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不登校の子の算数、どこから再開する?「さかのぼり」の考え方

公開日

2026年9月5日

更新日

2026年9月5日

切り絵で表した、下ってから上がる階段と起点を示す光

不登校のお子さんの算数を再開しようとするとき、最初に立ちはだかるのが「どこから戻ればいいのか分からない」という問題です。学年通りの教材を開いても解けない。かといって、どこまで戻ればいいのかも分からない。そこで止まってしまうご家庭は少なくありません。

この記事では、再開の起点をどう見つけるかという一点に絞ってご説明します。結論を先にお伝えすると、最初から学年単位でやり直すと決めず、単元・系統ごとに現在地を確認します。必要な範囲はお子さんによって異なりますが、理解できている部分を残すことで、戻りすぎを防げます。

「何年生まで戻ればいい?」という問いの落とし穴

ご相談でいちばん多いのが、この聞き方です。ただ、この問いには答えにくい理由があります。

算数は、学年ごとに一枚の塊になっているわけではありません。数と計算、図形、測定、変化と関係、データの活用などの系統が、学年をまたいで進みます。そのため「分数は途中から怪しいが、図形は現在の学年まで理解できている」といった、でこぼこのある状態も考えられます。

学年で一律に戻ると、すでに理解できている単元までやり直すことがあります。復習が安心につながるお子さんもいますが、分かっている問題が続くことで負担を感じるお子さんもいます。理解度と気持ちの両方を見ながら、扱う範囲を決めます。

長さの違う4本の帯で、単元ごとに理解がでこぼこな状態を表した図

戻る単位は「単元」、それも「つまずきの起点」

探すべきは、理解が途切れた最初の一点です。ここを起点と呼びます。

たとえば「割合が分からない」という状態は、割合そのものが原因とは限りません。その手前にある「かけ算とわり算のどちらを使う場面か」の判断や、小数の意味が定まっていないことが起点になっている場合があります。逆に、その一点が埋まると、割合・速さ・単位量あたりの大きさが一気に通じることもあります。

ひとつの起点が、その先の複数の単元を止めていた。さかのぼり学習で起きるのは、多くの場合この構図です。

連なる円のひとつが欠け、その先が色褪せている図

起点を見つける3つの質問

ご家庭でおおまかに当たりをつけるなら、次の順で確認してみてください。

  1. どこまでなら「説明できる」か
    解けるかどうかではなく、なぜそうなるかを言葉にできるかを見ます。手順を覚えているだけの単元は、少し形を変えた問題で崩れます。「答えは出せるけれど理由は言えない」場所が、起点の候補です。
  2. 計算はできるのに、文章題になると止まらないか
    ここで止まる場合、起点は計算より手前の「場面の読み取り」にあります。学年を戻るより、同じ学年の中で文章題の型を整理するほうが効きます。
  3. 分数・小数が出てくると急に慎重になっていないか
    分数と小数は、割合・比・方程式などへつながるため、優先して確認したい候補です。ただし、慎重になること自体を「分かっていない証拠」とは決めつけません。どこで手が止まるかを一緒に見ます。

和から式|「答え・理由・応用」の3段確認

正解・不正解だけでは、起点を見つけにくいことがあります。和からジュニアでは、次の3段階に分けて確認する考え方を大切にしています。

段階 見ること 例:0.6÷0.2
答え 手順を使って解けるか 3と計算できる
理由 なぜその式・手順になるか 0.2が0.6に3個入ると説明できる
応用 形を変えても使えるか 文章題や分数表記でも同じ関係を見つけられる

答えは出るが理由で止まるなら、反復量より意味の確認を優先します。理由は説明できるが応用で止まるなら、同じ考え方を別の表現で使う練習をします。点数を付けるためではなく、次に何を一緒に練習するかを決めるための確認です。

より詳しいつまずきの類型は、小学生の算数さかのぼり個別指導のページで整理していますので、あわせてご覧ください。

実際、どのくらい戻ることになるのか

これは個々に違いますが、指導の現場での実感をお伝えします。

和からジュニアでは、最初から「1学年分を全部やり直す」とは決めません。分数の意味、わり算の場面判断など、現在の課題につながる系統を確認して範囲を決めます。結果として広く戻る場合もあれば、一つの単元に絞れる場合もあります。

すでに理解できている単元は、短い確認だけで先へ進めます。起点を補ったあとは、同じ考え方が現在の学習で使えるかを確認しながら進みます。速さだけでなく、本人が納得して進める量に調整することが大切です。

戻ったあと、どう前に進むか

さかのぼりは目的ではなく、前に進むための準備です。起点が埋まったら、次の3つを意識します。

  1. 埋めた単元が「使える」ところまで確認する
    理解した直後は、まだ手が動きません。同じ考え方を使う問題を、少し形を変えて何度か通します。
  2. 現在地までをつなぎ直す
    起点を補ったら、その考え方が次の単元でどう使われるかを確認します。以前に触れた内容でも、理解や体調に合わせて速度を調整し、途中で新しい起点が見つかれば立ち止まります。
  3. 次の関門を先に知っておく
    小学生なら分数と割合、中学生なら文字式と関数が次の分岐点になります。どこで詰まりやすいかを知っていると、詰まったときに慌てずに済みます。

さかのぼるときに避けたい進め方

  • 教材を最初から全部やると先に決めること:網羅的なドリルは復習や確認に役立ちますが、全問を同じ濃さで扱う必要があるとは限りません。できる単元は確認にとどめ、止まった理由に合わせて問題を選びます。
  • 学年名だけで遅れを伝えること:学年を意識すると負担になるお子さんもいれば、現在地が明確になって安心するお子さんもいます。「土台を確認する」「次の問題に必要な道具をそろえる」など、本人が受け止めやすい言葉を一緒に選びます。
  • 確認を評価だけで終えること:テスト形式が力を発揮する場合もありますが、点数だけでは起点が分かりません。「ここまでは説明できる」「形が変わると止まる」といった情報を、次の学習設計に使います。

よくある質問(FAQ)

Q1. 学年を戻ることに、本人が強く抵抗します。

「戻る」という言葉を使わない方法があります。今つまずいている問題を解くために必要な道具を揃えている、という位置づけにすると、同じ作業でも受け止め方が変わります。1対1の指導であれば、どの学年の内容を扱っているかが他人に見えないという利点もあります。

Q2. どこでつまずいているか、親が判断してよいものでしょうか。

おおまかな当たりをつけるところまでは、ご家庭でもできます。ただし、家庭での確認が緊張や言い争いにつながる場合は無理に続けません。本人が説明しやすい相手や、学校・学習支援の第三者へ相談する方法もあります。

Q3. 中学生でも、小学校の内容まで戻る必要がありますか。

必要な場合はあります。特に方程式や関数でつまずいているとき、起点が分数や割合にあることは珍しくありません。ただしその場合も、小学校の内容を全部やり直すのではなく、該当する系統だけを絞って埋めます。

Q4. さかのぼりには、どのくらいの期間がかかりますか。

起点の位置と範囲によります。特定の単元だけであれば数回で済むこともありますし、系統ごと埋め直す場合は数か月かかることもあります。最初の数回で起点が特定できれば、そこから先の見通しはかなり具体的に立てられます。

Q5. 学校の進度と、さかのぼりを同時にやるべきですか。

状況によります。土台が空いたまま学校の進度を追うと、どちらも中途半端になりがちです。一方で、在籍校とのつながりを保つ意味で今の単元にも触れておきたい場合もあります。優先順位を決めたうえで、比率を調整するのが現実的です。

参考にした公的資料

算数の内容を学年だけでなく領域・系統で捉える際は、文部科学省の小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 算数編も参照できます。「数と計算」「図形」「測定」「変化と関係」「データの活用」が学年をまたいで整理されています。

まとめ

算数の再開地点を決めるときの要点を整理します。

  • 戻る単位は学年ではなく単元:算数は系統が学年をまたいで並行して進むため、理解はでこぼこした形をしています。
  • 探すのは「つまずきの起点」:理解が途切れた最初の一点。ひとつの起点が、その先の複数の単元を止めていることがあります。
  • 戻る量は学年名だけで決めない:系統ごとに「答え・理由・応用」を確認し、理解できている単元を残して必要な範囲を決めます。
  • 確認をテストにしない:目的は「ここまではできる」という足場を確定させることです。

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