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直交表L8の割り付け|交互作用をどこに置くかを実例で

公開日

2026年10月28日

更新日

2026年10月28日

この記事のポイント

・直交表 L8(27) は8行7列。2水準の因子なら最大7つを8回で調べられます(総当たりは 27 = 128通り)。
・7本の列には a・b・ab・c・ac・bc・abc という成分記号がついていて、これが「どこに何が出るか」の地図になります。
・因子Aを第1列、因子Bを第2列に置くと、A×Bの交互作用は第3列に出ます。そこへ因子Cを置くと効果が重なって区別できません(交絡)。
・7因子を詰め込めば交互作用は一切見られません。交互作用を見たいなら因子を減らします。この二択がL8の設計判断です。
・数表・成分記号・交互作用表・分散分析の数値は、すべて検算した値を載せています。

結論|L8を使うとは「7本の列に何を置くか」を決めることです

直交表L8を使う作業は、数表を写すことではありません。8行7列の「7本の列」に、因子と交互作用と誤差をどう配分するかを決めることです。列は7本しかなく、2水準の因子1つも、2水準どうしの交互作用1つも、列を1本ずつ使います。合計7本を超える割り付けはできません。

いちばん間違えやすいのが、因子Aを第1列、因子Bを第2列に置いたあとで第3列に因子Cを置いてしまうことです。第3列にはA×Bの交互作用が現れます。ここにCを置くと、第3列に出た数値が「Cの効果」なのか「A×Bの交互作用」なのか、データからは決められません。JISではこれを交絡と呼びます。

そこで必要になるのが成分記号と交互作用表(または線点図)です。第1列がa、第2列がb、第3列がab、というように列そのものに名前がついていて、ab = a × b の掛け算で「A×Bがどの列に出るか」がわかります。以下、その割り付けを実例で最後まで通します。

公式情報の確認

交互作用・交絡・別名・直交配列の用語は JIS Z 8101-3(統計-用語と記号-第3部:実験計画法/日本規格協会) に定義があります。QC検定の出題範囲は 品質管理検定レベル表(Ver.20150130.2) が一次情報です。受検を予定している方は、最新版のレベル表をご自身で必ずご確認ください。

1. 直交表L8とは|8行7列の数表を検算する

L8(27) は、Lが直交表、8が行数(=実験回数)、2が水準数、7が列数を表します。1行が1回の実験条件、1列が「割り付けられる枠」です。表の中の1と2は水準番号で、硬化温度なら1=80℃、2=100℃のように対応させます。

次が数表です。見出しに成分記号を、右端に第4章で使う架空のデータを入れました。

実験No. 第1列 a 第2列 b 第3列 ab 第4列 c 第5列 ac 第6列 bc 第7列 abc 接着強度(N)
1 1 1 1 1 1 1 1 48.2
2 1 1 1 2 2 2 2 45.4
3 1 2 2 1 1 2 2 46.1
4 1 2 2 2 2 1 1 44.9
5 2 1 2 1 2 1 2 51.0
6 2 1 2 2 1 2 1 49.3
7 2 2 1 1 2 2 1 57.4
8 2 2 1 2 1 1 2 53.7

「直交」とは2列を取り出したとき4通りが同数回出ること

JIS Z 8101-3は直交配列(直交表)を「因子のすべてのペアに対して、因子の水準について考えられる処理組合せが同数回現れるような処理組合せの集合」と定義しています。L8で確かめます。7列から2列を選ぶ組み合わせは 7C2 = 21通り。その21通りすべてで、(1,1)(1,2)(2,1)(2,2) の4パターンがそれぞれちょうど2回ずつ現れました。1つも省かずに数えています。この性質があるおかげで、ある列の効果を計算するときほかの列の水準が半々ずつ混ざって打ち消し合い、8回の実験から7本の列の効果を独立に取り出せます。

なぜ8回で済むのか

2水準の因子が7つあるとき、条件の全組合せは 27 = 128通りです。L8ならこれを8回で終えます。128 ÷ 8 = 16、16分の1の実施で93.8%の削減です。ただしタダではなく、減らした分だけ「見えなくなる効果」が生まれます。それが次章からの交絡です。

2. 成分記号|列そのものに名前がついています

L8の7本の列には、第1列=a、第2列=b、第3列=ab、第4列=c、第5列=ac、第6列=bc、第7列=abc という記号が対応します。この対応が全8行で崩れないことも確認しました。水準1を0、水準2を1と読み替えると、第3列は第1列と第2列の排他的論理和にちょうど一致します。abは飾りの名前ではなく、列の中身そのものです。

成分記号の掛け算は1つのルールだけ

成分記号の扱いには、覚えることが1つしかありません。掛け合わせて、同じ文字が2つ揃ったら消える。これだけです。

・a × b = ab → 第1列と第2列の交互作用は第3列に出ます。
・a × ab = a2b = b → 第1列と第3列の交互作用は第2列に出ます。
・a × c = ac → 第1列と第4列の交互作用は第5列に出ます。
・ab × ac = a2bc = bc → 第3列と第5列の交互作用は第6列に出ます。

この計算を21通りすべて行って一覧にしたものが交互作用表です。成分記号の掛け算で作った結果と、数表そのものから作った結果が完全に一致することを確かめてあります。

第1列 第2列 第3列 第4列 第5列 第6列 第7列
第1列 — 3 2 5 4 7 6
第2列 3 — 1 6 7 4 5
第3列 2 1 — 7 6 5 4
第4列 5 6 7 — 1 2 3
第5列 4 7 6 1 — 3 2
第6列 7 4 5 2 3 — 1
第7列 6 5 4 3 2 1 —

読み方は単純で、第2列と第4列の交互作用を知りたければ、第2列の行と第4列の列が交わるところを見ます。6なので第6列です。成分記号でも b × c = bc = 第6列で同じ答えになります。

線点図がなぜ必要になるのか

交互作用表は正確ですが、割り付けを組み立てる場面では少し使いにくいところがあります。「A×BとA×Cの両方を見たい」という要望を21個の数字から探すのは手間だからです。そこで使うのが線点図で、点が列、線がその2点の交互作用が出る列を表します。

L8の代表的な線点図は2つです。1つ目は点1・点2・点4を三角形に並べ、辺に3(点1と点2の間)、5(点1と点4の間)、6(点2と点4の間)を書き、点7だけ離した形。2つ目は点1を中心に点2・点4・点6を放射状につなぎ、辺に3・5・7を書いた形です。どちらも上の掛け算と食い違わないことを確認しました。線点図があると、まず「見たい交互作用の形」を描き、その形が収まる図を探して列番号を決める、という逆向きの手順が取れます。

3. 割り付け|第3列に因子Cを置いてはいけない理由

因子Aを第1列、因子Bを第2列に置いた瞬間に、第3列にはA×Bの交互作用が現れます。この交互作用は、因子を割り付けなくても実験データに現れます。

では、そこに因子Cを置くと何が起きるか。第3列の水準1と水準2の平均の差を計算すると1つの数値が出ますが、そこにはCの主効果とA×Bの交互作用が足し合わさっています。この2つをデータから分けることはできません。

JIS Z 8101-3は交絡を「二つ以上の要因効果(主効果及び/又は交互作用)が区別できないように計画的に組み合わせること」、別名(エイリアス)を「実験の性質のため、他の主効果や交互作用が完全に交絡している効果」と定義しています。第3列にCを置くのは、CとA×Bを別名にしてしまうことです。

表1の架空データで確かめます。第3列で集計すると水準1の平均が51.175、水準2の平均が47.825、差は −3.35 でした。この −3.35 は、Aを第1列・Bを第2列に置いた人にはA×Bの大きさですが、そこにCを置いた人にはCの主効果の大きさになります。同じ8個の数値が、割り付け方しだいで別の意味に読めてしまう。どちらが正しいかを、この8回だけで決める方法はありません。

割り付けの4パターンを並べて比べる

同じL8でも、置き方で見えるものがまったく変わります。代表的な4パターンです。

列(成分記号) ① 3因子+A×B ② 4因子 ③ 7因子(スクリーニング) ④ よくある誤り
第1列(a) A A A A
第2列(b) B B B B
第3列(ab) A×B A×B = C×D C C(A×Bと交絡)
第4列(c) C C D D
第5列(ac) 誤差(A×Cを無視) A×C = B×D E 誤差
第6列(bc) 誤差(B×Cを無視) B×C = A×D F 誤差
第7列(abc) 誤差(A×B×Cを無視) D G 誤差
誤差の自由度 3 0 0 3
読める交互作用 A×B 3組(各2つが交絡) なし なし

①は3因子とA×Bだけを見る割り付けで、残った第5・6・7列を誤差に回します。ただしこの3列は「何もない列」ではありません。それぞれA×C、B×C、A×B×Cが出る列です。誤差として扱えるのは、これらが無視できると技術的に判断したときだけ。この割り付けでは、無視できると判断した効果の列を使って誤差分散を推定します。ここを曖昧にすると誤差分散が大きくなり、効いている因子を見逃します。

②は4因子A・B・C・Dを置く割り付けで、Dを第7列(abc)に置きます。このときA×BとC×Dが同じ第3列、A×CとB×Dが第5列、A×DとB×Cが第6列に出ます。2因子交互作用が2つずつ組になって重なるので、「A×Bを読む」ことは「C×Dは無視できる」という判断とセットです。その代わりA・B・C・Dの主効果はどれも2因子交互作用と重なりません。ここが4因子割り付けの良いところです。

③は7因子を全部主効果として置く割り付けです。7列すべてが埋まるので誤差の自由度が0になり、そのままでは検定ができません。しかも各列には主効果のほかに2因子交互作用が3つずつ重なります。A〜Gを第1〜7列に置いた場合、Aの第1列にはB×C・D×E・F×Gが重なります。「7因子は割り付けられるが交互作用は見られない」とはこのことです。

④が、この記事で繰り返している間違いです。誤差の自由度は3あるので分散分析表は普通に作れてしまい、Cの効果として読んだ数値にA×Bが混ざっていることに本人は気づけません。数表が正しくても、割り付けを間違えれば結論が壊れます。

4. 実例|接着強度の実験をL8で組んで分散分析まで

割り付け①の形で最後まで数字を通します。取り上げるのは接着工程、特性値は接着強度(N、大きいほど良い)です。データは説明のために作った架空のものですが、計算はすべて実際に行っています。

・因子A:前処理(水準1=なし、水準2=あり)→ 第1列
・因子B:接着剤(水準1=現行品、水準2=新製品)→ 第2列
・交互作用 A×B → 第3列
・因子C:硬化温度(水準1=80℃、水準2=100℃)→ 第4列
・第5・6・7列:誤差に回す(A×C、B×C、A×B×Cは無視できると判断)

この架空例では実施順を無作為化し、結果を表1の行に対応させて整理して、右端の測定値が得られたとします。合計396.0、平均49.5、総平方和は133.56(自由度7)です。

列ごとの平方和を出す

2水準の列の平方和は、水準1の合計を T1、水準2の合計を T2 として S = (T2 − T1)2 ÷ 8 です。第1列なら T1 = 184.6、T2 = 211.4 なので 26.82 ÷ 8 = 89.78。7列すべてを足すと133.56で、総平方和と一致します。

要因 列 平方和 自由度 不偏分散 F値 判定(5%)
A(前処理) 第1列 89.780 1 89.780 142.89 有意
B(接着剤) 第2列 8.405 1 8.405 13.38 有意
A×B 第3列 22.445 1 22.445 35.72 有意
C(硬化温度) 第4列 11.045 1 11.045 17.58 有意
誤差 第5・6・7列 1.885 3 0.628 — —
合計 — 133.560 7 — — —

誤差平方和は第5・6・7列の合計で 0.245 + 0.020 + 1.620 = 1.885、自由度3、誤差分散は 1.885 ÷ 3 ≒ 0.628 です。F(1, 3) の上側5%点は10.128なので、4つの要因はいずれも5%で有意でした。各平方和を総平方和で割った割合は、Aが67.2%、A×Bが16.8%、Cが8.3%、Bが6.3%、誤差が1.4%です。

交互作用が有意なら、主効果は単独で読めません

A×Bが有意だったことが、この実験でいちばん大事な結果です。AとBの4通りの組合せの平均は、A1B1が46.80、A1B2が45.50、A2B1が50.15、A2B2が55.55でした。「接着剤を新製品にすると強度は上がるか」を見ると、前処理なし(A1)では1.30下がり、前処理あり(A2)では5.40上がります。効果の向きが逆転しています。

ここで「Bの主効果は +2.05 だから新製品のほうが良い」とだけ報告すると、前処理をしない工程には当てはまらない結論になります。交互作用が有意なときは主効果を単独で語らず、組合せで判断します。この実験なら最良は A2B2、平均55.55です。

もし第3列に因子Cを置いていたら、この逆転に気づけません。第3列の数値はCの効果として報告され、A×Bという言葉は最後まで出てこないからです。データから確認できる効果は、実験前の割り付けによって決まります。

5. 7因子か、4因子+交互作用か|L8の使い分け

L8の使い方は大きく2つに分かれます。実験の目的で選びます。

スクリーニングとして使う(最大7因子)

候補の因子が多く、まず「どれが効くか」だけを知りたい段階では、7因子を全部主効果として置く使い方が向きます。128通りを8回で片づけられるのは大きな利点です。ただし、ある列が大きく出たとき、それが主効果なのか重なっている2因子交互作用なのかは判断できません。絞り込みの道具であって、結論を出す道具ではありません。大きく出た因子を数個残し、次の実験で交互作用を確かめる二段構えになります。

交互作用を見るために使う(3〜4因子)

交互作用を見たいなら因子を減らします。2水準の因子がn個あるとき2因子交互作用は n(n − 1) ÷ 2 個。主効果と合わせると3因子で 3 + 3 = 6列(7本に収まる)、4因子で 4 + 6 = 10列(収まらない)です。つまり2因子交互作用を全部見られるのは3因子までで、4因子なら見たい交互作用を選ぶことになります。

列が足りないときはL16(16行15列)に上げるのが素直な選択で、回数は倍になりますが列は15本に増えます。増やせないなら、見たい交互作用を絞るか、「ここは交互作用がないはず」と技術的に言い切れる箇所を作るしかありません。この判断は統計ではなく、対象についての技術的な知識で決まります。

QC検定ではどのレベルで出てくるか

品質管理検定レベル表(Ver.20150130.2)では、2級の実験計画法は「実験計画法の考え方」「一元配置実験」「二元配置実験」までで、直交表実験は準1級・1級の範囲です。ただし2級の二元配置実験で交互作用を扱うので、「交互作用がどこに現れるか」というこの記事の見方は2級の準備としても働きます。範囲は改定されることがあるため、受検前に最新版をご確認ください。

まとめ

・L8(27) は8行7列。2水準の因子1つと、2水準どうしの交互作用1つが、それぞれ列を1本使います。
・第1〜7列には a・b・ab・c・ac・bc・abc が対応し、「同じ文字が2つで消える」掛け算で交互作用の出る列がわかります。
・Aを第1列、Bを第2列に置いたら第3列はA×Bの席です。ここに別の因子を置くと交絡し、データからは分けられません。
・7因子を置くと交互作用は一切見られません。交互作用を見たいなら3〜4因子までに絞ります。
・誤差に回した列は「空の列」ではなく、「無視すると決めた効果」の列です。何を無視したかは記録に残します。

直交表の難しさは、数表を写すところではなく割り付けを決めるところにあります。逆に言えば、成分記号と交互作用表の読み方さえ手に入れば、列ごとの集計と分散分析へ進めます。手元の実験で「何を見たいのか」をはっきりさせてから7本の列を埋めてみてください。埋め方が決まった時点で、その実験からわかることはもう決まっています。

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<監修/和から株式会社 堀口智之>

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