素粒子物理学入門~超ひも理論への道~
公開日
2021年8月8日
更新日
2021年8月31日
「物質は究極的には一体何でできているのか?」ということに興味がある方は少なくないでしょう。以前は物質の最小単位は原子であるとされていましたが、その原子も原子核と電子からできていることがわかり、更に原子核も陽子と中性子からできていることもわかりました。
これらの粒子の世界には、我々の身近に存在する物体の運動を扱うニュートン力学、いわゆる古典力学を適用することができず、量子力学というミクロの世界を扱う新しい力学が必要になります。微積分や線形代数、確率論、フーリエ解析といった、様々な数学の道具を駆使して作られた量子力学でミクロの世界を理解することができます。
また、これまでに知られていた重力と電磁気力以外にも陽子や中性子同士を結び付ける「強い力」がありますが、これはパイ中間子という素粒子を交換することによって起こると、1935年に湯川秀樹が提唱しました(後にこの業績によりノーベル賞を受賞しています)。さらに、ミクロの世界の現象の一つとして、ベータ崩壊(中性子が崩壊して陽子と電子とニュートリノに分かれる現象)がありますが、これは粒子が変化してしまうため、量子力学でも説明が不十分になってしまいました。そこで作られたのが場の量子論です。この素粒子の基礎理論を学んでいくことで、究極のミクロの世界が見えてきます。
そして研究が進むと陽子や中性子といった核子もクォークといった素粒子からできていることもわかりました。実際にクォークをはじめとして素粒子がいくつも発見され、素粒子を議論するために作られた標準理論は功績を収めてきましたが、それでも限界があります。今まで素粒子は点であると考えられ、大きさはないものとして様々な現象を説明してきました。しかし、考えてみたら不思議です。例えば、電子という素粒子は電荷も質量もあるのに大きさがなかったら、密度が無限大になってしまいます。
これらの疑問を解決する可能性のある新しい素粒子論が提唱されました。自然界には4つの力(強い力、電磁力、弱い力、重力)が存在しますが、これら4つの力を統一的に考えると疑問が解決されそうなのです。それが、超ひも理論(超弦理論)です。この理論では宇宙の初期の様子を理解する上でも期待されています。
本セミナーでは、この現代物理学の最終目標の一つである超ひも理論を理解するために、数学や量子力学の復習から始め、相対性理論を経て、素粒子物理学の基礎を学びます。分野的には難しい分野ではありますが、素粒子を初めて学ぶ方々を対象に、比較的平易なテキストに沿って、理系の大学で物理や数学を学んでない方でも理解できるよう工夫してセミナーを進めていきます。
受講内容
本講座では、数学の復習から始め、基本的にはテキストに沿って基礎的な素粒子について解説していきます。テキストには演習もついていることから理解を深めていき易く構成されています。テキストの数式は比較的多くはないため、別途資料をご用意し、学習していきます。
講義と演習をしながら学んでいくスタイルなので、いまさら聞きづらい、ということでも質問もしやすく、1人で勉強するのが難しいと感じている方にも最適です。
※内容はお客様のご要望等によって変更することがあります。
受講対象
・素粒子に興味のある方
・手を動かして、一緒に数式を追う努力をする方
・高校の理系の数学Ⅲと物理を履修したことがある方
※テキストを理解するための予備知識は、力学、電磁気学、量子力学の初等知識となり、微積分、線形代数、ベクトル解析を履修している方が望ましいですが、履修していない場合でも、第1回目に最低限の計算の仕方や意味の解説を行い、途中途中で説明もしますので、安心してご参加ください。
必要な数学知識
モデルプラン
第 1 回 微積分・線形代数・ベクトル解析の復習
第 2 回 はじめに、素粒子の特徴-粒子性と波動性-
第 3 回 素粒子の特徴-粒子性と波動性続き、素粒子の世界を探る
第 4 回 特殊相対性理論
第 5 回 核力とパイ中間子
第 6 回 ディラック方程式
第 7 回 ニュートリノと弱い相互作用
第 8 回 ハドロンとクォーク
第 9 回 フェルミオンの世代と混合
第 10 回 おわりに、付録、大統一理論そして超ひも理論へ
テキストに書かれている数式は比較的少ない方ですが、その分時間をかけて行間を埋めながら、最初から解説致しますので、心配されなくても大丈夫かと思います。最後までスムーズにセミナーを進めるためにも、一緒に手を動かして計算する努力をして、最後まであきらめない気持ちをお持ちの方をおすすめ致します。