【ロマ数トレラン】ファイナンスのための確率微分方程式 セミナー紹介
公開日
2020年12月8日
更新日
2020年12月8日
※本記事はロマ数トレラン「ファイナンスのための確率微分方程式」の講師である坂本昌夫先生によるセミナーの紹介記事になります。ご興味を持った方は是非ゼミにご参加ください。ガイダンス回は無料となっております。
一風変わった積分
2021年1月12日よりロマ数トレラン「ファイナンスのための確率微分方程式」を開講します。本セミナーでは講師側からの一方通行の講義ではなく、いろいろな質問を持ち寄り、日頃から疑問に思っていることを、参加者での間で議論することも行いたいと思っています。また、業務において、当セミナーに関する事柄で、困っていることについても相談に乗れればと思います。
ところで、セミナー開始にあたり、確率積分の特徴について少し述べたいと思います。いわゆる高校数学で学んだ積分(リーマン積分)で、
\[
\int_0^Txdx=\frac{1}{2}T^2
\]
となりますが、確率積分(定義がいくつかありますが、ここでは伊藤積分)では、
\[
\int_0^TW(t)dW(t)=\frac{1}{2}W(T)^2-\frac{1}{2}T
\]
となります。右辺の第2項がリーマン積分と違うところです。この違うところが、いい味を出しています。式を変形してみると、
\[
W(T)^2=2\int_0^TW(t)dW(t)+T
\]
となります。
ここで、左辺の期待値を計算してみます。その前に前提条件を確認します。
\(W(t)\)は、ブラウン運動であり、\({\rm N}(0,t)\)に従います。(正確な定義はセミナーの中で)
従って、\(W(t)\)の期待値は\(0\)、分散は\(t\)になります。(ブラウン運動の特徴は、分散が時間\(t\)である。)以上から、
\begin{align*}
E[W(T)^2]&=E\left[2\int_0^TW(t)dW(t) + T \right]\\
&=2\int_0^TE[W(t)]dW(t)+T\\
&=T
\end{align*}
となります。\(W(T)\)は\({\rm N}(0,T)\)に従い、平均が\(0\)であることから\(E[W(T)^2]\)は分散を表します。たしかに上の積分の結果は\({\rm N}(0,T)\)の分散\(T\)となり、ぴったりと合います。余分と思われた\(\frac{1}{2}T\)が、活きてきます。
さらに、\(W(t)\)の\(n\)乗の積分(\(n\geq1\))は、
\[
\int_0^TW(t)^ndW(t)=\frac{1}{n+1}W(T)^{n+1}-\frac{n}{2}\int_0^TW(t)^{n-1}dt
\]
となります。(伊藤の公式のおかげです。)
以上のように少し変わった積分を当セミナーで学びます。
<文/坂本昌夫>