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工程能力指数 Cp・Cpkの違い|1.33の根拠と、値が食い違うとき工程で起きていること

公開日

2026年10月27日

更新日

2026年10月27日

この記事のポイント

・Cpは「規格の幅がばらつきに対して足りているか」だけを見る指標で、工程平均がどこにあるかは一切見ていません。
・Cpkは「平均から近いほうの規格限界まで、何σ分の余裕があるか」を見ます。実際の不適合品率とかみ合うのはこちらです。
・ばらつきを変えずに平均だけを3σずらすと、Cpは1.33のまま動かないのに、不適合品率は63ppmから158,655ppmへ約2,500倍になります。
・「1.33以上」はJIS Z 9020-2:2016に明記があります。ただし対象はCpで、Cpkではありません。
・CpとCpkの差は、次に手を付ける場所を教えてくれます。差が大きければ平均の調整、差が小さくて両方低いならばらつきの低減です。

結論|Cpは「幅が足りるか」、Cpkは「今どこにいるか」

工程能力指数CpとCpkは、同じ工程を別の角度から見た2つの数字です。Cpが見ているのは規格の幅とばらつきの比だけ。工程平均が規格の真ん中にあろうと上限すれすれにあろうと、Cpの値は1ミリも動きません。

一方のCpkは、工程平均から近いほうの規格限界までの距離を3σで割った値です。平均がずれれば、その分だけ小さくなります。100万個中に何個の不適合品が出るか、という現実の数字とかみ合うのはCpではなくCpkのほうです。

ですから、CpとCpkが食い違っている工程は「ばらつきは足りているのに、置き場所を間違えている」工程です。必要なのは設備の入れ替えではなく設定値の調整です。逆に両者がほぼ等しくてどちらも低いなら、中心に寄せても改善しません。2つの差そのものが診断結果になっています。

公式情報の確認

規格の条文・用語・数値は必ず発行元でご確認ください。工程能力指数の用語は JIS Z 8101-2:2015「統計-用語及び記号-第2部:統計の応用」(対応国際規格 ISO 3534-2:2006)に、Cp・Cpkによる評価と「1.33」の記述は JIS Z 9020-2:2016「管理図-第2部:シューハート管理図」(対応国際規格 ISO 7870-2:2013)にあります。購入・閲覧は日本規格協会 JSA Group Webdeskから可能です。

1. CpとCpkの定義を式で確認する

Cpは「規格の幅 ÷ ばらつきの幅」

上側規格限界をSU、下側規格限界をSL、工程の標準偏差をσとすると、Cpは次の式で表されます。

Cp = (SU − SL) ÷ 6σ

分母の6σは、正規分布で平均±3σにあたる幅で、全体の約99.73%が入ります。JIS Z 8101-2:2015はこれを「参照区間」として0.135%分位点と99.865%分位点で構成される区間と定義しており、正規分布ならその幅がちょうど6σです。式のどこにも工程平均μは登場しません。

Cpkは近いほうの規格限界だけを見る

Cpkは、上側と下側それぞれの余裕を計算して、小さいほうを採ります。

Cpu = (SU − μ) ÷ 3σ  Cpl = (μ − SL) ÷ 3σ  Cpk = min(Cpu, Cpl)

平均が規格の中心にぴったり合っていればCpk=Cpです。ずれるほどCpkだけが小さくなります。両者の関係はきれいな式になります。規格中心からのズレを規格幅の半分で割った値をkとすると、Cpk = (1 − k) × Cp です。たとえば規格幅20の工程で平均が中心から2.5ずれていればk=0.25なので、CpkはCpの75%になります。

日本の規格ではどこに書かれているか

工程能力指数の用語は JIS Z 8101-2:2015(1999年制定、2015年改正、ISO 3534-2:2006と一致)の箇条2.7「工程能力<計測されたデータ>」に置かれています。管理図の規格である JIS Z 9020-2:2016(ISO 7870-2:2013と一致)は「工程能力は,通常,工程能力指数Cp及びCpkによって評価する(ISO 22514規格群を参照)」と述べ、計算の詳細をISO 22514規格群に委ねています。

なお、1998年の JIS Z 9021「シューハート管理図」はJIS Z 9020-2:2016によって廃止されました。旧規格ではCpにあたる指標がPCIという記号で、同じ (上方許容限界 − 下方許容限界) ÷ 6σ の形で示されています。

2. Cpの値と不適合品率(ppm)の対応

工程平均が規格の中心に合っている(つまりCp=Cpk)ときに限って、Cpから不適合品率を直接計算できます。正規分布を仮定すると、両側規格の不適合品率は 2 × Φ(−3Cp) です。次の表はscipy.stats.normで実際に計算した値です。

Cpの値 平均から規格限界まで 両側規格の不適合品率 片側規格の不適合品率 一般的な受け取られ方
0.67 2.01σ 約44,431 ppm(約4.44%) 約22,216 ppm 能力が不足している
1.00 3.00σ 約2,700 ppm(約0.27%) 約1,350 ppm 辛うじて保っている
1.33 3.99σ 約66.1 ppm 約33.0 ppm 一般に許容できる最小
1.67 5.01σ 約0.544 ppm 約0.272 ppm 余裕がある
2.00 6.00σ 約0.00197 ppm 約0.00099 ppm 大きく余裕がある

「1.33」と「4/3」で答えが1割変わります

1.33はぴったり4/3ではありません。Cp=1.33なら平均から規格限界までは3.99σで両側66.1ppm、Cp=4/3=1.3333…なら4.00σちょうどで63.3ppmです。資料によって「64ppm」だったり「66ppm」だったりするのは、この丸め方の違いです。

もうひとつ、片側規格しかない工程では外れる裾が片方だけなので不適合品率は半分になります。両側規格用の表をそのまま当てはめると、2倍に見積もることになります。

3. CpとCpkが食い違うとき、工程に何が起きているのか

ここからが本題です。ばらつきをまったく変えず、工程平均だけを動かしてみます。規格は下限90・上限110(幅20、中心100)、標準偏差はσ=2.5に固定します。このときCpは 20 ÷ (6 × 2.5) = 1.33 で、平均をどこへ動かしても変わりません。

工程 工程平均 規格中心からのズレ Cp Cpu Cpl Cpk 実際の不適合品率
A 100.0 0(0σ) 1.33 1.33 1.33 1.33 約63 ppm
B 101.0 +1.0(0.4σ) 1.33 1.20 1.47 1.20 約165 ppm
C 102.5 +2.5(1.0σ) 1.33 1.00 1.67 1.00 約1,350 ppm
D 105.0 +5.0(2.0σ) 1.33 0.67 2.00 0.67 約22,750 ppm

Cpは動かない。動くのは不適合品率のほう

この4工程は、設備も材料も作業者も同じでばらつきは1ミリも変わっていません。変えたのは平均だけです。それでも不適合品率はAの63ppmからDの22,750ppmまで約359倍に増えます。もう1段ずらして平均107.5(+3σ)にすると158,655ppm、およそ6個に1個が規格外です。Aと比べると約2,505倍。この間、Cpはずっと1.33のままです。

わずかなズレも侮れません。Bの平均101はズレがたった0.4σですが、それだけで不適合品率は2.6倍になります。現場感覚では「ほぼ真ん中」でも、数字はきちんと反応しています。

表のCplの列にも注目してください。平均が上へずれると、下限側の余裕(Cpl)はむしろ増えていきます。CpkがCpuとCplの小さいほうだけを採るのは、余裕がある側の数字で危ないほうを薄めないためです。

逆に、Cpkが同じでも中身は違います

逆向きの見方も必要です。Cpkだけを報告すると、性質のまったく違う工程が同じ数字になってしまいます。同じ規格90〜110で、Cpkがどちらも1.00の2工程を並べます。

工程 標準偏差σ 工程平均 Cp Cpk 実際の不適合品率 平均を中心に合わせたときの不適合品率 先に打つべき手
P 1.667 105.0 2.00 1.00 約1,350 ppm 約0.00197 ppm 平均を規格中心へ戻す
Q 3.333 100.0 1.00 1.00 約2,700 ppm 約2,700 ppm(変わらない) ばらつきそのものを減らす

Pは設定値を直すだけで不適合品率が約68万分の1になります。Qは平均をどう動かしても2,700ppmから改善しません。すでに中心に合っているからです。Cpkは同じ1.00でも、打つべき手はまったく逆向きです。CpとCpkを必ず並べて報告すべき理由がここにあります。

廃止された規格に残っていた実例

JIS Z 9021:1998(現在は廃止)には、まさにこの状況の実例が載っています。上方許容限界0.2190、下方許容限界0.1250の工程でPCI(Cpと同じ式)=1.0330。そのうえで規格本文には「PCIが1以上であるので,工程には能力があると考えられる。しかし,詳細に検討すると,工程平均は,規格の中心に対してずれており,それゆえ,個々の製品の約11.8%は上側の規格限界を超えていることが分かる。」と書かれています。

上側に11.8%外れるということは、平均から上側規格限界まで約1.19σしかないということです。つまりこの工程のCpk(この場合はCpu)は約0.40。Cp=1.03に対してCpk=0.40。この開きがそのまま「11.8%」の正体です。20年以上前の規格が、すでに同じ注意を促していたわけです。

4. 「1.33以上が望ましい」はどこから来たのか

JISに明記があります(ただしCpについて)

JIS Z 9020-2:2016の箇条9「工程管理,工程能力及び工程改善」に、次の記述があります。「Cpが1未満の場合,工程能力が不足していることを示し,Cp=1は工程能力を辛うじて保っていることを示す。実際には,Cpが1.33のときを一般的に許容できる最小の値とする。なぜならば,ある程度のサンプリング変動が常に存在し,いかなるときでも,完全に統計的管理状態にある工程はほとんど存在しないからである。」

根拠として挙げられているのは「標本抽出によるばらつきが常にあること」と「完全に管理状態にある工程はまずないこと」の2点です。1.33=4/3、つまり平均から規格限界まで4σ確保しておけば、推定の誤差や平均の多少の変動があっても3σは残る、という余裕の取り方だと読めます。ただし規格自体は、1.33という数値をどう導いたかまでは示していません。

注意すべきは、この記述の対象がCpだという点です。同じ箇条は続けて「ただし,Cpは,単に許容限界と工程のばらつきとの関係であり,工程平均の位置は考慮していないことに注意しなければならない。」と釘を刺しています。よく聞く「Cpk 1.33以上」は、このJISの文からの直接の帰結ではありません。

Cpkの1.33は取引先の要求から広まりました

Cpkに1.33を求める慣行は、自動車産業のサプライヤー要求が広めたものです。北米自動車業界のQS-9000は、安定した工程にCpk≧1.33、慢性的に不安定な工程にPpk≧1.67を求めていました。Boschがサプライヤー向けに公開している資料でも、長期の工程能力にCp≧1.33およびCpk≧1.33、機械能力にCm≧1.67およびCmk≧1.67を要求しています。

一方、IATF 16949のような品質マネジメントシステム規格の本文に具体的な数値はなく、顧客の部品承認要求で指定されたとおりに維持することを求める形です。合格ラインが1.33なのか1.67なのかを決めているのは規格ではなく取引先です。報告の前に、根拠となる文書がどれかを確認してください。

確認できなかったこと

日本語の教材でよく見る5段階の判定表(1.67以上は十分すぎる/1.33以上は十分/1.00以上は不十分…)については、この形の表を載せているJISを見つけられませんでした。JISで確認できたのは「Cpが1未満なら能力不足」「Cp=1は辛うじて」「Cp=1.33が一般に許容できる最小」の3点までです。5段階の表は、この3点を実務向けに拡張した慣行の表として扱うのが正確です。

5. CpとPp(工程性能指数)はどこが違うのか

式の形は同じで、違うのは分母に入れる標準偏差の作り方だけです。

比べる点 工程能力指数 Cp・Cpk 工程性能指数 Pp・Ppk
使う標準偏差 群内のばらつきから推定した値(R̄ ÷ d2 など) 全データから直接計算した標準偏差 s
工程の前提 統計的管理状態にあることが前提 管理状態を前提にしない
表しているもの 突き止められる原因を取り除いた後に到達できる能力 その期間に実際に出た結果
主な使いどころ 管理図で安定を確認したうえでの能力評価 立ち上げ時や、管理外れを含む期間の実績評価

数値で見ます。5個ずつ5つの群を取り、群内のばらつきは5群とも同じ(範囲はどれもR=4)、群平均だけが98→99→100→101→102と動いた工程を考えます。R̄=4.00、n=5のd2は2.326なので、群内から推定した標準偏差は 4.00 ÷ 2.326 = 1.7197。一方、25個すべてから計算した標準偏差は2.0412です。規格を90〜110とすると、Cp=1.94、Pp=1.63。同じデータなのに0.31離れます。

この差は群間の変動、つまり工程が時間とともに動いた分です。Cpは「動きを止められればここまでいける」、Ppは「実際にはここまでだった」を表しています。JIS Z 9020-2:2016も「工程は,能力を評価する前に,まず統計的管理状態にもっていく必要がある」と述べており、管理状態を確かめないままCpだけを報告するのは順序が逆です。

まとめ

・Cp = (SU − SL) ÷ 6σ は規格の幅とばらつきの比だけを見ており、工程平均の位置を含みません。
・Cpk = min(Cpu, Cpl) は平均から近いほうの規格限界までを見ます。不適合品率とかみ合うのはCpkです。
・規格中心からのズレをkとすると Cpk = (1 − k) × Cp。CpとCpkの差は、ズレの大きさそのものです。
・σ=2.5・規格幅20の工程では、Cpが1.33のままでも平均が3σずれれば不適合品率は63ppmから158,655ppmになります。
・「1.33」はJIS Z 9020-2:2016にCpの最小許容値として明記されています。Cpkの1.33は取引先要求に由来する慣行です。

CpとCpkは、どちらが正しいかを競う指標ではありません。2つ並べたときの差が、次に手を付けるべき場所を指しています。差が大きければ平均の調整、差が小さくて両方低いならばらつきの低減です。報告書に片方しか書かれていないときは、もう片方を計算してから読むことをおすすめします。

あわせて読みたい:数学が苦手になる原因とは|つまずきの正体と対処法をやさしく

<監修/和から株式会社 堀口智之>

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