Meun
close
050-5490-7845 ※ 月曜定休日
  • twitter
  • facebook
  • YouTube

マスログ

2021/01/05

ロマ数トレラン「楕円曲線入門(有限体上の3次曲線、虚数乗法編)」の推しポイント


数学教室和(なごみ)講師の松中です。

昨年開講した木内敬先生のロマ数トレラン「楕円曲線入門セミナー」の全10回の日程が完了し、この1月からその続編である「楕円曲線入門(有限体上の3次曲線、虚数乗法編)オンラインセミナー」を開講します。

前「楕円曲線入門セミナー」では楕円曲線の定義、群構造や、射影幾何、Nugell-Lutsの定理Mordellの定理を学びました。この辺りは前セミナー受講生のリュウさんが詳細にまとめてくださっています。リュウさんの個人的推しポイントもまとめられていますので、是非ご参照ください。
 

 
続く「楕円曲線入門(有限体上の3次曲線、虚数乗法編)オンラインセミナー」では前セミナーでやったことはほとんど仮定しません。楕円曲線の定義、群構造くらいは前提知識としますが、全く別のトピックに移りますので、新セミナーから参加したいという方もご安心ください(前セミナーではNugell-Lutsの定理、Mordellの定理の証明を詳細に行いましたが、その主張だけであればすぐに理解できますし)。

前セミナーの個人的推しポイント

前セミナーを通して、私が感じた大きな推しポイントを2つ紹介します。

活きた数学的対象に抽象的な数学概念を使うことができる。

普通大学では、群・環論関数論位相などはそれ単体で学びます。それぞれテキストで勉強していると例や演習はあるものの、その概念を理解するための例、演習止まりのような気がします。例えば群論では決まって巡回群対称群二面体群くらいを対象にして、生成元や部分群、準同型写像を求めますが、楕円曲線は出てきません。さすがに群論のテキストで楕円曲線まで書いていたら説明が大変だからでしょうし、数学の世界は群で溢れているので楕円曲線だけ載せていたら他の群がかわいそうという理由もあるでしょう。結局、群論のテキストには基本的で代表的な群しか出てきません。

しかし本セミナーでは、楕円曲線に群構造が入るので群論はいたるところで出てくることは当然として、例えば、\({\mathbb Q}^{\times}/{{\mathbb Q}^{\times}}^2\)といった群が平気で出てきて、楕円曲線の有理点からなる群から\({\mathbb Q}^{\times}/{{\mathbb Q}^{\times}}^2\)への不思議な形の群準同型写像を作りました。

\({\mathbb Q}^{\times}/{{\mathbb Q}^{\times}}^2\)という群は難しくない群にせよ、群のテキストでは(少なくとも私は)見たことがなかった群なので最初は「何者なんだ?」と思いました。群論も環論も関数論も何か知りたい数学的な問題があって、それを解くために発展してきたものなので、このように楕円曲線のような活きた素材を調べるのに、群論などの抽象数学を道具として使うのはとても面白いと思います。

ちょっとショック療法的で大変かとは思いますが、楕円曲線を学びながら群論を学ぶのもありだろうと思います。私は初めて群論を学んだ時は、あまりに抽象的で何のためにやっているのかわかりませんでしたが、楕円曲線のように調べたい対象があればモチベーションが高まって群論を理解するスピードも上がっていたかもしれません。

楕円曲線の世界(もっと言えば数学の世界)の奥深さや精巧さや神秘を感じることができる。

ちょっと宗教っぽく聞こえますが、私は数学教に勝手に入信しています。日ごろから数学の奥深さは感じているのですが、特に本セミナーを通して楕円曲線を学ぶことで、「こんなに整合性が取れている楕円曲線はだれが作ったんだ?こんなのは人間とかその辺の生物に作れる気がしないなあ。あぁやっぱり数学の神様っていて、神様が作ったとしか思えない」と思う場面が多々ありました。一言でいうと「楕円曲線はうまくできてるなぁ」です。

射影幾何の知識を使って\(xy\)平面、\(yz\)平面、\(zx\)平面で楕円曲線を書くと実数体上の楕円曲線がうまくつながっていたり、楕円曲線を複素数の周期平行四辺形で表したときにその平行四辺形を半分にした楕円曲線を返す(やや人為的な)写像を2回続けて作用させると縦方向、横方向に半分にされたり、といろんなところで「うまくできてるなぁ」ということ感じることができました。

(この写像については前セミナー受講生のtsujimotterさんのブログでも紹介されています。前セミナーの中核であるMordellの定理の証明で使われたアイディアが実際の計算例と共に紹介されています。)

個人的に一番うまくできているなぁと思ったのは連結成分を2つもつ実数体上の楕円曲線が\(C_2\)という位数2の巡回群と、\(S^1\)という円周の群の直積\(C_2\times S^1\)に同型という所でした(前セミナーの主役の有理数体上ではなく実数体上の話で少し恐縮ではあるのですが)。シンプルですが本当に「うまくできてるなぁ」と感じることができます。

コロナ禍で不要な外出ができませんが、代わりに数学の世界を探検するのはとても楽しいですよ。

新セミナーの推しポイント

私はまだ新セミナーで行う「有限体上の楕円曲線」、「虚数乗法」の勉強はしていないため、詳しくは木内先生が書かれた下記のゼミの案内をご参照ください。その上でいくつかコメントさせていただきます。

http://romanticmathnight.org/1672

有限体上の楕円曲線

前セミナーは有理数体上の楕円曲線でした。有理数は実数に比べてコンピュータで扱いやすいですが、それでも群構造を調べたり、計算したりするのはなかなか大変です。有限体上の楕円曲線にはそもそも有限個の点しか出てこないため、コンピュータで扱いやすいと想像されます。パラパラと演習問題を眺めるだけでもコンピュータを使って確認したら面白そうと思えるものがありそのあたりが魅力ではないでしょうか。エクセルでもできると思います。

(コンピュータで計算と言えば、前セミナー受講生のonewanさんが、有理数体上のある種の楕円曲線の有限位数の点を列挙するプログラムを作られていますので、こちらも是非読んでみてください。)

また、楕円曲線を使って因数分解を行うアルゴリズムも登場するようでとても楽しそうですし、そして実社会で使われている「楕円曲線暗号」も有限体上の楕円曲線の理論です。学んでみたくなりませんか?

虚数乗法

Wikipediaやtsujimotterさんのブログによると虚数乗法を持つ楕円曲線はスーパレアのようですが、どうやらそれは相当美しいようです。19世紀から20世紀にかけて活躍した大数学者ヒルベルトが「楕円曲線の虚数乗法論は数学のみならず、すべての科学の中の最も美しい分野である」とおっしゃっているそうで、それだけでも学んでみたくなります。

個人的には虚数乗法の理解に「ガロア理論」を使うところも大きな魅力です。ガロア理論自体は代数学のテキストでは学びましたが、ガロア理論を道具として使ったことはあまり記憶にありません。前セミナーの群論や関数論のように、新セミナーではガロア理論を使って理論を進めていくと思われます。ガロア理論を学んだことがない方はこれを機会に学ぶのも全然ありです。ガロア理論の知識は前提としないため、必要なガロア理論の知識は木内先生が補ってくれます。

また、虚数乗法は「クロネッカーの青春の夢」や高木貞治先生の「類体論」にもつながっているようで、そのあたりもとてもワクワクします。

なお「クロネッカーの青春の夢」は木内先生が第一回ロマンティック数学ナイトで発表されたテーマであり、昨年発売したロマンティック数学ナイトの公式本にもそのプレゼンの内容が載っております。

さいごに

本セミナーは、いえ、ロマ数トレランは決して気軽に楽して数学を学べるようなセミナーではありません。なかなかハードで、予習、復習をし、演習問題を解くことも大事になりますが、その分理解できた時や、面白い発見があった時の喜びはひとしおです。楽しそうと思った方はオンラインのガイダンス回にお越しいただければと思います。

オンラインガイダンス回は1月9日 15:00~16:30となっております。参加できない方には後日ビデオ配信もしますので、下記メールアドレスまでお気軽にご連絡ください。

class@wakara.co.jp

おまけ

ちなみに、私も昨年のオンラインロマ数で楕円曲線をテーマに登壇しました。こちらもよろしければご視聴ください。

<文/松中>

ロマ数トレラン「楕円曲線入門(有限体上の3次曲線、虚数乗法編)オンラインセミナー」の詳細、お申し込みはこちらのページよりお願いいたします。⇒http://romanticmathnight.org/1672