マスログ

2020/06/12

理論と実験の融合!現代の生活を支える「電気」の理論を生み出した数学者マクスウェル

皆さんは、普段日常的に使う「電気」の成り立ちについて、ご存知でしょうか?例えば部屋の蛍光灯は、スイッチを入れると電流が流れ、部屋を明るく照らしてくれます。スマートホンも、パソコンも、生活の中で使う大小実に色々なものが「電気」で動いています。そんな「電気」の理論を生み出したのはイギリスの数学者、ジェームズ・クラーク・マクスウェル。6月13日はちょうどマクスウェルの誕生日なので、ある物理学者を民衆の批判から救い、現代社会に欠かせない「電気」の理論、電磁気学を作り上げた偉大な数学者の話をしようと思います。

電気の誕生

そもそも電気と呼ばれる概念は、どこから生まれたのでしょうか。電気の歴史は古く、紀元前600年ごろにギリシアのタレスという人が、琥珀を布で擦ることで糸くずなどが吸い寄せられる、今でいう静電気を発見しました。しかし当時摩擦で生み出した電気を貯めておけるもの(コンデンサーと呼びます)はなく、電気についての研究を深めることはできませんでした。

琥珀を擦ることで羽毛が引き寄せられることに気づいたタレス。記念切手にもなっています。

状況が大きく変化したのは、1799年、イタリアのボルタによって電池が発明されたことで、電気について様々な実験を行えるようになったのです。導線に流れる電気を使って回路を組んだり、電気によって水を酸素と水素に分解したり(電気分解と言います)、当時未解明だった電気を巡って様々な研究が行われました。

ところで、18世紀後半といえば科学革命の真っ最中であり、宗教第一主義から科学実証主義に移り変わっていた時代です。科学者はスーパースターのごとくもてはやされ、貴族たちは次々と講演会を開き科学者の話に耳を傾けました。その時に最も注目されていたテーマは、発見されたばかりの「電気」でした。科学者は大きなステージの上に立ち、ライブのパフォーマンスのように熱弁を振るい、また聴衆も大いに湧きました。

そんな盛り上がりを見せる中、今日のもう1人の主人公、実験物理学者マイケル・ファラデーが電気に関する驚くべき事実に気づいたのです。

マイケル・ファラデーによる素晴らしい実験

マイケル・ファラデーはロンドンの貧しい鍛冶屋の家庭に生まれ、14歳から製本の仕事に就いていました。当時の学問といえば、現在のインターネットのような、最新の論文や研究に気軽に触れる機会はほとんどなく、基本的に上流階級ではない人間が行うことは非常に難しかった時代です。ですが、そんな中ファラデーは科学に対する好奇心と運によって、研究する機会を得ました。たまたま仕事相手に紹介された科学者ダービーの講演会に参加し、製本技術を買われて雑用係としてダービーの下で働き始めます。次第に「電気」の研究にのめり込んでいき、ある実験によって、電気について想像もしないようなことが明らかになります。それは、電気とは本来別物と考えられていた、「磁気」との関係性です。

マイケル・ファラデー(1791-1867)

磁気も古くから知られていたもので、風水占いを行う占術盤や、実用的にも羅針盤(コンパス)として利用されてきました。デンマークの物理学者エルステッドは、電流を流している導線の周りにコンパスを置くと、常に北を指すはずのN極が異なる方向を向くという事実を発見しました。ファラデーはその報告を受けて、電気が磁気に影響を及ぼすなら、磁気もまた電気に影響を及ぼすのではないか、という仮説を立てました。そして、それは正しかったのです!流れる電流に力を受けた磁石が、触れることなく回転し始めたのです。現在のあらゆる電気製品に利用されているモーターの原理です。

ファラデーが行なった実験。電気の力によって、磁石を触らずに動かすことができた。

しかし、この発見は、当時の学会には受け入れられませんでした。いくらファラデーが実験結果とともに自説を述べたてても、この身分の低い科学者のいうことを信じる人はいませんでした。これをひどいと思う人は、当時電気と磁気の正体を知らない人たちが、ファラデーが説いたこれらの主張を、電気と磁気の正体がわからなかったとして考えてみてください。果たして信用する気になるでしょうか?

電気が流れるとその周りに目に見えない力が働いて、それによって磁石がひとりでに動き始めるのです!

電気と磁気は互いに力を及ぼしあい、組紐のように連鎖しているのです!

いくら実験は裏切らないといえど、ファラデーは数学に長けているわけではなく、ファラデーが出した結果を裏付ける理論を作れなかったのです。誰もがファラデーに背を向けてアカデミーで孤立していく中、その窮地を救ったのが、若きジェームズ・クラーク・マクスウェルだったのです。

ジェームス・クラーク・マクスウェルによる美しい証明

ジェームズ・クラーク・マクスウェルは、ファラデーと対照的に裕福な家に生まれました。スコットランドで生まれ育ったマクスウェルは、科学に強い興味を持つ優秀な学生で、16歳の時に中等学校を卒業し、エディンバラ大学に入学しました。その後さらに勉強するためにケンブリッジ大学に入学して、研究に打ち込んでいきました。この若き天才数学者が、自説を立証する理論の構築作りに苦心していたファラデーに代わって、電気と磁気、合わせて電磁気の振る舞いを表す数式を生み出してしまったのです!

若き日のマクスウェル(1831-1879)

1850年後半ごろから、60歳に差し掛かったファラデーと若い数学者は手紙で連絡を取りあいながら、お互いの研究について交流を行うようになりました。ファラデーは優れた実験物理学者ではあったものの、こと数学においては四則計算を超える計算はほぼできなかったと言われています。ファラデーが描いた図を周りが「子供っぽい」と馬鹿にして取り合わない中、マクスウェルはその手書きの図に数式を見出して、理論を構築していきました。

マクスウェルが作り上げた数式は、4つの方程式からなります。これらを総称して「マクスウェル方程式」と呼ばれます。この式によって、電気から磁気が生まれ、磁気が生まれる循環を説明することができ、さらにその伝達速度が秒速300,000km、なんと光速に完全に一致することが導かれました。つまり、電線を流れる電流も、磁石から生じる磁力も、太陽から降り注がれる光でさえも電磁気の1形態に過ぎないことが、理論的に証明されたのです。この方程式が支配する学問を、今では「電磁気学」と呼びます。

マクスウェル方程式 \begin{align*} &\nabla \cdot \boldsymbol{B}(t, \boldsymbol{x}) =0\\\\ &\nabla \times \boldsymbol{E}(t, \boldsymbol{x})+\frac{\partial \boldsymbol{B}(t, \boldsymbol{x})}{\partial t} =0 \\\\ &\nabla \cdot \boldsymbol{D}(t, \boldsymbol{x}) =\rho(t, \boldsymbol{x})\\\\ &\nabla \times \boldsymbol{H}(t, \boldsymbol{x})-\frac{\partial \boldsymbol{D}(t, \boldsymbol{x})}{\partial t} =\boldsymbol{j}(t, \boldsymbol{x}) \end{align*}

 

1871年、ケンブリッジ大学史上初の実験物理学講座としてキャヴェンディッシュ研究所の設立が決まり、初代教授としてマクスウェル(当時39歳)が指名されました。マクスウェルは研究所の建設と実験設備の設置の段階から積極的に関わり、この研究所は、19世紀末から20世紀前半にかけて、科学史の重要な舞台となりました。

おわりに

いかがだったでしょうか。マクスウェルによってファラデーが行なった実験の成果が正しく評価され、電磁気学という学問が生まれました。そのおかげで、現代ではとても便利に電気を使うことができるのです。物理学者と数学者がタッグを組むことで、ものすごいことが起きた好例であるといえます。

最後に、今回はあえて誕生日のマクスウェルではなく、歳の差を超えた盟友となったマイケル・ファラデーの言葉を残して締めくくろうと思います。

あなたが科学者の説を認めるならば、あなたは科学に大きな貢献をすることになるだろう。あなたがそれに対して『はい』とか『いいえ』と言うだけでも、将来の進歩を助けることになる。一部の人は自分の考えに固執して口にするのをためらうに違いない。

次の日曜日で70歳になるのだから、記憶力が衰えても不思議ではない。この70年間私は幸せだった。そして希望と満足感がある今も幸せだ。

-マイケル・ファラデー

この言葉は私には、実験での発見、誰にも相手にされない講演会、マクスウェルと共に作り上げた電磁気学のことに思いを馳せたものであるように感じられるのです。

マンガでわかる電磁気学 遠藤 雅守著 オーム社マンガでわかる電磁気学 遠藤 雅守著 オーム社

電磁気について、漫画でとてもわかりやすくまとめられています。電磁気学について詳しく知りたい、勉強したことがあるけど全体がよく分からなかったという方に非常におすすめです。

<文/岡崎 凌> ⇒ 講師紹介ページへ

数学教室和(なごみ)」では数学だけでなく、高校、大学で学ぶ物理の個別授業も行っております。今回のテーマとなった電磁気学ももちろん扱っていますので、学んでみたい方、どこから学べばよいかわからない方はまず無料相談にお越しください。オンラインでも承っております。お問い合わせはこちらから。お問い合わせページへ

カテゴリー

記事一覧

Instagram

Facebook

Twitter