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システマティックレビューの手順|メタアナリシスとの違いとPRISMAフロー図の埋め方

公開日

2026年10月30日

更新日

2026年11月2日

この記事のポイント

・システマティックレビュー(SR)は、問いを決めて研究を探し、選び、評価してまとめる一連の手順です。メタアナリシス(MA)は、そのうち数値を統合する統計手法です。
・まず「誰に、何を行い、何と比べ、何を確かめるか」をPICOで具体化し、採択基準と検索方法を先に決めます。
・結果が未報告というだけでは研究を除外しません。採用できるかの判断と、MAに使える数値があるかの判断を分けます。
・架空例で検索1,347件から採用14研究・MA投入9研究までを追い、PRISMAフロー図の数え方を確認します。

結論|SRは「手順」、MAは「条件が揃ったときだけ行う計算」

システマティックレビューとメタアナリシスは、作業の範囲が異なります。SRは問いを立てて文献を探し・選び・評価し・まとめるまでの一連の手順、MAはその手順の終盤で、選び終えた研究の効果量を1つの数値に統合する統計手法です。作業の粒度がそもそも違います。

そして重要なのは、SRをやってもMAをやらない(やれない)ケースが普通にあることです。Cochrane Handbookは「システマティックレビューにメタアナリシスが1つも含まれなくてよい」と書いています。効果量が数値で報告されていない、研究間で対象者や介入がそろわない、該当研究が1件しかないといった理由があります。実際に2014年2月に索引された生物医学系のSR 300本を調べた横断研究では、MAを含んでいたのは189本(63%)でした。

まず確かめたい問いと、それに合うレビューの種類を決めます。そのうえで、PICOによる問いの具体化、検索と選別、研究の評価へ進み、統合できる研究群があればMAを行います。以下では基本の意味から始め、架空例で採択基準と検索方法を考え、PRISMAフロー図の件数を追います。

公式情報の確認

報告ガイドラインの一次情報は PRISMA 2020声明です。チェックリスト・フロー図のテンプレート・拡張版はPRISMA公式サイトから入手できます。声明本体は2021年にBMJ(BMJ 2021;372:n71)ほか5誌に同時掲載されました。レビューの実施方法(報告ではなく手順)についてはCochrane Handbookが標準です。日本語の解説だけで進めず、章単位でよいので原文を確認することをおすすめします。

1. システマティックレビューとメタアナリシスは何が違うのか

違いを一覧にします。Cochrane Handbookはメタアナリシスを「2つ以上の別々の研究の結果を統計的に結合すること」と定義しており、あくまで統合の一手法という位置づけです。

観点 システマティックレビュー(SR) メタアナリシス(MA)
作業の中身 問いを決め、探し、選び、評価し、まとめるまでの手順全体 選び終えた研究の効果量を1つに統合する統計手法
成果物 レビュー論文そのもの 統合推定値と信頼区間(フォレストプロットなど)
単独で成立するか する。MAがなくても完結する 統計手法としては行えるが、SRを行ったことにはならない
できないことがあるか 原則ない。該当研究0件でもレビューは成立する ある。異質性が大きい、数値が未報告などで頻繁に起きる
PRISMA 2020での扱い チェックリスト27項目の全体 統合に関する項目(13a〜13f、20a〜20d)が該当
よくある誤解 「MAをやらないとSRとは呼べない」 「MAだけやればSRになる」

メタアナリシスを行わない・行えない場面

Cochrane Handbookは「メタアナリシスは、参加者・介入・アウトカムの点で十分に同質な研究群についてのみ検討すべきだ」としています。加えて「結果のばらつきが大きく、とくに効果の向きが一致しない場合には、平均値を示すことがかえって誤解を招きうる」とも書いています。統合しないという判断もレビューの結論の一部です。

実務でMAが立たない典型は次の3つです。
・効果量の計算に必要な数値(平均・標準偏差・イベント数)が論文に載っていない
・対象者や介入の中身が研究ごとに違いすぎて、同じ効果を測っているとは言えない
・採用研究が1件しかない

このときは記述的な統合(narrative / structured synthesis)に切り替えます。MAをやらなかった理由を方法と結果に明記することが、PRISMA 2020でいう統合方法の報告(項目13a〜13f)にあたります。統合そのものの計算(重みの決まり方や異質性 I2)は、別記事「メタアナリシスの読み方」で扱います。

2. 問い・採択基準・検索方法を具体化する

問いの型はPICOで書き下します。Cochrane Handbookは介入の効果を問うときの枠組みとして P(Population)・I(Intervention)・C(Comparison)・O(Outcome) を挙げています。介入ではなく曝露を扱う疫学・環境保健・看護の観察研究では、IをE(Exposure)に置き換えた PECO が使われます。PECOはMorganら(Environment International, 2018)が枠組みとして整理したものです。

PICOと採択基準の架空例

例えば「成人の入院患者に看護師による転倒予防プログラムを行うと、通常のケアと比べて入院中の転倒が減るか」という問いを考えます。これは手順を学ぶための架空の設定で、効果があるという主張ではありません。

  • P(対象):成人の入院患者
  • I(介入):看護師による転倒予防プログラム
  • C(比較):通常のケア
  • O(アウトカム):入院中の転倒の発生

この問いなら、例えば「成人を対象とする入院中の研究」「指定した介入と通常のケアを比較するランダム化比較試験」を採択基準として事前に定めます。小児のみ、外来のみ、介入や比較相手が異なる研究などは、この架空例では基準に合いません。転倒の結果が論文に載っていないことと、研究が採択基準に合わないことは別です。未報告の結果は著者に問い合わせ、得られる情報と得られない情報を記録します。

プロトコルを先に登録する

問いが決まったら、探す前にプロトコルを書いて登録します。登録先の代表が PROSPERO(英国ヨーク大学CRDが2011年に開設)です。目的は2つ、レビューの重複を防ぐことと、結果を見てから採択基準やアウトカムを変える後付けを防ぐことです。PROSPEROの登録条件では、人の健康に直接関連するアウトカムを扱うSRが対象です。データ抽出を開始したレビュー、スコーピングレビュー、系統的検索だけを行う従来型の文献レビューなどは対象外です(2026年11月2日確認)。プロトコル自体の書き方には PRISMA-P という別のチェックリストがあります。

2014年2月に索引されたSR 300本の調査では、事前登録されていたSRは 12本(4%)、公開プロトコルが引用されていたのは 49本(16%) にとどまりました。事前登録は、手続きの透明性を示すための記録になります。

検索語を広げ、検索先と実施条件を記録する

上の例なら、対象を表す「入院患者」「inpatient」や、介入を表す「転倒予防」「fall prevention」などの候補を集めます。同じ概念の言い換えはORで広げ、異なる概念はANDで組み合わせます。概念上は「入院患者 OR inpatient」と「転倒予防 OR fall prevention」をANDでつなぐ形です。ただし、これは考え方を示す簡略例であり、そのまま使える完成済みの検索式ではありません。

PubMed、CINAHL、Embase、医中誌Web、CENTRALなどから問いに合う検索先を選び、試験登録原簿や採用文献の引用も確認します。データベースごとの統制語・表記・検索構文に合わせ、司書や情報専門家とも相談します。PICOの全要素を機械的にANDでつなぐと、必要な研究を取りこぼすことがあります。検索先、完全な検索式、検索日、制限条件、取得件数を保存しておくと、後から更新・再現できます。

3. PRISMAフロー図を件数で追う

フロー図では、各段階の件数を確認します。フロー図は「何件から何件に減ったか」を1枚で示す図で、各段階の引き算がすべて合っていることが求められます。前節の看護系の問いを想定した架空の件数例で、埋め方を確認します。件数の合計はPythonで検算しました。

その前に1つ。PRISMA 2020は使用したすべてのデータベース・試験登録原簿・ウェブサイトについて、完全な検索式をそのまま載せることを求めています(項目7)。2009年版は代表的な1つを示せば足りましたが、2020年版で全数掲載に変わりました。検索を実行した日付とフィルタの指定も含めて記録します。検索を再現できるよう、検索式と実施条件を記録して報告します。

PRISMA 2020のボックス名 帯 件数 残り
データベースから特定した記録(PubMed 412/CINAHL 268/Embase 355/医中誌Web 174/CENTRAL 91) 特定 1,300 1,300
試験登録原簿から特定した記録(ClinicalTrials.gov・ICTRP) 特定 47 1,347
スクリーニング前に除外した記録:重複 特定 −386 961
スクリーニングした記録(タイトル・抄録) スクリーニング 961 961
除外した記録 スクリーニング −848 113
取り寄せを試みた報告 スクリーニング 113 113
入手できなかった報告 スクリーニング −5 108
適格性を評価した報告(全文精読) スクリーニング 108 108
除外した報告:対象集団が不一致 スクリーニング −31 77
除外した報告:介入が不一致 スクリーニング −24 53
除外した報告:研究デザインが不適格 スクリーニング −19 34
除外した報告:比較対照が採択基準と不一致 スクリーニング −12 22
除外した報告:入院以外の研究環境で不適格 スクリーニング −6 16
レビューに採用した研究(報告16件=研究14件) 採用 14研究 14
うちメタアナリシスに投入した研究 採用 9研究 9

この架空表では、除外理由を事前の採択基準に対応させ、1報告につき主な理由を1つ数えています。アウトカムの未報告だけを理由に除外してはいけません。Cochrane Handbook第4章(C40)も、測定された結果が未報告、または使える形式でないという理由だけで研究を除外しないよう求めています。抄録しかなく適格性を判断できない場合は、関連報告の探索や著者への照会を行い、なお不明なら判定保留として区別します。この表は適格性を確認できた報告の除外を例示しており、未報告・情報不足の研究を機械的に除外する手順ではありません。

この表から読み取れること

減り方には形があります。重複除去で 28.7%(386÷1,347)が消え、タイトル・抄録の段階で残りの 88.2%(848÷961)が落ちます。全文まで進むのは最初の 8.0% だけです。そして全文を読んだ108件のうち 85.2% がさらに落ち、最後に残るのは14研究。最初の1,347件は「記録」、最後の14件は「研究」で、単位が異なります。単純に割った値を記録の採用率とは呼ばず、1,347記録から16報告・14研究を採用したと区別して示します。これらは架空の例の件数で、分野や検索条件によって変わります。

最下段の2行が、この記事の主題そのものです。レビューに採用したのは14研究、メタアナリシスに投入できたのは9研究。この架空例では、残る5研究は同じ概念の尺度として統合できない、著者への照会後も標準偏差などの必要な数値が得られない、といった理由でMAに投入せず、記述的にまとめます。尺度が異なるだけで必ず統合できないわけではなく、同じ概念を測る尺度なら標準化平均差などを検討できます。この5研究は「除外」ではありません。SRの結論には入るがMAには入らない——この区別がフロー図の最後で可視化されます。

「記録」「報告」「研究」を区別する

表のボックス名は、途中で「記録」から「報告」、最後に「研究」へ変わります。PRISMA 2020はこの3語を明確に使い分けます。記録(record)はデータベースが返す1件のタイトル・抄録、報告(report)は論文や抄録などの文書そのもの、研究(study)は調査そのものです。1つの研究が2本の論文で報告されることがあるため、上の例では報告16件が研究14件になっています。ここを揃えずに数えると、フロー図の数字が合わなくなります。

4. スクリーニングは2名独立が原則

PRISMA 2020は、選択のプロセスについて「各記録・各報告を何人が評価したか、独立して作業したか」を書くよう求めています(項目8)。標準は2名が独立に判定し、食い違いを話し合いか第三者で解決する方法です。上の例なら、タイトル・抄録の判定は961件×2名=1,922回。1件30秒でも約16時間、1分なら約32時間かかります。指導教員や共同研究者の時間をいつ確保するかは、着手前に決めておく項目です。

一致率だけを見ると判断を誤る

2名の判定を集計したとします。両者が「採用候補」としたのが96件、Aだけが採用候補としたのが11件、Bだけが6件、両者が「除外」としたのが848件。合計961件で、どちらかが拾った113件が全文取り寄せに進みます。単純一致率は(96+848)÷961=98.2%。高い一致率です。

しかし、この98.2%の大半は「どう見ても無関係」な記録を2人ともはじいた分です。偶然の一致を補正したκ(カッパ)係数を計算すると 0.909 になります。高い値ですが、98.2%という印象よりは低い。必要に応じて単純一致率とκを併記し、判定の内訳も確認するのが安全です。この例では偶然だけで80.6%が一致してしまう計算になります。

5. バイアスリスク評価ツールは対象で選ぶ

採用した研究それぞれについて、結果がゆがんでいる可能性を評価します。ツールは研究デザインと評価目的に応じて選ぶので、名前を覚えるより「自分の採用研究がどれに当たるか」を先に確認してください。

ツール 対象 領域 特徴
RoB 2 ランダム化比較試験(RCT) 5領域 研究単位ではなく結果(アウトカム)単位で判定。低リスク/いくつか懸念あり/高リスクの3区分
ROBINS-I(2016年版) 介入の非ランダム化研究(コホート、症例対照など) 7領域 交絡と参加者選択を介入前の段階から評価。低/中等度/深刻/重大/情報なしの5区分。ROBINS-I V2は2025年11月版がドラフトとして公開されている
QUADAS-2(旧版) 診断精度研究 4領域 患者選択・指標検査・参照基準・フローとタイミング。前3領域は適用可能性も別に評価。現在は開発元がQUADAS-3を推奨
ROBIS システマティックレビューそのもの 4領域 一次研究ではなくSRを評価する。関連性の評価(任意)を含む3フェーズ構成
GRADE アウトカムごとのエビデンス総体 格下げ5要因・格上げ3要因 個々の研究ではなく総体を高/中/低/非常に低の4段階で評価

PRISMA 2020で新設された項目のうち2つ(項目15と22)が、このエビデンスの確実性(certainty)の評価に関するものです。GRADEでは、ランダム化研究は「高」から出発し、バイアスリスク・非一貫性・非直接性・不精確さ・出版バイアスの5要因で格下げします。観察研究は低い位置から出発し、効果が大きい・用量反応関係がある・想定される交絡が効果を過小評価する方向に働く、の3要因で格上げできます。

6. レビューの種類とPRISMAの詳細を確認する

目的に合うレビューを選ぶ

SRは手間の重い作業です。着手前に、自分の問いがSRに向いているのかを確かめます。判断材料になるのは「結果を使って実践に答えを出したいのか、それとも分野の地図を描きたいのか」です。地図を描きたいならスコーピングレビューが適します。

レビューの種類 問いの形 検索 バイアスリスク評価 報告ガイドライン
ナラティブレビュー(総説) 広く自由 著者の裁量 行わないことが多い 定まったものはない
スコーピングレビュー その分野に何があるかを地図にする 網羅的に行う 必須ではない。目的に応じて実施し、実施した場合は方法と結果を報告する PRISMA-ScR(必須20項目+任意2項目)
システマティックレビュー PICO/PECOで1つに絞る 網羅的かつ再現可能 必須 PRISMA 2020(7セクション27項目)
MAを伴うSR 同上 同上 必須 PRISMA 2020(統合の項目まで報告)
アンブレラレビュー 既存のSRを束ねる SRを対象に検索 ROBISでSRを評価 —

2009年版から何が変わったか

2009年版のフロー図は左側の帯が「特定・スクリーニング・適格性・採用」の4本でしたが、2020年版は「特定・スクリーニング・採用」の3本で、独立した「適格性」の帯はありません。全文精読(適格性の評価)はスクリーニングの帯の中に収まりました。また、2009年版の「全文論文(full-text articles)」という言い方は、「取り寄せを試みた報告」「入手できなかった報告」「適格性を評価した報告」の3つに分解されています。入手できなかった文献の件数を書く欄が新設されたのが実務上の大きな変更です。

チェックリスト側も変わりました。PRISMA 2020はタイトル・抄録・緒言・方法・結果・考察・その他の情報の7セクション、27項目で、小項目(13a〜13f、20a〜20d、23a〜23d、24a〜24cなど)まで数えると全42行になります。2009年版の27項目から、新設・移動・細分化がまとめて入りました。

修士論文で影響が大きいのは次の4点です。
・エビデンスの確実性を扱う項目15・22が新設(GRADEなど)
・除外した研究を理由つきで引用する項目16bが新設
・利益相反(項目26)とデータ・コード等の利用可能性(項目27)が新設
・プロトコルと登録が「その他の情報」セクションに移り、プロトコルからの変更点を書く小項目が加わった

抄録用には別に12項目のチェックリスト(PRISMA 2020 for Abstracts)が用意されています。投稿規定でPRISMA準拠を求められたら、本文27項目と抄録12項目の両方が対象だと考えてください。

まとめ

・SRは手順、MAは統計手法。Cochrane HandbookはSRにMAが1つも含まれなくてよいと明記しており、実際にMAを含むSRは調査対象300本のうち63%でした
・着手前に決めるのは「MAをやるか」ではなく「どのレビューをやるか」。地図を描きたいならスコーピングレビュー、実践の答えを出したいならSRです
・結果が未報告というだけで除外せず、採択基準の適合、情報不足による判定保留、MAに使える数値の有無を分けます
・PRISMAフロー図では件数と除外理由の両方を確かめます。例では1,347件→961件→113件→108件→採用14研究、うちMA投入9研究
・PRISMA 2020は「記録」「報告」「研究」を使い分けます。報告16件が研究14件になるように、数える単位を揃えてください
・スクリーニングは2名独立が標準。単純一致率98.2%でもκは0.909。κは補助的な指標であり、報告必須ではありません

SRでは作業の段階と件数を記録すると、進行状況を確認しやすくなります。フロー図は最後に清書する図ではなく、着手した日から件数を書き込んでいく作業台帳として使ってください。件数が合わなくなった時点で、どこかの段階の記録が抜けています。そこで立ち止まれるだけでも、フロー図を先に用意する価値があります。

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<監修/和から株式会社 堀口智之>

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※2026年11月2日に内容を更新しました。

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