人事・HRデータ分析入門|離職・採用を数字で見る方法をやさしく
公開日
2026年9月4日
更新日
2026年9月4日
この記事の主な内容
この記事のポイント
- HRデータ分析(ピープルアナリティクス)とは、採用・離職・育成を数字で見ること
- まず押さえる基本指標は離職率・定着率・採用ファネル(歩留まり)など
- 「いつ・どの層が辞めるか」を分解すると、打ち手が具体的になる
- 必要なのは割合とExcel。ただし個人評価には使わない・相関と因果に注意
「最近、若手の離職が増えている気がする」「採用がうまくいっているのか分からない」——人事の現場で、感覚では分かっていても数字で説明できない、という場面は多いものです。それを数字で見えるようにするのがHRデータ分析(ピープルアナリティクス)です。まずは割合とExcelから始められます。より踏み込んだ要因分析には、統計の知識が役立ちます。
この記事では、人事・HRデータ分析の入門として、まず見るべき指標や離職・採用の分析の仕方を、累計3万人以上を指導してきた和からの視点でやさしく解説します。
HRデータ分析(ピープルアナリティクス)とは
HRデータ分析とは、人事に関するデータ(採用・離職・評価・労働時間など)を集めて数字で分析し、意思決定に活かす取り組みです。ピープルアナリティクスとも呼ばれます。
ねらいは、勘や経験だけに頼らず、根拠を持って人事施策を打つこと。「なんとなく離職が多い」ではなく「入社2年目・営業部の離職率が前年より高い」と数字で言えれば、対策も具体的になります。大がかりなシステムがなくても、手元のExcelデータから集計は始められます。ただし、利用目的・閲覧権限・保存場所・持ち出しルールを決めてから扱います。
まず見たい人事の基本指標
最初に押さえたい指標を、計算とともにまとめました。
| 指標 | 意味 | 計算 |
|---|---|---|
| 離職率 | 一定期間にどれだけ離職したか | 期間中の離職者数 ÷ あらかじめ定めた在籍者数(期首または平均など)×100 |
| 定着率 | 対象集団が時点までにどれだけ残ったか | 基準日時点の在籍者数 ÷ 対象集団の開始人数 ×100 |
| 採用歩留まり | 応募から入社までの通過率 | 各段階の通過数 ÷ 前段階 |
| 採用単価 | 1人採用にかかった費用 | 採用コスト ÷ 採用人数 |
どれも割合で出せますが、分母と対象期間を先に固定します。厚生労働省の雇用動向調査では、期間中の離職者数を期首の常用労働者数で割る定義を採用しています。自社で平均在籍者数を使う場合は、その定義を明記して同じ条件で比較します。定着率も対象集団と基準日が違えば、単純に「1−離職率」にはなりません。
離職を数字で見る|「いつ・誰が」を分解する
離職分析の基本は、全体の離職率を見るだけで終わらせず、「いつ・どの層が辞めているか」を分解することです。
入社年次別(1年目・2年目…)、部署別、年代別などで離職率を出すと、「2年目に集中している」「特定部署が高い」といったパターンが浮かびます。全体では見えなかった問題が、分解すると見えてくる。これは売上分析と同じ考え方です。辞める層が特定できれば、オンボーディングの見直しや配属の工夫など、打ち手を絞り込めます。
採用を数字で見る|採用ファネル(歩留まり)

図:採用ファネル(歩留まり)
採用は、「応募 → 書類通過 → 面接 → 内定 → 入社」という各段階の通過率(歩留まり)で見ると、どこに課題があるか分かります。
たとえば応募は多いのに書類通過で大きく減るなら、募集要件と応募者のミスマッチかもしれません。内定を出しても入社に至らないなら、条件や動機づけに課題があるかも。段階ごとに数字を出すことで、改善すべきポイントが特定できるのです。前回ご紹介した、Webの「ファネル分析」と同じ発想です。
分析を始める手順とExcel
始め方はシンプルです。
- 目的(知りたい問い)を決める
- 必要なデータを集める
- Excelで集計・比較する
「2年目の離職が多い気がする」なら、入社年次別の離職率を出して確かめる、という具合です。
Excelでは、ピボットテーブルを使うと、部署別・年次別の集計が数クリックで作れます。難しい関数は不要。まずは離職率や採用ファネルを表にしてみるところから始めましょう。手を動かすほど、データの見方が身についていきます。
注意点|「数字の扱い」を間違えない
HRデータは人に関わるからこそ、扱いに注意が必要です。
- 相関と因果を取り違えない:「残業が多い部署で離職が多い」としても、残業だけが原因とは限りません。
- 母数が小さいと振れやすい:少人数の離職率は、1人辞めただけで大きく動きます。数字を過信しないことが大切です。
- 個人の評価・選別に安易に使わない:データは課題の発見や改善のために使い、人を機械的に判断する道具にしないことが大切です。
さらに、従業員データは個人情報になり得ます。利用目的を特定し、アクセス権限や安全管理措置を整え、クラウドへ委託する場合は委託先の監督も確認します。
和から式|分析前に埋める「7つの定義」
Excelを開く前に、1行で次の7項目を埋めます。
| 項目 | 記入例 |
|---|---|
| 問い | 入社2年目の離職は増えたか |
| 期間 | 2025年4月〜2026年3月 |
| 対象集団 | 2024年度入社の正社員 |
| 分子 | 期間中に離職した人数 |
| 分母 | 対象集団の開始人数 |
| 比較 | 前年度入社集団と同じ経過月で比較 |
| 次の確認 | 部署別・配属後月数別に分ける |
この7項目がそろわない集計は、数字が合っていても説明がぶれます。人数が少ない区分は個人が推測されるおそれもあるため、表示単位をまとめる・閲覧者を限定するなどの扱いも決めます。
よくある質問(FAQ)
Q1. 専門のツールがないと始められませんか?
Excelでも集計は始められます。ただし、利用目的・アクセス権限・保存場所・削除時期を決め、個人が推測される小区分を安易に共有しないようにします。
Q2. 統計の知識がないと無理ですか?
基本の分析は割合と比較から始められます。まず分母・対象期間・比較条件をそろえ、慣れてから要因分析へ広げます。
Q3. 分析しても、施策にどうつなげればいいですか?
いつ・どの層で差が出るかを確認し、仮説を立てて小さな施策を試し、同じ定義で再測定します。相関だけで原因と決めつけないことが重要です。
Q4. 定着率は1−離職率でよいですか?
対象集団・期間・分母が同じ場合に補数として扱えることはありますが、実務では定義が違うことが多いため自動的には一致しません。
確認に使った公的資料
- 厚生労働省「雇用動向調査:調査の結果」(入・離職率の定義)
- 個人情報保護委員会「個人情報保護法ガイドライン(通則編)」(利用目的・安全管理措置・委託先監督)
- 同「人事労務管理サービスに関する注意喚起」
まとめ|人事も「分解」して数字で見る
HRデータ分析は、採用・離職・育成を数字で見て、根拠を持って施策を打つ取り組みです。離職率や採用ファネルを「いつ・どの層が」で分解すれば、打ち手が具体的になります。集計の入り口は割合とExcelです。ただし分母・期間をそろえ、相関と因果、小さい母数、個人情報の扱いに注意しましょう。今日のポイントをまとめます。
- まずは離職率・定着率・採用ファネルを出して比較する
- 「いつ・どの層が」で分解すると、打ち手が見えてくる
- 相関と因果・小さい母数に注意。個人評価には使わない
とはいえ、「自社の人事データを、実際に分析して施策につなげたい」という方も多いはずです。和からの法人向けデータ分析研修や統計・データ分析教室では、HRデータの分析を、実務で使える形までサポートしています。まずは無料相談で、お手元のデータの活かし方を一緒に考えてみませんか。
まずは個人で分析の型を身につけたい方は、仕事のデータ分析 個別指導もあわせてご覧ください。
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監修/和から株式会社 堀口智之
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