部からなる複素数(例:R+jXのような形)で表します。電気の分野では虚数単位をiではなくjと表記する点も特徴です。複素数の四則演算やベクトルとの対応関係を理解しておくと、交流回路の計算の関係を整理しやすくなります。
過渡現象の理解に使われる微分積分の考え方
コンデンサやコイルを含む回路の過渡現象(スイッチを入れた直後などに電圧・電流が変化していく現象)を理解するには、簡単な微分・積分の考え方が使われます。ただし、実際にどの程度の式操作が必要かは、公式過去問を見て判断します。
科目別に見る必要な数学分野(電力・機械・法規編)
電力・機械・法規でも計算問題が出題されます。科目ごとの問題数や難易度は固定ではないため、分野名だけで優先順位を決めず、公式過去問で確認します。
電力科目
発電量、送電損失などの計算では、四則演算、比、単位換算、三角関数などを使うことがあります。対象年度の過去問から、式変形と単位で止まった問題を記録して復習します。
機械科目
電動機や変圧器の効率、同期発電機の特性を求める計算では、比例式や三角関数、ベクトル図の考え方が使われます。また、自動制御や論理回路の分野では、AND・ORなどの考え方を式で表すブール代数の基礎知識が必要になる場合もあります。
法規科目
法規でも設備管理に関する計算問題が出ることがあります。「暗記科目だから計算は後回し」と決めつけず、公式過去問で法令問題と計算問題の両方を確認してください。
電験三種に必要な数学を独学で学ぶ手順
数学に苦手意識がある場合、いきなり電験三種向けの計算問題集に取り組むと、公式の意味が分からないまま丸暗記に頼ってしまい、応用問題で行き詰まりやすくなります。次のような順序で、基礎から段階的に復習することをおすすめします。
ステップ1:中学数学の土台を確認する
正負の数の計算、文字式、一次方程式、比例・反比例、平方根といった中学数学の内容は、高校数学や電気の計算の土台になります。この段階でつまずきがある場合は、該当する中学範囲まで戻って確認します。
ステップ2:高校数学の基礎(三角比・指数・対数)を復習する
直角三角形の辺の比を扱う三角比や、指数・対数の基本的な計算ルールを復習します。公式を覚えるだけでなく、なぜその公式が成り立つのかを図やグラフでイメージしながら理解することが、後の応用につながります。
ステップ3:三角関数・ベクトル・複素数を学ぶ
単位円を使った三角関数の考え方や、ベクトルの合成・分解、複素数の四則演算を学びます。この分野は電験三種の理論・機械科目に直結するため、電気の交流回路の例題と結びつけながら学習すると理解が深まります。
ステップ4:簡単な微分積分の考え方を押さえる
微分は「変化の割合」、積分は「面積や合計量」を求める考え方だと捉えると理解しやすくなります。公式を丸暗記する前に、公式過去問で使われ方を確認し、変化の割合や合計量の意味と結びつけます。
ステップ5:電験三種の過去問で計算問題を演習する
数学の基礎が整ったら、電験三種の過去問や問題集で計算問題を繰り返し解きます。単元ごとに解くだけでなく、時間を計って解くことで、本番の試験時間内に計算を終える感覚もあわせて身につけていきましょう。
数学の学び直しでつまずきやすいポイント
独学で数学を復習する際、多くの方が同じようなポイントでつまずきます。あらかじめ知っておくと、無駄な遠回りを減らせます。
- 三角関数を公式として丸暗記してしまい、単位円やグラフのイメージと結びついていないため、角度が変わる応用問題に対応できない
- 複素数の実数部と虚数部が、電気回路の抵抗成分とリアクタンス成分に対応しているという電気的な意味を理解しないまま計算だけを行っている
- 対数の基本ルール(掛け算を足し算に変換できる、真数と底の関係など)を忘れており、対数を使う計算でつまずく
- 微分積分について、公式の背景にある考え方を確認せずに数式操作だけを覚えようとして、少し形が変わった問題に対応できなくなる
これらのつまずきは、独学でも基礎に立ち返って一つずつ確認できます。ただし、どこでつまずいているのか自分では気づきにくいという点が、独学の難しさでもあります。
独学の限界を感じたら個別指導という選択肢も
電験三種の数学は、参考書や問題集を使えば独学で克服することも十分可能です。一方で、仕事や家庭と両立しながら学習時間を確保しなければならない社会人にとっては、「どこから復習すればよいのか分からない」「同じところで何度もつまずいてしまい先に進めない」といった悩みが学習の停滞につながる場合があります。
そうした場合は、自分の理解度に合わせて必要な範囲を確認できる個別指導を活用するのも一つの方法です。つまずいている単元を確認しながら学習を進めることで、学習の優先順位を整理しやすくなります。
和から式「電験計算4行シート」
過去問1題につき、解答の前に次の4行を書きます。
- 与えられた値・単位
- 求める量・単位
- 使う公式と変形後の式
- 桁・符号・単位の確認
間違えたときは「知識」「式変形」「計算」「単位」「時間」のどこで止まったかを追記します。数学全体を最初からやり直すのではなく、公式過去問から必要な復習箇所を見つけるためのシートです。
試験科目と必要な数学分野の早見表

| 試験科目 | 計算で確認したい例 | 過去問で記録する点 |
|---|---|---|
| 理論 | 方程式、三角関数、ベクトル、複素数など | 公式の選択、式変形、符号、単位 |
| 電力 | 四則演算、比、単位換算、三角関数など | k・Mなどの接頭語、損失や効率の式 |
| 機械 | 比例式、三角関数、複素数、論理など | 条件の読み分け、公式の適用範囲 |
| 法規 | 四則演算、比、設備管理の計算など | 条文の条件、単位、端数処理 |
試験制度の確認先
よくある質問
Q. 電験三種は数学が苦手でも合格を目指せますか?
A. 学習は可能です。まず公式過去問を解き、電気知識・式変形・計算・単位のどこで止まったかを分け、必要な範囲だけ復習します。
Q. 科目合格は何回まで免除されますか?
A. 公式案内では、最初に一部科目へ合格した試験以降、連続する最大5回まで、申請により合格科目の免除を受けられます。最新の受験案内も確認してください。
Q. 試験で電卓は使えますか?
A. 使用できますが、四則演算と開平計算を中心とするものに限られます。数式記憶、関数、印刷などの機能を持つ電卓は使用できません。
まとめ
電験三種は理論・電力・機械・法規の4科目からなる国家試験で、CBT方式や科目合格制度が用意されています。一方で、計算で使う分野は科目や問題によって異なります。公式過去問を起点に「電験計算4行シート」で止まった理由を分け、必要な数学へ戻ると学習範囲を絞れます。試験方式、日程、科目免除、使用できる電卓は、受験予定回の公式案内で最終確認してください。
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執筆:和から株式会社 数学講師
「大人のための数学教室 和から」を運営し、累計3万人以上に指導。法人200社以上の研修実績。
<監修/和から株式会社 堀口智之>
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