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文系のための量子力学 第二話 古典物理学との衝突

公開日

2021年2月22日

更新日

2021年2月22日

今回は「文系のための量子力学」シリーズ第2回となります。第1回では量子力学誕生のきっかけになった光電効果と、アインシュタインによる「粒子性」の発見についてお話ししました。まだご覧になっていない方は先に第1回をご覧いただくとより分かりやすくなります。

文系のための量子力学 第一話 量子力学の誕生

古典物理学との衝突

1905年にアインシュタインによって示された、光をエネルギーの粒とみなす考え方は、当時の物理学(量子力学以前の物理学を古典物理学と呼ぶことがあります)を根底から覆しかねないものでした。その物理学とは、人類の近代史において火に代わる明かりをもたらす電球、遠隔でも高速に通信を行うことができる電信機などの数々の革新をもたらした、電磁気学と呼ばれる学問です。

1879年に開発された、電気により明かりを得られる白熱電球。誰が最初に電球を開発したかは諸説あります。

電磁気学は18世紀後半に実験物理学者ファラデーと、数学者マクスウェルによってもたらされた理論であり、光は電磁波の一形態であることが明らかにされました。ここで重要なことは、光は「粒」ではなく、「波」なのです。

光が波である根拠に、「回折」と「干渉」と呼ばれる現象があります。

回折」とは波が放射状に広がり、遮蔽物の裏にも回り込む性質です。海で砂遊びをしているときに、砂で小さな防波堤を築いても、防波堤の端から水が回り込んでしまいます。電磁波の1つであるwi-fiが、部屋の隅や、建物の影などにいても届いて通信できる理由は、この現象によって部屋中に電磁波が広がっているからです。

波の回折。波(水色)は遮蔽物(緑)の裏側まで、放射状に広がっていきます。

一方、「干渉」は異なる波どうしが衝突したときに、強めあったり弱めあったりする現象です。波の高い部分どうしが重なったとき、とても大きな波になります。一方高い波と低い波が重なった時は、打ち消しあって波がない状態、いわゆる「」になります。

波の干渉。波の重なり方によって、弱まったり強まったりします。

アニメ「鬼滅の刃」の必殺技の1つ「水の呼吸 拾壱ノ型 凪」は、相手の攻撃を無効にする技ですが、この干渉の性質が利用されているのかもしれません(公式には原理についての発表はなく、個人の意見です)。

アニメ「鬼滅の刃」の必殺技の1つ「水の呼吸 拾壱ノ型 凪」。

閑話休題

光に関するこれらの性質は様々な技術に応用されており、例えばホログフィは映像を回折や干渉させることで立体的に見せる技術です。


19世紀までに行われた光についての実験事実に加えて、マクスウェルが明らかにした電磁波の性質。これらを捨ててまで、光を「波」ではなく「粒」と考える理由が見当たらなかったのです。でも光を粒と考えることで、光電効果をこれ以上なく簡潔に説明できることも事実…。果たして光は波なのか、はたまた粒なのか。

この問いにアインシュタインが提示した結論は、ニュートン力学から始まった古典力学の根幹を引っくり返すものでした。

「光は、波であり、粒である。」

この世界の真実を探求する物理学という学問にあって、こんな曖昧な結論が許されて良いはずがない。当時の権威ある科学者が揃ってアインシュタインに取り合わなかったことも、ご納得いただけたのではないでしょうか。

しかしアインシュタインに続く研究者たちが観測した事実によって、人類はこの事実を直視しなければならない状況に陥ることになります。さらに量子力学は、生みの親であるアインシュタインでさえも想像だにしないような姿を、少しずつ明らかにしていきます…

終わりに

今回は、量子力学が当時の物理学に起こした最初の矛盾についてお話ししました。次回はこの生まれたばかりの理論に挑んだ、あるサッカー選手の話から始まります。

今回登場した電磁気学について興味が出た方は、過去記事にてお話ししていますのでよろしければ合わせてご覧ください。

理論と実験の融合!現代の生活を支える「電気」の理論を生み出した数学者マクスウェル

それではまた。
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アインシュタイン vs. 量子力学 ミクロ世界の実在をめぐる熾烈な知的バトル
森田 邦久 (著) 化学同人

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