管理図の見方|「異常」と判定する8つのルールをやさしく
公開日
2026年10月26日
更新日
2026年10月26日
この記事の主な内容
この記事のポイント
・管理図の異常判定ルールは8つあります。点が管理限界の外に出る「ルール1」は、そのうちの1つにすぎません
・8つ全部を使うと、工程が正常でも平均73点に1回は空振りの警報が出ます(本記事の数値はすべてPythonで検算)
・現行規格は JIS Z 9020-2:2025。いまも広く引用される JIS Z 9021 は2016年に廃止されました
・現行規格では、8つの判定条件は本文の規定ではなく附属書の「例」という位置づけに変わっています
・管理限界(UCL・LCL)と規格限界(USL・LSL)はまったく別物。同じ図に並べて比べてはいけません
結論|管理限界の外れと点の並び方を確認する
管理図を渡されて最初に探すのは、たいてい管理限界からはみ出した点でしょう。ただそれだけでは、用意されている8つのサインのうち1つしか使っていません。工程平均がじわりとずれたとき、点は限界の内側に収まったまま、中心線の同じ側に並びます。この並び方を読むのが、残り7つのルールの役目です。
一方で、ルールを増やすほど正常な工程でも警報が鳴ります。検算すると、ルール1だけなら誤警報は平均370点に1回ですが、8つ全部では平均73点に1回。約5倍です。1日1点プロットする工程(月20点)なら、約18か月に1回だった空振りが約4か月に1回になります。空振りが増えれば、現場は管理図を見なくなります。
本記事では、ルール1(限界の外)・ルール2(同じ側に9点)・ルール5(3点中2点が2σの外)を組み合わせた場合の数値を示します。この3つで、工程平均が1σずれたときに気づくまでの点数は、ルール1だけの約44点から約13点に縮みます。以下、8つを1つずつ確率つきで見ていきます。
公式情報の確認
日本の現行規格は JIS Z 9020-2:2025 管理図−第2部:シューハート管理図です(2016年12月20日制定、2023年2月20日・2025年9月22日改正、ISO 7870-2:2023にMOD)。長く参照されてきた JIS Z 9021:1998 は2016年に廃止され、この規格に置き換えられました。規格票の入手と最新の改正状況は日本規格協会(JSA)、QC検定の出題範囲は品質管理検定レベル表が一次情報です。
1. 管理図は「6つの領域」で読む
異常判定ルールの前に、図の目盛りを揃えます。中心線から上下±3σを1σごとに区切ると、片側3つ・両側で6つの帯ができます。中心線に近いほうから領域C(0〜1σ)、領域B(1〜2σ)、領域A(2〜3σ)です。現行規格にも「管理図は中心線の両側で三つのゾーン、A、B及びCに等分され、また各ゾーンは1シグマの幅である」とあります。
以下では打点が独立で、中心と標準偏差が既知の安定した正規分布に従う場合を考えます。このとき、各帯に点が落ちる確率は次のとおりです。
・領域Cの中(|z|<1σ)… 68.269%
・片側で1σより外(領域B以遠)… 15.866%
・片側で2σより外(領域A以遠)… 2.275%
・±3σより外 … 0.270%
なぜ管理限界は±3σなのか
正規分布では±3σの内側に 99.730% が入り、外に出る確率は 0.270%、1000点で約2.7回です。この「めったに出ない」を異常のサインに使います。±2σにすると外に出る確率は 4.550% で22点に1回が空振り。±4σでは0.0063%まで下がり、今度は本当の変化を見逃します。3σは両者の釣り合いがとれる位置です。
正規分布を仮定できない場合も目安は立ちます。分布の形を問わないチェビシェフの不等式なら±3σの内側に少なくとも88.9%、有限分散をもつ単峰分布なら、ヴィソチャンスキー・ペチュニンの不等式で少なくとも95.1%です。ただし歪みの強い分布は別で、指数分布では平均+3σより外に出る確率が 1.832%、正規分布の両側0.270%の約6.8倍あります。片側に裾を引くデータでは空振りが増えます。
2. 異常判定の8つのルール
ここが本題です。8つのルールは旧規格 JIS Z 9021:1998 の図13に示されたもので、内容はNelson(1984)の8つの検定と一致します。QC検定の教材や市販の管理図ソフトが「8つのルール」と呼ぶのは、この一覧です。表の「偶然そう見える確率」は、工程が完全に正常なのに、そのルールが引っかかる確率を指します。ルール3・4の確率は、独立同分布で同順位のない連続データの順序から求めます。ルール2はさらに中心線の上下に落ちる確率が各1/2であることが必要です(ルール3は6点が単調に並ぶ確率=2/6!)。
| ルール | 判定条件(点の並び方) | 何を示唆するか | 偶然そう見える確率 |
|---|---|---|---|
| ルール1 | 1点が領域Aを超える(±3σの外に出る) | 突発的な異常。設定ミス、材料ロット違い、測定ミス | 0.270%(約370点に1回) |
| ルール2 | 9点が中心線に対して同じ側にある | 工程平均が動いた(水準のずれ) | 0.391%(約256点に1回) |
| ルール3 | 6点が連続して増加、または連続して減少している | 工具摩耗、温度上昇、劣化など一方向に進む変化 | 0.278%(約360点に1回) |
| ルール4 | 14点が交互に増減している | 2つの条件が交互に混ざっている(設備2台、作業者2名、昼夜など) | 0.457%(約219点に1回) |
| ルール5 | 連続する3点中2点が、中心線の同じ側で領域A以遠(2σの外)にある | 平均の大きめのずれ。ルール1より早く気づける | 0.306%(約327点に1回) |
| ルール6 | 連続する5点中4点が、中心線の同じ側で領域B以遠(1σの外)にある | 平均の中くらいのずれ | 0.553%(約181点に1回) |
| ルール7 | 連続する15点が領域Cの中にある(中心線の両側どちらでもよい) | ばらつきが小さすぎる。層別ミス、または管理限界が広すぎる | 0.326%(約307点に1回) |
| ルール8 | 連続する8点が領域Cの外にある(中心線の両側どちらでもよい) | 2つの分布が混ざっている(層別すべきものが混在) | 0.010%(約9,730点に1回) |
表の括弧内は固定した窓の確率の逆数です。窓が重なる連続監視での平均警報間隔(ARL)とは、ルール1を除いて一般に一致しません。注意が2つあります。ルール5とルール6は「中心線の同じ側」が条件で、ルール5では2σより上に2点あれば、残る1点が下側でも成立します。ルール6も同じ側の1σより外に4点あることが条件です。もう1つ、ルール7とルール8は中心線の両側にまたがってよいのが特徴で、この2つでは、ばらつきの変化や管理図の設定、データの層別を確認します。
8つを3つのグループに分けて覚える
丸暗記しようとすると混乱します。何を捕まえたいかで分けると一気に整理できます。
(A)平均のずれを捕まえる … ルール1・2・5・6
ずれの大きさで役割が分かれます。大きいずれはルール1が一発で拾い、中くらいはルール5、小さいずれはルール2とルール6が時間をかけて拾います。実務で最も出番の多いグループです。
(B)系統的な動きを捕まえる … ルール3・4
ルール3は一方向に進む変化(トレンド)で、工具の摩耗や液の劣化のように原因がはっきりしていることが多く、対策に直結します。ルール4は上下の振動で、2つの条件が交互に混ざる状態を疑います。
(C)管理図の作り方を疑う … ルール7・8
ルール7は点が中心線の近くに集まりすぎた状態です。喜ばしいようで、実際は群の作り方(層別)を誤って管理限界が広くなりすぎている場合があります。ルール8は逆に点が中心線を避けて上下に張りつく状態で、性質の違う2つの母集団を1枚に混ぜている疑いがあります。どちらも工程の変化や管理図の設定を確認するサインです。
3. ルールを増やすほど誤警報が増える
固定した窓について、8ルールの誤警報確率の逆数は約180〜9,700です。同時に適用すると誤警報は増えますが、複数ルールが同時に成立する重なりに注意が必要です。現行規格自身がこう書いています。「ルール1〜ルール3を同時に適用したシューハートX管理図では、第1種の過誤の確率は、ルール1だけを適用した場合1000回当たり約3であるのに対して、1000回当たり約10である」
ルール1が0.270%、ルール2が0.391%、ルール3が0.278%で、単純合計は0.938%です。これは重複を含む上限で、同時適用時の正確な確率ではありません。1000点あたり 9.38回 という値は規格の「約10」に近い概算です。ルール1だけの場合も2.70回で「約3」と合います。
では8つ全部ならどうなるか。重なりを考える必要があるため、正常な工程を数百万点シミュレーションし、警報が出るまでの平均点数(ARL)を測りました。同じ計算をWestern Electricの4ルールに当てはめると91.83となり、Champ & Woodall(1987)の厳密解91.75とほぼ一致します。
| 使うルール | 誤警報が出るまでの平均点数(工程は正常) | ARLから換算した1000点あたりの警報 | 工程平均が1σずれたとき、気づくまでの平均点数 |
|---|---|---|---|
| ルール1だけ | 約370点 | 約2.7回 | 約44点 |
| ルール1+2 | 約215点 | 約4.7回 | 約17点 |
| ルール1+2+5 | 約160点 | 約6.3回 | 約13点 |
| 8つ全部 | 約73点 | 約13.7回 | 約10点 |
現場で本当に見るべきはどれか
表の右2列を見比べてください。ルール1にルール2とルール5を足すところまでが、検出の改善と誤警報の増加を比較しやすい範囲です。空振りは370点に1回から160点に1回へ2.3倍に増えますが、1σのずれに気づく速さは44点から13点へ3分の1以下に縮みます。
そこから8つ全部に広げても、検出は13点から10点になるだけです。引き換えに空振りは160点に1回から73点に1回へ倍増します。手作業で管理図を確認する場合は、追加するルールによる誤警報の増加も確認します。ルール7・8は毎回のチェックではなく、管理図を作り直したときや様子がおかしいときの診断用と考えると使いやすくなります。
もう1点。この表の固定窓の確率はルール6が0.553%で最も高く、ルール8は0.010%で最も低い。ルールごとに厳しさがまったく違うため、「8つのうち何個引っかかったか」で深刻さを測るのは誤りです。
4. 管理限界と規格限界はまったく別物
現場でいちばん多い誤解がここです。管理限界(UCL・LCL)と規格限界(USL・LSL)は、出どころも、判定する対象も、答える問いも違います。
| 観点 | 管理限界(UCL・LCL) | 規格限界(USL・LSL) |
|---|---|---|
| どこから来るか | 工程の実績データから計算する(例:X̄±A2R̄) | 図面・顧客要求・法令から与えられる |
| 何を判定するか | 群の統計量(X̄やR) | 個々の製品の測定値 |
| 答える問い | 工程は安定しているか(変化があったか) | この製品は合格か(使えるか) |
| 見直すとき | 工程が変わったら引き直す | 要求が変わらない限り動かさない |
| 管理図に書くか | 書く | 書かない |
決定的なのは「何を判定するか」の行です。X̄管理図が打点しているのは群の平均で、個々の製品ではありません。群平均のばらつきは個々の値より小さく、n=5なら σ/√5 = 0.447σ。したがって管理限界は ±3σ/√5 = ±1.342σ、個々の測定値のスケールでは±3σ幅の 44.7% しかありません。
数字で見ます。目標100、σ=2、n=5、規格90〜110の工程なら、X̄管理図の管理限界は 97.317〜102.683(幅5.37)、規格限界は90〜110(幅20)で、管理限界のほうが 約3.7倍狭い。同じ図に引けばこの例では規格限界が外側にあり、いつまでも「余裕がある」ように見えます。
「管理状態なのに不良が出る」は普通に起きる
2つの限界は独立なので、4通りの組み合わせが起こります。とくに注意すべきは「管理図は安定、でも不良は出ている」です。先の工程で平均が107にずれ、そこで安定したとします。変化の原因を確認したうえで中心線を107に設定すれば、以後安定していても確率的な誤警報は残ります。しかし規格上限110を超える確率は 6.68%、Cpk は 0.50。管理図は「変化がない」と言っているだけで、「規格を満たしている」とは一言も言っていません。
逆もあります。平均100・σ=2なら Cp は 1.667、規格外れは 0.573ppm と良好ですが、小さな変化が起きればルール2などが反応します。管理図は工程の変化を見るもの、工程能力指数は規格との関係を見るものです。
5. X̄-R管理図の係数 A2・D3・D4 の意味
X̄-R管理図の管理限界は、標準偏差を計算せずに引けるよう、範囲R̄からの換算係数が用意されています。
・X̄管理図:UCL・LCL = X̄ ± A2R̄
・R管理図:UCL = D4R̄、LCL = D3R̄
これらは覚えるべき謎の数字ではありません。n個の標準正規乱数の範囲Rについて平均を d2、標準偏差を d3 と書くと、A2 = 3/(d2√n)、D3 = 1 − 3d3/d2、D4 = 1 + 3d3/d2。中身はすべて「3σ」です。次の表はこの定義から数値積分で計算し直した値です。
| 群の大きさ n | d2 | A2 | D3 | D4 |
|---|---|---|---|---|
| 2 | 1.128 | 1.880 | — | 3.267 |
| 3 | 1.693 | 1.023 | — | 2.575 |
| 4 | 2.059 | 0.729 | — | 2.282 |
| 5 | 2.326 | 0.577 | — | 2.114 |
| 6 | 2.534 | 0.483 | — | 2.004 |
| 7 | 2.704 | 0.419 | 0.076 | 1.924 |
最も使われる n=5 を確認します。d2=2.326、d3=0.864 なので A2=3/(2.326×√5)=0.577、D4=1+3×0.864/2.326=2.1145。規格の表では2.114、資料によっては2.115と記載されますが、これは丸めの位置の違いです。
D3が「—」になる理由
n=6以下で D3 が空欄なのは、印刷の都合ではありません。定義どおり計算すると n=5 では D3 = 1 − 3×0.864/2.326 = −0.114 と負になります。範囲Rは必ず0以上ですから、負の下側管理限界に意味はありません。そのためn=6以下ではR管理図に下側管理限界を設定しないのです。n=7で初めて0.076と正になり、下側管理限界が引けます。
なお係数表は改正で見直されることがあります。日本規格協会は2025年9月の改正について、ISO 7870-2が2023年に「管理限界線を計算するための係数を適切な値に改める等の改訂」を行ったためJISを整合させたと説明しています。手元の教材の係数表が古い版のままでないか、一度は確認する価値があります。
まとめ
・管理図の異常判定ルールは8つ。限界の外に出るルール1はその1つで、残り7つは点の並び方を読むためのものです
・8つ全部を使うと空振りは約73点に1回まで増えます。ルール1+2+5の3つを使う場合も含め、必要な検出速度と誤警報を比較します
・ルール7・8ではばらつきの変化や管理図の設定を確認します。適用目的を決めて使います
・管理限界と規格限界は別物。n=5のX̄管理図の限界は個々の値でいう±3σ幅の44.7%しかなく、同じ図では比べられません
・A2・D3・D4 は「R̄から3σ幅を出す換算係数」。n=5でD3が空欄なのは、計算すると−0.114と負になるからです
管理図の運用では、適用するルールと誤警報の頻度を確認します。検出したい変化に合わせてルールを選びます。現行の JIS Z 9020-2 が判定条件を「規定」ではなく「例」として示しているのは、そこを各現場で決めてほしいという意味だと読めます。
あわせて読みたい:数学が苦手になる原因とは|つまずきの正体と対処法をやさしく
<監修/和から株式会社 堀口智之>
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