アインシュタインの特殊相対性理論を原論文で読む
公開日
2021年8月8日
更新日
2021年8月8日
現在では特殊相対性理論の入門書は巷に溢れています。入門書も専門書レベルから一般書まで数え切れないほど沢山の本が出版されており、今では「中学生でもわかる」とか漫画でやさしく書かれた本まであります。これほど魅力的な物理学のテーマはない、と言っても過言ではないでしょう。またアインシュタインという天才物理学者に惹かれたという方も多いはずです。実際、アインシュタインの伝記に関わる本も沢山出版されています。
しかし、特殊相対性理論がどんなものか数式レベルで理解できても、アインシュタインの思考過程を忠実に再現した本は専門書でもほとんどありません。アインシュタインが何を考え、どのような思考を辿って特殊相対性理論を生み出したかはアインシュタインの原論文を読むのが一番良いことは相対論の専門家も認めることだと思います。事実、日本の相対論の大家である内山龍雄先生は原論文の「まえがき」にて、そのことを明確に述べています。
どのような物理理論でもまず、意図している課題があり、その課題をどう解決するか、という思考プロセスを経ています。特殊相対性理論も例外ではありません。まず、電磁気学の大きな課題があり、その課題を解決するために生まれたのが特殊相対性理論なのです。ですから、電磁気学を知らなければその課題を理解することはできませんし、どう解決されたかも理解できないのです。
岩波文庫「相対性理論」の原論文「運動する物体の電気力学」は二部構成になっており、一部がいわゆる特殊相対性理論と呼ばれている内容となっていますが、実は一部は二部で展開される電磁気学の問題を解決するための準備編です。その解決の方策として導かれた特殊相対性理論がどのように導かれていくのか?原論文ほど明快に書かれている書物はありません。現在でも第一級の論文と言われている所以です。アインシュタイン独自の天才的な発想と論理の展開は実に見事です。アインシュタインの思考過程を辿ることは、名画に秘められた画家の思いに馳せながら名画を鑑賞することと同じで、相対性理論を深く味わうことができるのではないでしょうか。解説書や教科書はアインシュタインのアイデアに沿いながら書いているように見えて、解説者の視点で都合良く再構成されています。「なぜ、そう考えたのか」それが物理学を学ぶ上で一番重要です。
幸いなことにアインシュタインの特殊相対性理論の原論文は数学的に高度ではありません。しかし、だからといって、簡単だということではありません。やはり、思考の訓練と論理を追っていく根気強い労力が必要となります。その苦労を経て、眺めることのできる眺望は、踏破した登山家だけが味わうことができる感動ではないでしょうか?
受講内容
講座の目的は二つあります。
(1)アインシュタインの思考を辿りながら、如何にして特殊相対性理論が導かれたかを鑑賞し、ニュートン力学や電磁気学の問題が如何に解決されたかを理解すること。
(2)ミンコフスキーの4元ベクトルを用いてローレンツ共変性、幾何学化された特殊相対性理論の基礎を学ぶことで、一般相対性理論の入口まで導くこと。
※内容はお客様のご要望等によって変更することがあります。
受講対象
できれば大学教養レベルの力学、電磁気学のマクスウェル方程式の初歩および数学(微積、特に偏微分、ベクトル解析)を履修した方が望ましいですが、そうでなくても、説明を受けて頑張ってみたいという意欲的な方も歓迎します。
必要な数学知識
モデルプラン
§アインシュタインの特殊相対性理論
・ 原論文 運動学の部(特殊相対性理論)
・ 原論文 電気力学の部
・ E=mc^2について
§ミンコフスキー空間の幾何学
・ ミンコフスキーの4次元時空と4元ベクトル
・ ローレンツ共変性と不変量
・ 反変ベクトルと共変ベクトル
・ ミンコフスキー計量テンソル