AIで空いた時間を何に使うか|週26.4分の時短を、データを読んで判断する仕事に回す
公開日
2026年11月1日
更新日
2026年11月3日
生成AIで資料づくりや下書きが速くなった会社は増えました。では、速くなった分の時間はどこへ行っているのでしょうか。調査の数字から、空いた時間の行き先と使い方を整理します。
この記事の主な内容
浮いた時間の多くは、日常業務に吸収されている
パーソル総合研究所の「生成AIとはたらき方に関する実態調査」(2026年2月3日発表)の主な数字です。
- 生成AIを使っているタスクの所要時間は、使わない場合より平均16.7%(週26.4分)短い(正規雇用者)
- ただし、実際に業務時間が減った人は利用者の25.4%(約4人に1人)
- 削減できた時間の61.2%は「仕事をする」に使われ、その中身の多くは日常の業務(75.4%)
デンマークの11職種を対象にした研究(Humlum・Vestergaard、2025年5月)でも、利用者が申告した時短は総労働時間の2.8%で、時短の使い道については、利用者の約8割が別の業務に充てたと答え、休憩や余暇に使った人は1割未満でした。約8割は「時間の割合」ではなく「回答した利用者の割合」です。空いた時間は、行き先を決めておかないと、ほかの仕事に吸収されます。
半分、16.7%、2.8%は物差しが違う
「AIで作業が半分になった」という話もあります。数字がばらばらに見えるのは、測っているものが違うからです。
| 数字 | 何を測ったか | 調査 |
|---|---|---|
| 半分 | AIに向いた仕事1つについて、確認・修正も含めた所要時間の見込み(職場でAIを使う人の典型的な回答) | Anthropic(米国の成人10,980人、2026年8月) |
| 16.7% | AIを使っているタスクの所要時間の削減率 | パーソル総合研究所 |
| 2.8% | 利用者の総労働時間に対する時短の割合 | デンマークの研究 |
パーソル総研の週26.4分も、週40時間(2,400分)で割ると26.4÷2,400=約1.1%です。Anthropicの調査でも、同じ層の29%は「同じか、それ以上かかる」と答えています。
「AIで何割速くなった」という数字を見たら、何を分母にした割合か、本人の申告かを確かめてください。どの調査も、AIを使わなかった場合の時間は記憶や感覚で答えています。
1日5分を、月2時間に束ねる
週26.4分を「AIを使う人1人の1週間あたり」と読み、週5日・年48週・1日8時間として計算すると、次のようになります。
- 1日あたり:26.4÷5=約5分
- 1年あたり:26.4×48=1,267.2分=約21時間
- 100人全員が使う部署なら:21.12×100=2,112時間=延べ264日分(1人の年間勤務日数240日を上回る)
- 4週分をまとめると:26.4×4=105.6分=約1時間46分
1日5分では新しい仕事は始められず、メールの返信や会議の準備に溶けていきます。月に一度、2時間弱の「データを読む時間」を予定表に入れ、何を見て誰に報告するかまで決めておくと、時短が成果として残ります。
人事の課題は、使い方から仕事の中身へ
産業能率大学総合研究所とHR総研の「生成AIと人材育成に関する人事実態調査」(2026年10月7日公表、320社)からです。
- 人材育成の見直しが必要:56.6〜70.3%。実際に対応している:15.0〜19.4%
- 見直しが進みにくい理由:「全社として生成AI活用の方向性が明確ではない」48.3%、「生成AIの活用によって、仕事や役割がどのように変わるか整理できていない」46.9%
- 実施中の研修:基礎知識41.2%、利用ルール40.9%に対し、真偽・根拠の確認8.9%、管理職向け7.7%
- 新人・若手について「生成AIを用いた成果物の内容や妥当性を見極めにくい」:68.1%
使い方とルールの研修は進んでいますが、AIの出力を確かめ、その先を判断する力の育成はまだ手薄です。AIに関わる仕事が一部の社員に集まる問題は、使いこなし格差を読んだ記事でも扱っています。
職種別:空いた時間を判断に回す例
- 事務職:AIで作った月次の集計表から大きく動いた項目を拾い、理由の見当を添えて上司に渡す
- 経理:費目ごとの増減を、一時的な動きか、続きそうな変化かに分けて報告する
- 人事:社員アンケートの自由記述をAIで分類し、部署別に比べる。回答者が少ない部署の差は偶然のことも多いので、人数を確かめる
- カスタマーサポート・窓口:問い合わせをAIで分類して件数を週ごとに追い、増えたものをよくある質問や手順の見直しにつなげる
- 店舗:売上や来客数を曜日・時間帯・天気で比べ、発注や人の配置を決める
どれも、何と比べるか、その差は偶然の範囲か、AIの集計は正しいかを確かめて決める部分を、人の仕事として残しています。
AIの次の段階は、判断できる社員を育てること
AIで速くなるのは、表やグラフを作るところまでです。できあがった数字を前に何を決めるかは、人に残ります。空いた時間の行き先を決め、その時間で判断できる社員を育てることが、AI活用の次の段階です。
和からの人材高度化研修は、AIで空いた時間を使って、データを分析し、AIの答えを鵜呑みにせず判断できる社員を育てる研修です。職種別のコースもあります。調査の数字を研修の判断に使うときの注意点は、経営層調査を読んだ記事もあわせてどうぞ。
参考・出典
- 「生成AIとはたらき方に関する実態調査」を発表 生成AIの活用で業務時間は平均16.7%削減 一方で、業務時間を削減できたのは利用者の4人に1人(株式会社パーソル総合研究所、2026年2月3日)
- 生成AIと人材育成に関する人事実態調査(学校法人産業能率大学 総合研究所・HR総研、2026年10月7日)
- The AI expectations gap(Anthropic、2026年10月16日)
- Large Language Models, Small Labor Market Effects(Anders Humlum、Emilie Vestergaard/Becker Friedman Institute Working Paper No. 2025-56、2025年5月)
監修/和から株式会社 堀口智之
※2026年11月2日に内容を更新しました。
同じことを生成AIに頼むなら、どう書けば思ったとおりに返ってくるのか。そのまま貼って使える「話しかけ方」を30個、A4・7ページにまとめました。資料づくり・メール・数字の整理・学び直しの、4つの場面別です。
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