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マスログ

2021/05/30

アインシュタインの発想と特殊相対性理論

※本記事はロマ数トレラン「アインシュタインの特殊相対性理論を原論文で読む」の講師である石山浩一先生による電磁気学と特殊相対論の入門の記事になります。ご興味を持った方は是非ゼミにご参加ください。ガイダンス回は無料となっております。

ロマ数トレラン「アインシュタインの特殊相対性理論を原論文で読む」の詳細、お申し込みはこちらのページよりお願いいたします。⇒https://peatix.com/event/1936779/view

 

特殊相対性理論以前の物理学

どんな物理学の理論も突然生まれたわけではありません。まず、きっかけとなる問題があり、その問題の解決方法として新しい物理理論が生まれます。特殊相対性理論となる論文をアインシュタインが発表したのが1905年ですので、それ以前の物理学についてお話しましょう。

ファラデーが電磁気学に関する主要な法則を発見し、1864年にマクスウェルが電磁気学の法則を4つの方程式にまとめたマクスウェル方程式を発表しました。マクスウェルはその方程式から電磁波の存在を予言しました。そして、光が電磁波であることを示しました。このことは物理学の歴史において非常に重要な意味を持ちます。ニュートンの時代、光が粒子なのか波動なのか、論争がありました。ニュートンは光の粒子説を唱え、ホイヘンスは波動説を唱えました。粒子と波動は物理現象として根本的に異なるものです。粒子には実体がありますが、波動は媒体を伝わっていくエネルギーで実体はありません。全く異なる物理現象です。ニュートンの時代以降、ヤングやフレネルの実験により光は波動であることが次々と示されました。光の干渉、回折が発見され、さらにマクスウェルによって光が波動であることが決定的になりました。しかし、ここで大きな問題にぶつかります。光は真空中でも伝播します。光が波動ならば、媒体は何か?そこで考え出されたのがエーテルです。光はエーテルを媒体として伝播していくと長い間、考えられていました。エーテル説を初めて唱えたのは、フックの法則(バネの法則)で有名なニュートンの論敵フックです。ちなみにフックに影響を与えたのはデカルトの宇宙観です。1887年にマイケルソン・モーレーによってエーテル説を確認するための有名な実験が行われました。しかし、結局エーテルの存在は確認されませんでした。それでも、光が波動であることは疑いようのない事実ですから、当時の物理学者は大いに悩みました。

ローレンツ変換の発見

特殊相対性理論ではガリレオ変換に代わるローレンツ変換が出てきます。しかし、この ローレンツ変換を初めて導いたのはアインシュタインではありません。ローレンツ変換と呼ぶのでお分かりだと思いますが、1905年当時では既に著名であった物理学者ヘンドリック・ローレンツです。ローレンツは電磁気学の分野を中心として、固体電子論や様々な分野で実績を出した大物理学者です。1902年にゼーマン効果の電磁気理論でノーベル賞を受賞しています。

ローレンツはマイケルソン・モーレーの実験の実験事実とエーテルの存在が矛盾しないように、約10年という年月をかけて懸命な努力をしました。そうして生まれたものがローレンツ収縮とローレンツ変換なのです。電磁波が波動である限り、どうしてもエーテルの存在を捨てることができなかったのです。ローレンツはマイケルソン・モーレーの実験でエーテルが確認できなかった理由として、エーテルの中を運動する物体(測定装置)が収縮したためであると説明しました。これが、有名なローレンツ収縮です。物体の長さが短くなること自体、経験的に受入れがたいことなのですが、ローレンツはエーテルによる力によって物体が収縮したのだと考えていたようです。ローレンツ収縮から生み出されたのがローレンツ変換です(1904)。しかし、さらにローレンツ変換にはどうしても受入れがたい問題がありました。物体と一緒に運動する系の時間が静止系に比べて「時間の進み方が遅くなるという」ことがローレンツ変換から導かれるのです。

このことは、ローレンツ変換を見ると簡単にわかります。

ローレンツ変換
\[
\begin{cases}
&x^{\prime}=\frac{x-vt}{\sqrt{1-(v/c)^2}}\\
&y^{\prime}=y\\
&z^{\prime}=z\\
&t^{\prime}=\frac{t-(v/c^2)x}{\sqrt{1-(v/c)^2}}
\end{cases}\]

 
上記の式はある静止系(\(K\))に対して\(x\)方向に速度\(v\)で運動している慣性系(\(K^\prime\))のを仮定した座標変換式です。\(x^\prime=0\)とすると、\(K^\prime\)の原点が\(K\)系から見て\(x=vt\)で運動していることがわかり、これを\(t^\prime\)に代入すると、

\[
t^{\prime}=t\sqrt{1-(v/c)^2}
\]

が導かれます。この式は運動する系の時間の進みが静止系に比べて遅くなることを表しています。物体の速度が光速になると、\(t^\prime=0\)となり時間が止まってしまいます。
数式の意味するところが、あまりにも私達の経験とかけ離れているために、結局のところ、ローレンツは自ら発見した時間の変化を「局所時」と呼んで単なる数学的なテクニックにすぎないと、割り切ってしまったのです。同じ頃、ローレンツの論文を知り、同様なことを考えていた数学者がいます。有名な数学者ポアンカレです。ポアンカレはローレンツ短縮を力学的なものと考えてはいなかったようです。また、局所時や相対性原理の重要性に気づいており、特殊相対性理論にかなり近いところまで達していたようです。アインシュタインがいなくても、いずれポアンカレが特殊相対性理論を発表していたかもしれません。

エーテルの存在意義

エーテルの存在は電磁気学だけでなく、ニュートン力学においても重要な意味を持ちます。ニュートンは絶対空間という特別な静止系を仮定しています。ニュートンの運動方程式が成立つような系(静止しているか、等速直線運動している系を慣性系という)においては、果たして慣性系にいる人が静止しているのか、等速で運動しているのかは区別つきません。これを「ガリレイの相対性原理」と言います。しかし、ニュートンの運動法則が適用できないような系、即ち加速度運動している系(非慣性系)もあります。様々な系が存在するのは何故か?そもそも運動しているか、否かをどうやって見極めるのか?最終的に、ニュートンは運動しているか静止しているか、基準となる絶対静止系である絶対空間を仮定する必要があることに至りました。この絶対空間の存在については、ニュートンの時代以来、ずっと議論が続いていました。

光が波動である証拠が見つかると、光はエーテルを媒体として伝播すると考える以上、エーテルは宇宙に充満しているはずであり、エーテルこそ絶対空間の候補として考えられていたのです。こうして、光が波動である事実によって絶対空間の存在が必要となったのです。しかし、このことは逆にニュートン力学にとっては不都合なことがありました。これまで光の速度を測定した測定結果とマクスウェルによって示された光の速度は光の方向に依らず、一定速度を持つことが示されていたからです。しかも、マイケルソン・モーレーの実験でもそのことが確認されたのですから、ニュートンの速度合成則が成立たないことになり、電磁気学はニュートン力学と矛盾することになります。ニュートン力学は座標変換としてガリレイ変換を前提にしていますが、電磁気学はローレンツ変換に従うのです。これについては私の前回のマスログ「電磁気学と特殊相対性理論の深いつながり」で触れていますので、興味のある方は参照してください。

電磁気学と特殊相対性理論との深いつながり

アインシュタインの特殊相対性理論

結局、このような問題を解決したのは、アインシュタインでした。しかし、アインシュタインのローレンツ変換の導出過程はローレンツやポアンカレと全く異なります。アインシュタインの解決法はエーテルの存在も絶対静止系や絶対時間を捨てることでした。単純な二つの原理(「相対性原理」と「光速度不変の原理」)だけでローレンツ変換を導き、もはやエーテルも絶対空間も仮定せずに、ニュートン力学と電磁気学を整合性のあるものにしました。そのためにとった方法はニュートン力学の修正だったのです。しかしまた、電磁気学が内包する問題も抱えており、その問題をも解決するものでした。その問題とは、ファラデーの法則とローレンツ力の問題でした。ここでは詳しくは述べませんが、電磁誘導は見る立場が変わると全く別の法則を適用しなければならないのに、同じ現象と結果を与えるというのは奇妙なことです。アインシュタインの特殊相対性理論の原論文には、このことが明確に書かれています。

確かにローレンツやポアンカレは特殊相対性理論に近いところに到達していました。しかし、ローレンツやポアンカレがマクスウェル方程式から相対性原理や光速度一定の結論を見いだしたことに対し、アインシュタインは全く逆のアプローチを取りました。つまり、電磁気学に依存しない、信じるに値する原理のみに基づいて、ローレンツ変換を導き、その上でさらに進んで、今まで深く考察されなかった、時間、質量、運動量、エネルギーといった力学概念までも見直し、ニュートン力学の修正をおこないました。これによって、電磁気学とニュートン力学の不整合が解消されたのです。また、それをマクスウェル方程式に適用することで、前述した電磁誘導の問題も解決できたのです。ローレンツやポアンカレに比べて完成度が高いと言わざるを得ません。ただし、特殊相対性理論に関してはアインシュタイン一人の功績というわけにはいきません。

現在、多くの相対性理論の解説書や教科書が出版されていますが、特に教科書においては、特殊相対性理論を説明したものであっても、アインシュタインが発想した道筋そのものではありません。多くのものは効率的かつ現在の学習者に有用に知識を与えるために再構築された特殊相対性理論です。それはそれで良いと思うのですが、アインシュタイン自身がどんな経緯を経て発見に至ったのか?そのプロセスを知ることはとても興味深いものです。そのプロセスを知る最良の道は、アインシュタインの原論文を読むことです。特殊相対性理論の原論文の題名は「運動する物体の電気力学」です。論文のタイトルが示すように特殊相対性理論は電磁気学との深いつながりがあります。幸いなことに原論文を読むために必要な予備知識は大学教養レベルの物理と数学です。世界的な大論文がこの知識レベルで読めることは極めて稀です。だからといって、原論文は簡単だということにはなりませんし、その内容を理解するためには、それなりの思考訓練と努力が必要です。しかし、アインシュタインに興味がある方、相対性理論に興味があり深く理解したい方には、その労力に報われるだけの感動があるものと確信しています。

アインシュタインの天才性と発想

ところで、アインシュタインが数百年に一度の天才と言われる理由は何でしょうか?それは、一般相対性理論にあることは間違いありませんが、一般相対性理論の何が凄いことなのでしょうか?数学的に難解な理論を完成させたことでしょうか?難解な理論は数多くあるので、そうではないことは明らかです。一般相対性理論はリーマン幾何学という難解な幾何学を利用していますが、その幾何学を作り上げたのは数学者リーマンです。別な言い方をすれば、アインシュタインはそれを物理学に応用したに過ぎません。それ自体も凄いことなのですが、私はアインシュタインの天才性はアインシュタインの発想、思考方法にあるのだと考えています。

物理学は過去の多くの偉人の業績の積み重ねで成立っています。(例外の一つとして、一般相対性理論は完全にアインシュタイン一人が完成させたものです。)ですから、物理学者は過去の理論や実験結果、日常の経験に強く影響を受けます。通常はAという理論が出て、その理論が実験で正しいと認められたなら、Aという理論に違反しないようなアイデアで新しい問題に取り組みます。しかし、アインシュタインはAという理論が正しいことを知りながらも、A理論の影響を受けずに自由に発想ができたのです。

その一例が特殊相対性理論においては、エーテルや絶対空間の否定です。しかし、前述したように、それらの否定自体はアインシュタイン独自のアイデアではありません。ところが、エーテルの存在の否定の根拠が他の物理学者と異なるのです。なんと、電磁波、つまり光が波動であることを知りながら、光の粒子説(光量子仮説)を提案したのです。それは、1905年、特殊相対性理論の元となる論文の提出と同年に光量子仮説の論文を出していることからも、アインシュタインは本質を抉り出すためには、光が波動であるという常識を絶対視しない、並外れた発想ができることを示しています。1905年というのは物理学の歴史上、奇跡の年と呼ばれています。それは、特殊相対性理論、光量子仮説、ブラウン運動の論文が出された年で、いずれもノーベル賞受賞級の論文だからです。その全てがアインシュタイン独自の簡単な仮説から展開されています。光量子仮説は光電効果と呼ばれる現象を理論的に説明したもので、量子力学の発端の一つとなりました。そして、発表から17年後の1922年に仮説はコンプトンの実験によって正しさが裏付けられました。これによって、アインシュタインはノーベル賞を受賞しました。

アインシュタインの思考法を論ずるにあたって、アインシュタインの論文において、全ての仮説や原理が極めてシンプルであることは見逃せません。しかも、仮説や原理そのものは、中学生や高校生でも理解できるものばかりです。しかしながら、その仮説や原理は何度も述べているように、常識に囚われないということです。原理はシンプルなのに、出てくる結論は奇想天外であって、しかも実験事実と悉く一致します。つまり、アインシュタインの天才性の一つは、問題解決に必要十分な仮説の発案にあるということです。もちろん、その仮説から理論を完成させる力は言うまでもありません。 

この仮説の発案に当たっては、「思考実験」が用いられたことは有名です。これは物理学者なら誰でもがおこなう、思考方法ではあるのですが、アインシュタインの伝記や解説書にはことさら、「思考実験」という言葉が強調されています。例えば、特殊相対性理論においては原論文において、「同時刻」という時間の概念を考察するために、光による通信を思考実験することで、時間を科学的に定義して、その正当性を議論し再検討しています。これは、ローレンツやポアンカレが電磁気学を足がかりとしてスタートしたのに対し、アインシュタインの原論文を読めばわかるように、いきなり時間の検討からスタートしています。この発想は天才的です。そのために、論理の展開が極めて明快になっています。また、十代の頃から、「光の速度で移動しながら光を見たら光はどう見えるか?」という思考実験を何度もおこなっていたというエピソードは有名です。(凡人からすれば、もはや思考実験ではなく、ただの夢想に終わってしまいますが。)しかし、この思考実験はやがて、光速度不変の原理となって結実したのだと言われています。さらに、一般相対性理論においては、アインシュタインが未だスイスの特許局で働く技師であった頃、「自然落下するエレベーター」の思考実験から「等価原理」という一般相対性理論で極めて重要なアイデアを思いついたそうです。アインシュタイン自身、この時のことを「生涯で最高のひらめき」と呼んでいます。これは一般相対性理論が加速度系と重力を扱うために不可欠な原理です。さらには、「局所慣性系」の考え方をもたらしました。この局所慣性系の表現にリーマン幾何学が必要だったのです。この時、慣性系を扱う特殊相対性理論を慣性系以外の系に拡張する道筋を思いついたのです。アインシュタインは後年、「等価原理」の発想を思いつかなければ、リーマン幾何学が存在しても一般相対性理論は完成できなかったと回想しています。

アインシュタインは「経験や実験事実から仮説に至る道はなく、経験や実験事実からの飛躍が必要だ」と友人への手紙に書いています。その飛躍とは、論理的な思考ではなく、論理からジャンプする「閃き」ということです。しかし、誰もが大ジャンプできるわけではありません。大多数の意見や権威ある学説、常識に囚われない「信念と哲学」が必要です。哲学者でもあり、物理学者でもあるマッハの哲学がアインシュタインに影響を与えたことは有名です。ところで、アインシュタインが生涯、量子力学を受入れることができなかったことを否定的に見る人も多いのですが、それはアインシュタインの哲学・信念が理解できれば、アインシュタインが量子論を受入れない、時代遅れで晩年は独り「統一場理論」を研究する惨めな物理学者であったという批判は的外れだとわかります。アインシュタインはどんな時代においても、常に周囲に影響されなかっただけです。それは、どんな理論も簡単には信用しないという一貫した信念を貫いたに過ぎません。それでも、量子力学への貢献において、極めて重要な功績を残したことは間違いありません。なぜなら、シュレーディンガー方程式の発想の原点は、「物質波」の提唱者であるド・ブロイにアイデアのヒントを与えたのはアインシュタインなのですから。さらに、「量子コンピュータ」の原理である「量子のもつれ」の発見もアインシュタインが関わっているのです。

こうしてみると、物理学の理論は一見、客観的な科学という衣をまとっているように見えて、実は、芸術と同様、インスピレーションや人間の哲学、思考が反映された主観的な産物であることだと思い知らされるのです。そして、アインシュタインという天才が考えた思考の道筋を辿ってみたい、という思いに駆られるのです。

特殊相対性理論の幾何学化と一般相対性理論への道

アインシュタインの論文が発表された2年後の1907年、ミンコフスキーは、アインシュタインの特殊相対性理論を4次元時空という時空間の幾何学的な数学理論に昇華させ、特殊相対性理論をより見通しの良い美しい理論へと再構築しました。これが物理学の幾何学化の始まりです。ミンコフスキーの特殊相対性理論の幾何学化は、アインシュタインの「相対性原理」を表現する上で極めて重要なものです。そればかりか、一般相対性理論への拡張でも必要不可欠なものでした。
特殊相対性理論の場合は、「相対性原理」は「ローレンツ共変」という数学的性質で保証されます。ローレンツ共変というのはローレンツ変換してもマクスウェル方程式が不変なように、ローレンツ変換してもあらゆる物理法則が不変でなければならないということです。そうでなければ、発見された物理法則が特殊相対性理論と矛盾することになり、相対論的効果が考慮されないことになります。

ローレンツ共変性は座標変換をローレンツ変換で定義されるベクトル、テンソルで表すことで自動的に満たされることが数学的に示されます。これは一般相対性理論でも同様です。一般相対性理論の場合は一般座標変換として反変ベクトルや共変ベクトルが定義されます。一般座標変換で定義されるテンソルで物理量を表すことで相対性原理が満たされます。逆に言えば、相対性原理を満たすためには、あらゆる物理量はテンソルで表現されなければならないということになります。ここに物理学におけるテンソルの存在意義があります。テンソルの習得は一般相対性理論を目指す初心者にとっては最初の山場で、多くのテキストはただやみくもに数学的な定義を説明するだけなので挫折しやすい難所です。しかし、なぜ、テンソルを学ばなければならないか?その意義は、それは特殊相対性理論と一般相対性理論のどちらにおいてもテンソルが「相対性原理」を保証するからです。このように特殊相対性理論を幾何学化したことで、特殊相対性理論から一般相対性理論へスムーズに移行できるようになったのです。特殊相対性理論と一般相対性理論の違いは、時空の幾何学的性質を規定する計量テンソルと座標変換が異なることだけで、大きなフレームワークは同じです。特殊相対性理論の計量テンソルはミンコフスキー計量と呼ばれ、非常にシンプルですが、一般相対性理論が扱う時空の幾何学は複雑なので、リーマン計量と呼ばれる複雑な計量テンソルとなります。そのために、一般相対性理論はリーマン幾何学という高度な幾何学が必要となります。いずれにせよ、大きな枠組みは同じなのでミンコフスキー空間の幾何学を学ぶことで、一般相対性理論の数学的基礎の一部を学ぶことができます。

今では、物理学理論の幾何学化は素粒子物理学、物性物理学などに留まらず、その基礎物理学である古典力学(ニュートン力学、解析力学)や電磁気学、量子力学、熱力学、統計力学など、ほとんど全ての物理分野にも適用されています。現在では幾何学だけでなく、数学科の学部及び大学院で学ぶ、ほとんど全ての抽象数学が最新の理論物理の研究には必要となってきました。このような観点から言えば、物理学の高度な数学化の発端は、ミンコフスキーの相対性理論の幾何学化にあるということになります。

物理学を数学的な対象とし、その数学的性質を調べることによって物理的な性質を探求することができるというのは、何とも神秘的です。ガリレイの名言である「自然は数学の言葉で記述されている」という言葉が思い出されます。それにしても、どうして人間の思考の産物である抽象的な数学と自然の物理法則とがこれほど緊密にかつ深遠に結びついているのか、これが最大の神秘のように感じられるのです。

<文/石山浩一>

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