知って楽しい「数学グッズ」~割れない(?)素数グラス編~
公開日
2020年12月3日
更新日
2020年12月3日
こんにちは。和からの数学講師の岡本です。皆さんはこの「素敵」なグラスをご存じでしょうか?
割り切れない数“素数”の「割れないグラス」です!
去年の年末頃に岡本がデザインし、いろいろなネットニュースや記事で取り上げていただきました。
どなたでも購入できます!(購入はこちらから→https://suzuri.jp/walker0226/2764480/water-glass/m/clear)
この記事の主な内容
1.割れた
つい最近ですが、愛用している素数グラスにひびが生えていることに気が付きました。急に冷やしたり、低い位置からですが確かに落としたこともあったので仕方のないことです(替えの素数グラスを持っているのでそれを使います)。
さて、このことをSNSに投稿すると様々な意見をいただき、非常に面白かったのでここでまとめてみることにします。
2.「57がない」
これはグロタンディークという伝説的な大数学者による逸話から来ています。グロタンディークの授業は高度であり、素数を\(p\)や\(l\)といった文字で置き、非常に抽象的でした。そんなとき、「具体例」を説明することがありました。理解の助けになるわけですから学生たちも、多いに注目しました。そんな中グロタンディークは具体例の説明を始めました。
「では、p=57とします。」
学生たちは戸惑いを隠せません。なぜなら57は3×19であり、素数ではないからです(ぱっと見素数っぽいのがなんともいえませんね)。しかし、学生たちはこうも考えました。
「あのグロタンディークが素数というのだから、57は“素数”なんじゃないか」
このような話から「57」は「グロタンディーク素数」という名の合成数として知られています(この逸話が本当かどうかは定かではありません)。なお、「割れるグラス」というものもあります。(https://suzuri.jp/walker0226/2800909/water-glass/m/clear)
3.「位置(イチ)によって割れる」「地震(ジシン)で割れた?」
素数は一言で「割り切れない」と言いますが、正確に言うと「1と自分自身でしか割れない数」です。つまり、「1(イチ)」と「自身(ジシン)」で割れるのです!このパンチの効いたコメントは座布団素数枚あげたいですね!
その他にも割れた素数が37であることから「ガウス整数環に持っていかれたのでは?」という高度なコメントもいただきました。以前マスログで取り上げましたが、「4で割って1余る素数」は必ず2つの平方数の和で表すことができるという、美しい性質を持っています。この性質を踏まえて、\(a+bi\)という形の整数(ガウス整数)の世界では
\begin{align*}
37=(6+i)(6-i)
\end{align*}
という具合に分かれてしまうのです。つまり、\(37\)はガウス整数の世界では、割り切れる数なのです!
4.さいごに
このほかにも以前マスログで取り上げた素敵な数学グッズというものが世に出回っています。
このような数学の意味を知っていることで、楽しみ方や意味の込め方も豊富になってきます。数学の世界というのは非常に広く、そのデザインというものもまだまだ可能性が期待される分野です。実際に「数学を学ぶ」と聞くと中学校、高校の数学が頭をよぎる方が多いかもしれませんが、考えているほど固いものではありません。数学という学問は本来もっと自由で、学び方もたくさんあるわけです。和からは、数学の美しさやデザインといった視点で数学を「楽しむ」セミナーがあります。興味のある方はまず無料のセミナーからどうぞ!「大人の数学の学び方」として、新たな数学の一面を一緒に楽しみましょう!
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<文/岡本健太郎>