「三平方の定理」で見つかった矛盾!?ピタゴラスの生涯
公開日
2022年8月2日
更新日
2022年8月2日
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みなさんこんにちは。和からの数学講師の伊藤です。今回は、中学校で習うピタゴラスの定理(三平方の定理)の名前にもなっている、数学者のピタゴラスについて見ていこうと思います。数学を勉強すると必ず出てくるこの人物は最も有名な数学者と言っても過言ではないかもしれませんが、実はピタゴラスが発見した三平方の定理には、とても面白い(ちょっとホラー)な歴史があったんです!
この記事の主な内容
1.どんな人物?
ピタゴラスは、紀元前500年ごろに活躍していた数学者です。エーゲ海近海に浮かぶサモス島という島で生まれ、サモスの賢人と言われていたそうです。この異名からすでにピタゴラスの天才ぶりが伺えますが、当時ピタゴラス教団という教団を設立し、優秀な弟子を集めて数学の研究に励んでいたそうです。この教団は、外部に情報を漏らすことは絶対に禁止という謎めいた教団だったようで、いまでも多くは謎のままなのだそうです。
この教団内では、ピタゴラスが持っていたある思想が中核となっていたようです。それが、「万物は数なり」という言葉です。この世界の現象、物理法則はすべて数でできているという考えで、中でもピタゴラスは、次のような言葉を信じてやみませんでした。
「すべての数は、整数の比で表すことができる」
数学を勉強していくと、「おや…?」と思ってしまう思想ですが、ともかく当時のピタゴラスは、こういった考えを信じていました。後にこの思想が、大きな事件を起こすことになるのですが…。
2.ピタゴラスの発見
教団を率いて数学の研究をしていたピタゴラスですが、そんな彼が発見した大定理こそが、ご存じピタゴラスの定理です。直角三角形に関する美しい定理ですね。おさらいしておくと、直角三角形の辺の長さに関して、次のような式が成り立ちます。
ピタゴラスの発見と言えばこれがもっとも有名ですが、彼の発見はこれだけではありません。なんとピタゴラスは、数学を使うことで音楽の性質も解明してしまったのです。
ピタゴラスが鍛冶屋の前を通りかかったとき、2人の職人が鉄をたたく音が、きれいにハモっているときとそうでないときがあることに気付きます。そこで鍛冶屋に行って調べてみたところ、二人が使うハンマーの重さが一定の整数比のときに、美しい音が響いていたのだそうです。教団の教えがここでも役立った!!ということで、ピタゴラスはここから研究を始めたそうです。このピタゴラスが見つけた美しい音階のお話は、今後別の記事で掘り下げてみようと思います!
3.すべての数は整数の比で表せる…?
始めの章でお話した通り、ピタゴラス率いる教団は、「すべての数は整数の比でできている」という考えを信じていました。しかし、こちらも数学を勉強していくと必ず出てきますが、分数では表すことができない数というのが、世の中にはたくさん存在しています。代表的なものは円周率\(π\)や\(\sqrt{2}\)あたりでしょうか。学校では、こういった分数で表せない数のことを無理数と呼びます。
ピタゴラスの思想は、言い換えるのであればこの無理数のような数は存在しないというものでした。彼らが信じていた思想には、矛盾があったのです。この矛盾は誰にも発見されず、歴史上の新たな天才が修正する…そんな展開ならばよかったのですが、教団の中には、このタブーに触れてしまった者がいたのです。
4.自ら証明してしまった「矛盾」
ここでもう一度、ピタゴラスの定理のお話に戻りましょう。次のような直角二等辺三角形に、三平方の定理を適用してみます。
斜辺の長さcについて、\(c^2=1+1=2\)が成り立ちます。つまり斜辺の長さは、2回かけて2になる数、今でいう\(\sqrt{2}\)ということです。
実はこの、「2乗して2になる数」が整数の比で表せないという事実を証明してしまったのは、教団内部の方だったようです。これにより、教団で掲げられていた「すべての数は整数の比で表せる」という思想が間違いであることが証明されてしまったのです。これを知ったピタゴラスは、以降無理数に関する話をするのを禁じ、そして矛盾を発見した弟子を手にかけてしまったとさえ言われています(手にかけたというのは諸説ありますが)。
生涯最大の発見で、自分の矛盾を証明してしまうというのは、何とも皮肉な話ですね…。
5.まとめ
いかがでしたでしょうか。変り者が多い印象が強い数学者ですが、ピタゴラスも例にもれずなかなか面白い歴史を持っています。ちなみに三平方の定理に関しては、過去のマスログでもたくさん触れられているので、興味がある方はぜひチェックしてみてください!それでは、また次回のマスログでお会いしましょう。
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<文/伊藤智也>