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事業展開等リスキリング支援コースとは?令和8年8月改正後の要件・対象講座・上限額・申請の流れ

公開日

2026年9月22日

更新日

2026年9月22日

事業展開等リスキリング支援コースの解説(助成率75%)

事業展開等リスキリング支援コースは、人材開発支援助成金のひとつで、新しい分野への進出やDX化・GX化に伴って必要になる知識・技能を社員に習得させる訓練を対象にした制度です。中小企業なら訓練経費の75%が助成され、別枠で訓練時間1時間あたり1,000円の賃金助成があります。対象は10時間以上のOFF-JTで、訓練を始める前に計画届を出しておくことが前提。令和8年度末までの時限措置です。

つまずくのはその先でしょう。対象講座の一覧はあるのか、1人あたりいくら出るのか、いつまでに何を提出するのか、令和8年8月3日の改正で何が変わったのか。厚生労働省の支給要領・パンフレット・変更点リーフレット・事業主向けQ&Aをもとに順に整理します。

この記事のポイント
・中小企業は経費助成75%、賃金助成は1人1時間1,000円(大企業は60%・500円)
・1人当たりの経費助成限度額は訓練時間に応じて30万〜50万円、1事業所1年度で1億円まで
・厚労省は「対象講座一覧」を公表しておらず、個々のケースごとに審査される
・令和8年8月3日から受講回数の上限と「汎用的な内容」の扱いが変わった

事業展開等リスキリング支援コースとはどんな制度か

厚生労働省はこのコースの目的を「新たな事業の立ち上げなど事業展開等に伴い必要となる知識および技術を習得させるための訓練を助成の対象にしています」と説明しています。今の仕事をそのまま続けるための研修ではなく、これから進もうとしている方向のための研修を後押しする制度です。

「事業展開」は「新たな製品を製造し又は新たな商品もしくはサービスを提供すること等により、新たな分野に進出すること」と定義されています。事業展開を行わない場合でも、デジタル化・DX化に関連する訓練なら対象になり得ます。GX化に関わる訓練も柱のひとつです。

申請できるのは雇用保険適用事業所の事業主で、職業能力開発推進者の選任が必要です。ほかに労働組合等の意見を聴いた計画の作成・周知、訓練期間中の適正な賃金の支払い、書類の5年間保存、労働局の審査への協力、事業展開等実施計画の作成が挙げられています。自社の事業計画と訓練内容がつながっているかどうかが、このコースの出発点です。

いつまで使えるのか

パンフレットの表紙には「令和4年~8年度の期間限定の助成金として創設しました」とあり、助成メニューの一覧表にも「令和8年度末までの時限措置」と注記されています。

気をつけたいのは、「年度内」を何で判定するのかが公表資料から読み取れない点です。訓練開始日か、計画届の提出日か、訓練終了日かによって、逆算すべき日程は変わります。終了間際に駆け込むほど判定基準の違いが日程を左右するので、時期が読みにくい場合は管轄の労働局に早めにご確認ください。計画届は訓練開始日の1か月前までという期限もあり、実務は思うより前倒しになります。

助成率と上限額

助成は経費助成と賃金助成の2本立てです。賃金助成は研修費用の値引きではなく、社員が訓練に出ている時間の人件費に対する別枠の助成です。

区分 経費助成率 賃金助成(1人1時間当たり)
中小企業 75% 1,000円
大企業 60% 500円

経費助成には受講者1人当たりの限度額が訓練時間の区分ごとに設けられ、さらに1事業所が1年度に受給できる助成額は1億円が上限です。

実訓練時間数 中小企業 大企業
10時間以上100時間未満 30万円 20万円
100時間以上200時間未満 40万円 25万円
200時間以上 50万円 30万円

中小企業かどうかは、業種ごとの資本金の額または出資の総額と、企業全体で常時雇用する労働者数のいずれか一方を満たせば該当します。

業種 資本金の額または出資の総額 常時雇用する労働者数
小売業(飲食店を含む) 5,000万円以下 50人以下
サービス業 5,000万円以下 100人以下
卸売業 1億円以下 100人以下
その他の業種 3億円以下 300人以下

中小企業なら10時間以上の研修から対象になり、経費助成は1人あたり30万円を限度に対象経費の75%が助成されます。「設備投資加算」の区分や賃金助成の支給限度時間については、労働局でご確認ください。

対象になる訓練の要件

訓練は通常の業務から離れて行うOFF-JTであることが必要です。実施方法は通学制、同時双方向型の通信訓練、eラーニング、通信制、定額制サービスのいずれか。仕事をしながら教えるOJTは対象になりません。

時間の要件は、1コースあたりの実訓練時間数が計画届の提出時と支給申請時のいずれも10時間以上であることです。eラーニングや通信制は標準学習時間が10時間以上または標準学習期間が1か月以上、定額制サービスは修了した訓練の標準学習時間の合計が10時間以上とされ、実施期間1年以内も求められます。

内容面では、職務に関連した訓練であることに加え、事業展開にあたって新たな分野で必要となる専門的な知識・技能を習得させる訓練、事業展開を行わない場合のデジタル化・DX化に関連する訓練、企業内計画に基づき今後従事する予定の職務に必要な訓練のいずれかに当てはまる必要があります。「10時間以上のOFF-JT」と「自社の事業の向かう先とのつながり」が同時に満たされているかが要件の核心です。

受講者は雇用保険被保険者であり、訓練期間中も被保険者であることが前提です。役員だけの研修や業務委託先を集めた研修は想定されていません。

「対象講座一覧」は公表されているのか

結論から言うと、公表されていません。厚生労働省の事業主向けQ&Aには、「この訓練機関のこの訓練を受講すれば助成対象となると厚生労働省が認めた訓練はありますか。」という質問に対して、こう書かれています。

「そのような訓練はありません。業種や受講者の職務と訓練の内容との関連性、実際に行われた訓練内容、経費や賃金の支払い状況などさまざまな要件を審査し、個々のケースごとに助成の可否を判断します。」

講座そのものにお墨付きが与えられるのではなく、「どの会社の、どの職務の人が、どんな内容を受けたか」で判断されます。同じ研修でも、受講者の職務との関連を説明できるかどうかで結論は変わり得ます。講座の事前登録制度があるという記載も見当たりません。

「助成金対象講座」とうたわれていても、それは制度要件に沿った設計という意味で、受給が約束されたものではありません。Q&Aでも「計画届の提出前に、余裕を持って管轄の労働局またはハローワークにご相談ください」と案内されています。

令和8年8月3日の改正で変わったこと

変更点リーフレットは、令和8年8月3日からの変更として「『受講回数の上限』が変更になります」「『対象とならない訓練』が変更になります」の2点を挙げています。

受講回数の上限

受講回数は同一の労働者に対して一の年度で3回まで、eラーニングによる訓練は一の年度で1回までとなりました。年度は「支給申請日を基準とし、4月1日から翌年3月31日まで」を指し、「令和8年8月3日以降に提出された計画届に基づく訓練の受講のみ算入します」とされています。同じ社員に年度内で何本も研修を受けさせる設計にしていた場合は、組み直しが必要です。

汎用的な内容は対象外に

支給要領では、助成対象とならないOFF-JTとして、職務に直接関連しない訓練、職業人として共通して必要となるもの、趣味教養を目的とするもの、法令等で事業主に義務付けられている講習、役職として求められる知識・技能の習得を目的とするものなどが挙げられています。リーフレットは判定理由を「特定の業務への具体的適用を伴わない汎用的内容であるため助成対象外」と表現しています。

判定例も示されています。助成対象となる例は「生成AIを活用して商品提案書の構成案作成、文章生成、修正方法を学ぶ営業担当者向けの訓練」、そしてCO2排出量算定業務を担当する者を対象とする「自社のエネルギー使用量データの収集方法、CO2排出量算定ルールに基づく計算手順を学ぶ訓練」です。対象とならない例は「生成AIを利用するために汎用的なプロンプトの作り方を学ぶ訓練」「DXの概念、デジタル技術の概要、データ活用の考え方を学ぶ訓練」「脱炭素の基本理念や国際情勢、GX化を進める上で企業に求められる対応を学ぶ訓練」です。

この変更には経過措置があるとリーフレットに記載されています。改正前に契約・申込を済ませた訓練の扱いは、労働局にご確認ください。

申請の流れと必要書類

手続きは、訓練前の計画届と訓練後の支給申請の2段階です。計画届は「訓練開始日の6か月前から1か月前までの間に」提出します。支給申請は「訓練終了日の翌日から2か月以内に」。提出先は管轄の都道府県労働局またはハローワークで、雇用関係助成金ポータルによる電子申請も利用できます。計画届で必要になる主な書類は次のとおりです。

  • 様式第1-1号「職業訓練実施計画届」
  • 様式第1-3号「事業展開等実施計画」
  • 参考様式第3号「人事及び人材育成に関する計画」
  • 訓練カリキュラム、受講案内等

ほかに様式第3-1号「対象労働者一覧」、様式第10号「OFF-JT講師要件確認書」、様式第11号「事前確認書」などが必要になる場合があります。支給申請では次の様式が中心です。

  • 様式第4-2号「支給申請書」
  • 様式第5号「賃金助成の内訳」
  • 様式第6-2号「経費助成の内訳」
  • 様式第8-1号ほか「訓練実施状況報告書」
  • 様式第12号「支給申請承諾書(訓練実施者)」
  • 様式第13号「事業所確認票」
  • 様式第17号「賃金要件等確認シート」
  • 様式第28号「受講料等の価格設定に関する疎明書」

様式第28号は、令和8年5月14日の支給要領改正により、以後の支給申請時に提出を求められるようになりました。支給要領では「受講料等が他の講座等と比べて著しく高額に設定されている場合」は対象経費としないとされ、価格設定も審査されます。計画届も支給申請も、作成・提出するのは申請事業主である貴社自身です。様式は改定されるため、厚生労働省の申請書類のページで最新版をご確認ください。

生成AI研修で使う場合の要点

生成AIの研修は、改正で厚生労働省自身が対象・対象外の例を示した数少ない分野です。前の節で見たとおり、一般論としてツールの使い方を学ぶ形にすると通りにくく、受講者の職務で実際に発生している作業に紐づければ要件に近づきます。誰が、どの業務の、どの成果物を作るために使うのかまで落とし込めているかが分かれ目です。10時間以上という要件もあり、半日の入門セミナー1本では足りません。

よくある質問

Q. 大企業でも利用できますか?

利用できます。ただし経費助成は60%、賃金助成は1人1時間あたり500円です。経費助成の1人当たり限度額も、20万円・25万円・30万円と中小企業より低く設定されています。

Q. 助成金を使えば研修費用は無料になりますか?

なりません。厚生労働省は「『訓練経費』は無料になりません」という注意喚起リーフレットを出し、「無料で訓練が受けられます」「後からキャッシュバックがあります」といった勧誘への注意を促しています。訓練経費は申請事業主が全額負担したうえで一部が助成される仕組みで、返金を受ければ不正受給とみなされ、全額返還に加えて延滞金と2割に相当する額の納付が必要になります。

Q. 対象になる講座のリストはどこで見られますか?

そうしたリストは存在しません。厚生労働省のQ&Aには、特定の訓練機関の訓練をあらかじめ助成対象と認める仕組みはなく、業種や受講者の職務と訓練内容との関連性、実際の訓練内容、経費や賃金の支払い状況などを審査して個々に判断すると明記されています。

Q. eラーニングでも対象になりますか?

対象になります。標準学習時間が10時間以上、または標準学習期間が1か月以上であることが要件です。ただし令和8年8月3日以降、eラーニングは同一の労働者に対して一の年度で1回までという上限が設けられました。通学制などを含めた受講回数は一の年度で3回までです。

まとめ

事業展開等リスキリング支援コースは、中小企業なら経費の75%と1時間あたり1,000円の賃金助成が受けられ、10時間以上の研修から対象になる制度です。一方で対象講座のリストはなく、自社の事業の方向性と受講者の職務に訓練内容がどう結びつくかを、計画届の段階で自分の言葉で説明する必要があります。

令和8年8月3日の改正で、その説明の精度はいっそう問われるようになりました。汎用的な内容は対象外とされ、生成AIについても「プロンプトの作り方」ではなく「営業担当者が商品提案書を作る」レベルの具体性が求められています。

しかも令和8年度末までの時限措置で、計画届は訓練開始日の1か月前までという期限があります。助成の可否は労働局の審査で決まりますから、対象になりそうなカリキュラムを組めるかどうかを早めに見極めておくことが、結果的にいちばんの近道になります。

和からでは、職種ごとの実際の業務に沿って生成AIを実習する法人研修を、助成金の活用を前提に設計しています。制度の要件を踏まえたカリキュラム作りから、ご相談いただけます。

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参考にした資料
人材開発支援助成金 支給要領(令和8年8月3日版)
事業展開等リスキリング支援コース 詳細版パンフレット(令和8年8月3日版)
令和8年8月3日からの変更点リーフレット
事業展開等リスキリング支援コース 概要リーフレット(令和8年4月8日版)
人材開発支援助成金 事業主向けQ&A(令和6年10月版)
人材開発支援助成金 申請書類(令和8年5月~)
注意喚起リーフレット「『訓練経費』は無料になりません」
雇用関係助成金の不正受給について(厚生労働省)
人材開発支援助成金(厚生労働省)

※本記事は2026年9月時点の公表資料(支給要領 令和8年8月3日版ほか)に基づく解説です。助成の可否と金額は管轄の労働局の審査で決まります。制度は改正により変更される可能性があるため、最新の情報は厚生労働省の公式ページでご確認ください。

監修/和から株式会社 堀口智之

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