級内相関係数(ICC)とκ係数|ICC(1,1)〜ICC(3,k)の選び方を3つの質問でやさしく
公開日
2026年10月31日
更新日
2026年11月2日
この記事の主な内容
この記事のポイント
・ICC(級内相関係数)は、同じ対象を繰り返し測った値の信頼性を、対象間の違いと測定のばらつきから評価する指標です。カテゴリの一致にはκ係数を使います
・まず「測定値そのものの一致」か「一定のずれを許した一貫性」かを区別します。相関係数が高いだけでは、測定値が一致するとはいえません
・ICCを選ぶときは、評価者の組み合わせ、一般化したい範囲、単一値か平均値かに加え、絶対一致か一貫性かを確認します。固定評価者でも絶対一致を選べます
・以下では架空の12例でICCを、分類表でκを計算します。数値だけでなく、選んだモデル・定義・信頼区間を併記することが大切です
まずは「同じ対象を2人が測る」ところから
例えば、同じ人の膝の角度をAさんが110度、Bさんが113度と測ったとします。別の人では122度と122度でした。知りたいのは、対象ごとの違いに比べて、測る人によるずれがどのくらいあるかです。ICCは、このような数値測定の信頼性を調べるために使います。
ただし、「いつもBさんがAさんより10度大きい」場合をどう考えるかで目的が分かれます。値をそのまま交換して使うなら、このずれも問題なので絶対一致を評価します。一定のずれを除いた変動の一致に関心があるなら一貫性を評価します。相関係数は一緒に増減する関係を表すため、この2つを代わりに判定するものではありません。
この記事では、具体例で相関と一致の違いを確認してから、ICCの選択、手計算、分類データのκへ進みます。ICC(1,1)〜ICC(3,k)の6型はよく使われる表記ですが、ICC全体の選択肢を尽くすものではありません。
公式情報の確認
ICCの6分類の原典は Shrout PE, Fleiss JL, Psychol Bull 1979;86(2):420-428(PubMed)、one-way / two-way random / two-way mixed と absolute agreement / consistency の呼称は McGraw KO, Wong SP, Psychol Methods 1996;1(1):30-46、選び方と目安は Koo TK, Li MY, J Chiropr Med 2016;15(2):155-163(全文)。κ係数は Cohen J, Educ Psychol Meas 1960;20(1):37-46、3人以上は Fleiss JL, Psychol Bull 1971;76(5):378-382。
1. 相関と一致の違いを12例で確かめる
理学療法士2名(A・B)が術後患者12例の膝関節屈曲角度を測った、という設定のデータです。単位は度。
A:110, 122, 108, 128, 118, 113, 125, 116, 109, 121, 114, 126
B:113, 122, 114, 130, 123, 114, 129, 122, 109, 124, 119, 127
平均はAが117.5度、Bが120.5度でBが3.0度大きい。Pearsonの相関係数はr=0.9477です。
「常に+10度」でも相関係数は1.000のまま
極端にして確かめます。Bの値を「Aちょうど+5度」、次に「+10度」に差し替えます。2人の判断は平行移動しただけで、1例も一致していません。
・+5度:r=1.000000、ICC(3,1)=1.0000、ICC(2,1)=0.7925
・+10度:r=1.000000、ICC(3,1)=1.0000、ICC(2,1)=0.4884、ICC(1,1)=0.3125
相関係数は2つの変数を別々に標準化してから比べるため、平均のずれも目盛りの違いも途中で消えます。一方ICC(2,1)は0.4884で、Koo & Liの目安では0.5未満が「poor」。相関が完璧なときにICCは「信頼性が低い」と判定しています。さらにICC(3,1)も1.0000のまま動きません。これはconsistency(一貫性)の指標で、平均のずれを最初から誤差に数えないからです。ICC(2,1)は絶対一致を評価するため、このずれを反映します。ただし、ずれを反映するのはこの型だけではありません。同じ例ではICC(1,1)も低下し、二元混合モデルでも絶対一致を選択できます。
2. ICCの選び方|3つの設計上の質問と、一致の定義
Koo & Li (2016) は、同じ評価者が全対象を評価したか、評価者は母集団からの標本か、単一値か平均値か、一貫性か絶対一致か、という4つの確認を示しています。前の3問だけでは型は決まりません。とくに、評価者を固定するかどうかと、絶対一致か一貫性かは別の選択です。以下の表はShrout–Fleissの6型の対応を示すもので、選択肢をすべて網羅した判断表ではありません。
| Shrout-Fleiss の記法 | McGraw-Wong の記法 | Q1 全対象を同じ評価者が見たか | Q2 評価者は「評価者一般」の標本か | Q3 実務で使うのは | 一致の定義 | 典型的な場面 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| ICC(1,1) | ICC(1) | いいえ(対象ごとに別の評価者) | ―(問いません) | 1人の値 | absolute agreement | 対象ごとに担当検者が違う多施設研究 |
| ICC(1,k) | ICC(k) | いいえ(対象ごとに別の評価者) | ―(問いません) | k人の平均 | absolute agreement | 同上で、平均値を最終値にする場合 |
| ICC(2,1) | ICC(A,1) | はい | はい(他の検者にも一般化したい) | 1人の値 | absolute agreement | 他の検者への一般化と絶対一致に関心があり、1人が測る |
| ICC(2,k) | ICC(A,k) | はい | はい(他の検者にも一般化したい) | k人の平均 | absolute agreement | 複数名の平均を最終値にする測定 |
| ICC(3,1) | ICC(C,1) | はい | いいえ(この評価者だけが関心の対象) | 1人の値 | consistency | 固定した評価者について一貫性を評価する場合 |
| ICC(3,k) | ICC(C,k) | はい | いいえ(この評価者だけが関心の対象) | k人の平均 | consistency | 固定評価者の平均値の一貫性(対応する計算はCronbachのαと一致) |
質問1|全ての対象を、同じ評価者が評価しましたか
12例全部をAとBが測ったなら、対象と評価者の効果を分けるtwo-way(二元配置)が候補です。対象ごとに異なる評価者を割り当て、評価者効果を分けて推定できない設計なら、one-way(一元配置)が候補になります。単に担当者が違うだけで機械的に決めず、評価者の割当てとデータ構造を確認します。
質問2|その評価者は「評価者一般」からの標本ですか
評価者を母集団からの標本として扱い、他の同様な評価者へ一般化したいならtwo-way random(変量)、関心が特定の評価者に限られるならtwo-way mixed(混合)を検討します。この選択だけで絶対一致か一貫性かは決まりません。どちらのモデルにも両方の定義があり、固定した評価者の測定値そのものを比較したい場合にも絶対一致を選べます。
質問3|実務で使うのは1人の値ですか、k人の平均ですか
運用の問題です。研究では2人で測ったが臨床では1人が測るなら、報告は単一測定値の(,1)。(,k)は(,1)をSpearman-Brownの公式で伸ばしたもので、0より大きく1未満のICCではkが増えると大きくなります(2×0.8677/(1+0.8677)=0.9292=ICC(2,k))。運用と合わない(,k)は実態より良く見せる書き方です。
質問4|絶対一致と一貫性のどちらを評価しますか
絶対一致では評価者間の一定のずれも不一致として扱い、一貫性ではそのずれを除いて評価します。Koo & Liが整理した二元配置では、同じ定義・同じ単一値/平均値を選ぶと、変量と混合の点推定式は同じでも一般化の範囲が異なります。Shrout–Fleissの6型にない「二元混合・絶対一致」や「二元変量・一貫性」も選択肢です。番号だけでなく、モデル、単一値/平均値、一致の定義を言葉で報告してください。
3. 分散分析表からICCを手で計算する
ICCの正体は分散分析です。12例×2名のデータで、総平方和を「被験者の差」「評価者の差」「残差」に分けます。全体平均は119.0度でした。
| 変動の要因 | 平方和 SS | 自由度 df | 平均平方 MS | 記号 |
|---|---|---|---|---|
| 被験者(12例の個人差) | 1001.0 | 11 | 91.0000 | MSR(BMS) |
| 評価者(A・Bの差) | 54.0 | 1 | 54.0000 | MSC(JMS) |
| 残差 | 27.0 | 11 | 2.4545 | MSE |
| 合計 | 1082.0 | 23 | ― | ― |
| (参考)対象内=評価者+残差 | 81.0 | 12 | 6.7500 | MSW(WMS) |
評価者の平方和を確かめます。Aの平均117.5、Bの平均120.5、全体119.0なのでずれは−1.5と+1.5。SS=12×{(−1.5)2+1.52}=54.0、自由度1でMSC=54.0000。MSC/MSE=22.00(p=0.00066)で、この分散分析の仮定の下では、平均差がないという帰無仮説を5%水準で棄却します。
式に入れます。n=12、k=2です。
ICC(2,1)=(MSR−MSE)/{MSR+(k−1)MSE+k(MSC−MSE)/n}
=(91.0000−2.4545)/{91.0000+2.4545+2×(54.0000−2.4545)/12}=88.5455/102.0455=0.8677
ICC(3,1)=(MSR−MSE)/{MSR+(k−1)MSE}=88.5455/93.4545=0.9475
違いは分母の8.5909——評価者間のずれを表す項があるかないかだけです。一元配置ならICC(1,1)=0.8619、平均版はICC(2,k)=0.9292、ICC(3,k)=0.9730。すべてPythonで検算し、pingouinの出力と一致しました。
目安と、点推定値だけを見てはいけない理由
Koo & Li (2016) の目安は0.5未満poor、0.5〜0.75moderate、0.75〜0.9good、0.90超excellent。ICC(2,1)=0.868は「good」、ICC(3,1)=0.947は「excellent」で、型が違うだけで結論の言葉が変わります。ただし同論文は「信頼性の水準はICC推定値そのものではなく、その95%信頼区間に基づいて評価するほうが適切である」とも述べています。この12例ではICC(2,1)が0.868[95%CI 0.07〜0.97]で、poorからexcellentまでを含むため、信頼性の水準を精密には絞り込めません。同論文が「30以上の異質なサンプルと、可能なら3名以上の評価者」を目安として挙げています。ただし一律の必要人数ではなく、対象集団や求める推定精度に応じて設計します。
4. カテゴリカルなデータはκ係数で測る
評価が「自立/一部介助/全介助」のような分類ならκ(カッパ)係数です。Cohen自身の説明では、2人の精神科医がでたらめに10%を統合失調症と分類しても一致率は82%になる。観測一致率には、まったく偶然に帰せられる期待割合が必然的に含まれる——κはこれを差し引いた指標です。
看護師2名が患者100例のADLを3段階で判定した想定の表で計算します。かっこ内は周辺度数から求めた偶然の期待度数(行計×列計÷100)です。
| B:自立 | B:一部介助 | B:全介助 | 行計 | |
|---|---|---|---|---|
| A:自立 | 32(15.99) | 8(16.40) | 1(8.61) | 41 |
| A:一部介助 | 6(15.60) | 28(16.00) | 6(8.40) | 40 |
| A:全介助 | 1(7.41) | 4(7.60) | 14(3.99) | 19 |
| 列計 | 39 | 40 | 21 | 100 |
手順は2段階です。観測一致率 po=対角線の合計÷全体=(32+28+14)/100=0.7400。偶然一致率 pe=対角線の期待度数の合計=(15.99+16.00+3.99)/100=0.3598。
κ=(po−pe)/(1−pe)=0.3802/0.6402=0.5939
分母の1−peは「偶然を超えて改善できる余地の最大値」です。一致率74%は、偶然の36%を引くと伸びしろの59%しか埋めていない——これがκの読み方です。Landis & Koch (1977) の慣用的な目安では0.41〜0.60がmoderateですが、この区分は著者の判断によるもので恣意的だと指摘されています。
順序があるなら重み付きκを使う
3段階には順序があります。「自立」を「全介助」と誤るのと「一部介助」と誤るのでは重さが違うのに、通常のκは同じ不一致として扱います。そこでCohen (1968) の重み付きκ。カテゴリ数をmとしてlinearは w=1−|i−j|/(m−1)、quadraticは w=1−(i−j)2/(m−1)2で、m=3なら隣どうしは線形0.5、二次0.75です。
線形なら隣接セルの24例が0.5ずつ数えられpo(w)=0.74+24×0.5/100=0.8600、期待側もpe(w)=0.3598+48×0.5/100=0.5998、κw=0.2602/0.4002=0.6502。二次なら0.9200と0.7198でκw=0.7145。0.5939 → 0.6502 → 0.7145と上がるので、どちらの重みを使ったかは必ず書いてください。
3人以上ならFleissのκ|ただしCohenの一般化ではありません
評価者が3人以上ならFleissのκ (1971) です。療法士3名が10例を3段階で判定した例では、対象ごとに「同じ判定をした評価者ペアの割合」を求めて平均し、観測一致率=0.6667。カテゴリ別の使用割合は30回中11・13・6回で0.3667、0.4333、0.2000、その2乗和が偶然一致率=0.3622。κ=(0.6667−0.3622)/0.6378=0.4774です。
ただしFleissのκは、評価者2人のときCohenのκに一致しません。Cohenのκは評価者ごとに別々の周辺分布から、Fleissのκは全評価者をまとめた分布から偶然一致を計算するためです。次節の2×2表ではCohenのκ=0.699278、Fleissのκ=0.699248。後者はScottのπと同じ値で、Fleissのκはπの多人数版です。
5. κのパラドックス|一致率85%のままκが0.70から0.13まで落ちる
Feinstein & Cicchetti (1990) が「高い一致率なのに低いκ」として整理した弱点があります。原因は偶然一致率peが周辺度数から計算されることです。2×2表で観測一致率を0.85に、評価者間の偏り(b=8、c=7)も固定し、「あり」と判定される割合を変えます。真の有病率を直接観測した例ではなく、評価者の判定分布を変える例です。
| 両者「あり」a | Aのみ「あり」b | Bのみ「あり」c | 両者「なし」d | 観測一致率 po | 偶然一致率 pe | κ | 有病率指標 PI |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 45 | 8 | 7 | 40 | 0.8500 | 0.5012 | 0.6993 | 0.05 |
| 60 | 8 | 7 | 25 | 0.8500 | 0.5612 | 0.6582 | 0.35 |
| 75 | 8 | 7 | 10 | 0.8500 | 0.7112 | 0.4806 | 0.65 |
| 80 | 8 | 7 | 5 | 0.8500 | 0.7812 | 0.3144 | 0.75 |
| 83 | 8 | 7 | 2 | 0.8500 | 0.8280 | 0.1279 | 0.81 |
5つの表はすべて100例中85例が一致、不一致も15例で同じ。それでもκは0.6993から0.1279まで落ちます。最下行の83%は、両者がともに「あり」と判定した割合です。評価者Aの「あり」は91%、評価者Bは90%なので、この周辺比率を保って独立に判定した場合の偶然一致率が0.8280まで上がり、κの分子は0.0220しか残りません。逆に a=85, b=4, c=6, d=5 の表は観測一致率0.9000と高いのにκ=0.4451。一致率が高いほうがκが低い——これが2つ目のパラドックスです。
パラドックスにどう対処するか
Byrt, Bishop & Carlin (1993) は診断用の指標を示しました。有病率指標 PI=|a−d|/Nと偏り指標 BI=|b−c|/N。上の表ではBIが0.01で一定なのに、PIが0.05から0.81へ動くにつれκが落ちています。同論文のPABAK=2po−1なら5つとも0.7000ですが、二値分類で偶然一致率を0.5と置く調整指標です。周辺度数から偶然一致を求める通常のκとは仮定が違うため、その意味を説明せず置き換えることは避けます。クロス表・観測一致率・周辺度数を必ず併記してください。
まとめ
・ICCは数値測定の信頼性を評価する指標です。対象間の違いに対して測定がどのくらい安定しているかを、目的に合ったモデルで調べます
・評価者の組み合わせ、一般化の範囲、単一値/平均値に加え、絶対一致/一貫性を選びます。固定評価者だから一貫性、とは限りません
・Pearsonの相関だけでは測定値の一致を評価できません。常に+10度ずれた例でもr=1.000000で、ICC(2,1)は0.4884です
・0.5、0.75、0.9などの区分は目安です。95%信頼区間と利用目的を確認し、必要人数も一律に決めないでください
・κはカテゴリの使用割合に影響されます。今回の例では一致率85%のままκが0.6993から0.1279へ変わりました。クロス表と一致率を併記します
評価者間信頼性は「数字を1つ出せば終わり」に見えて、どの型を選んだかで結論の言葉が変わるところです。ICCならモデル・単一値/平均値・一致の定義を、κならクロス表と一致率を。読者が同じ判断をたどれる形で書く——それが報告の作法です。
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<監修/和から株式会社 堀口智之>
「評価者間信頼性を示してください」と言われて、どのICCを選べばよいか迷っていませんか。
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※2026年11月2日に内容を更新しました。
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