電卓の3つのE~最近印象に残った授業~
公開日
2022年4月13日
更新日
2022年4月13日
この記事の主な内容
はじめに
大人のための数学教室和(なごみ)の講師の松中です。最近印象に残った授業シリーズとして不定期に授業の内容を紹介していきたいと思います。今回紹介したいのは電卓に現れる3つのEに関してです。
なおこちらの記事の内容は動画でも解説しています。
ネイピア数の\(e\)?
先日統計の授業の冒頭でお客様から、「ネイピア数\(e\)について教えてください」とリクエストをいただきました。\(e\)は数学界では言わずと知れた超重要な定数です。自然科学、工学のあらゆる分野に現れるとても大事な定数であり、統計学の分野でも正規分布の確率密度関数には\(e\)が現れます。リクエストに続けてお客様はこの\(e\)が電卓にも現れると話されました。
私は関数電卓で\(e\)を使うことはあるのですが、普通の電卓では見たことがありませんでした。これはエラーのEと勘違いしているなと思って確認したところ、エラーのEでもな別のEでした。
ということで、電卓に現れる3つのEについて紹介したいと思います。
エラー(error)のE
私が子供の頃からよく見かけていたのは「エラーのE」です。これは電卓が答えを表示できないくらいの大きな桁の掛け算を行ったり、数学的には許されない\(0\)除算や、マイナスの数のルートを計算しようとすると現れるものです。
これは誰しもが目撃したことのある、もっともなじみ深いEだと思います。
ネイピア数(Euler’s Number)の\(e\)
元々お客様が学びたいとおっしゃっていたネイピア数の\(e\)も電卓に現れます。と言っても普通の事務用の電卓では出てきません。事務作業には\(e\)は不要です。私は事務作業で\(e\)を見かけたことがありません。
先述の通りネイピア数\(e\)は関数電卓は必ず現れます。関数電卓には「\(e\)」ボタン、あるいは「\(e^x\)」ボタンは必ず搭載されているでしょう。
ちなみにiPhoneの電卓は横向きにすると関数電卓モードになります。関数電卓を持っていないあなたもiPhoneを横に傾けるだけで「\(e\)」ボタンで遊ぶことができるので是非試してみてください。
このネイピア数\(e\)は欧米ではオイラー数(Euler’s Number)と呼ばれているそうです。ネイピア(Napier)数なのに\(e\)で表わされる理由は大数学者オイラーの頭文字だったからなのです。
指数(exponent)のe
最後はお客様がネイピア数と勘違いしていた指数(exponent)のeです。これも私は通常の事務電卓では見たことがありません。
関数電卓では計算結果が電卓に表示できる桁数を超えてしまった場合にeを使って結果を表示します。eの意味を具体例で紹介します。例えば、電卓の画面に「7.34702e20」と表示されていたとしましょう。この数字列が表す数値は\(7.34702\times {10}^{20}\)であり、\(7.34702\)に\(10\)を20回かけたものになります。つまり「7.34702e20」は\(734702000000000000000\)を表しているのです。
大きい数だけでなく絶対値が\(0\)に近い数も表せます。例えば、電卓の画面に「3.23687e-10」と表示されれば、この数字列が表す数値は。\(3.23687\times {10}^{-10}\)であり、\(3.23687\)を\(10\)で10回割ったものになります。つまり「3.23687e-10」は\(0.000000000323687\)を表しているのです。
指数表記により電卓で表示できる数の範囲が非常に大きくなることがわかると思います。また、指数表記は2つの大きな数、または2つの小さな数(絶対値が\(0\)に近い数)の大小を比較しやすいという点でメリットがあります。
まとめ
電卓には3つのEが出てくるので、だれかと電卓の話をするときは意思疎通が取れているか十分気をつけてください。
ネイピア数\(e\)は対数関数の微分をしようとすると自然に出てくる定数です。\(e\)をもっと知りたいという方は以下の講座がおすすめです。
(文/松中)