内定者にAI研修は必要か|入社前にやる意味と、やってはいけないこと
公開日
2026年9月19日
更新日
2026年9月20日
この記事の主な内容
この記事のポイント
- 内定者向け研修は、入社後の業務研修と分け、参加条件・時間・扱う情報・評価利用を先に確認します。
- 入社前に向くのは、数字の相場観づくりと、AIの出力を確かめる型。向かないのは、自社の実データを使う演習と、業務ツールの操作研修です。
- 「2時間以内」「任意参加」だけで一律に判断せず、実質的な強制、業務性、不参加時の不利益、報酬・費用を個別に確認します。
- 目的は入社後の学びとの接続に置き、選考・配属評価へ使うかどうかを事前に明示します。
まずは結論|やる価値はあるが、内容は新人研修と分けたほうがよい
内定者にもAI研修をやったほうがよいでしょうか、というご相談を実際にいただくことがあります。
実施するかは、目的と参加条件で判断します。入社後の新人研修をそのまま前倒しするのではなく、内定者の立場、扱える情報、アカウント、時間、評価利用を分けて設計します。
目的の一例は、公開情報を使って、数字の桁とAI出力の根拠を確かめる手順を体験することです。業務成果を求める課題や社内データの利用は、入社後の研修と分けます。
入社前の研修に適した内容、避けたい内容
題材には、出典と利用条件を確認できる公開データを使えます。生成AIの回答と元資料を比べ、対象、時点、単位、母数を確認します。演習の難易度は参加者の経験に合わせ、基礎用語と計算例も用意します。
もうひとつの例が、数字の桁を比べる演習です。市場規模や企業データは、定義と公表時点が異なるため、数値を覚えることより、最新の一次情報へ戻る手順を身につけます。
一方、やらないほうがよいこともあります。
自社の実データを使った演習は避けます。内定者はまだ社員ではなく、秘密保持の枠組みが社員と同じではありません。演習用に加工したデータでも、社外に出す前提の管理が必要になります。
社内ツールのアカウントを配って操作を覚えさせるのも、入社前には向きません。入社までに仕様が変わることもありますし、アカウント管理の負荷に見合いません。
そして、課題を出して提出させる形式は慎重に扱う必要があります。内定者の立場では断りにくく、実質的な拘束と受け取られかねません。
和から式|内定者に最初に渡すのは「桁の感覚」
内定者向けのプログラムで最初に扱うのは、計算ではなく桁です。
たとえば「日本の年間の新車販売台数はおよそ何台か」と生成AIに聞くと、それらしい数字が返ってきます。これが100万台なのか、500万台なのか、5,000万台なのか。桁が1つ違えば意味はまったく変わりますが、相場観がなければどれも同じように見えます。
たとえば総務省統計局の人口推計では、2026年7月1日の総人口概算値は1億2,293万人です。研修では「約1.23億人」と丸めた値と、元資料の公表日をセットで扱い、別の数字と比べるときは時点・対象・単位をそろえます。
桁の確認だけで誤りをすべて見つけられるわけではありませんが、明らかな不整合に気づく入口になります。違和感があれば、一次情報の定義と公表時点へ戻ります。
和から式|内定者研修の実施判定シート
カリキュラムより先に、採用・人事・法務の担当者で次の項目を確認します。
- 参加は本当に任意か。不参加や途中退出で不利益がないか
- 日時、所要時間、報酬・賃金、通信費・交通費の扱い
- 課題提出や事前準備があるか。業務に近い内容か
- 使用するデータとAIサービス。アカウントを誰が管理するか
- 回答や発言を選考・配属・評価に使うか。使う場合の説明
- 問い合わせ先、配慮が必要な場合の代替、記録の保存期間
「任意」と書くだけでなく、案内文、出欠の取り方、リマインド、不参加者への連絡まで含めて実態を確認します。労働時間性や報酬の判断は個別事情で変わるため、必要に応じて労働局や専門家へ確認します。
確認に使った一次情報
確認日:2026年8月21日。厚生労働省資料は研修時間の一般的な考え方です。内定者への適用や具体的な支払いの要否は、個別事情を示して専門機関へ確認してください。
内定者向けAI研修を設計するときの5つのポイント
1. 時間だけでなく、参加の実態と扱いを確認する
研修・教育訓練の時間は、使用者の指揮命令下にあるか、事実上参加が強制されているかなどで判断されます。内定者研修は立場や契約関係も含めて個別確認が必要です。時間の長短だけで決めず、案内方法、課題、評価利用、報酬・費用を示して専門機関へ確認します。
2. 題材は公開データに限定する
官公庁の統計や、上場企業のIR資料など、誰でも見られる情報だけを使います。自社データは入社後に回します。
3. 評価しない、順位をつけない
選考や配属評価に使わないのであれば、その旨を事前に明示します。演習では、正解の速さより、出典を開いたか、未確認事項を説明できたかを振り返ります。記録を何に使うかも説明します。
4. 同期どうしで話す時間を必ず入れる
グループ演習を入れる場合は、発言を強制せず、個人作業やチャット回答も選べるようにします。交流の機会にはなりますが、内定辞退を防ぐ効果まで一律に期待しません。
5. 入社後のカリキュラムとつなげて説明する
「今日やったことは、4月の研修のここにつながる」と示します。単発のイベントに見えると、参加の動機が続きません。
2時間で実施する場合の構成例
- 導入(15分) 基準になる数を5つ共有します。人口、世帯数、就業者数、平均給与、業界の市場規模。
- 演習1(30分) 生成AIに公開データを調べさせ、出てきた数字の桁を確かめます。
- 演習2(40分) グループで、AIの出力から「確かめるべき点」を挙げます。答えは出さなくて構いません。
- 共有(20分) 各グループが見つけた確認ポイントを発表します。
- まとめ(15分) 入社後の研修とのつながりを説明します。
オンラインでも実施できます。使用端末、アカウント、画面共有、録画の有無、通信環境への配慮、個人情報を入力しない演習データを事前に確認します。
よくある質問(FAQ)
Q1. 内定者研修は労働時間になりますか
一律には判断できません。厚生労働省は研修一般について、使用者の指揮命令下にある時間や、事実上参加を強制される研修は労働時間に該当すると説明しています。内定者の場合は契約関係や実施実態も示し、労働局や専門家へ確認してください。
Q2. 文系の内定者でもついていけますか
基礎的な割合や掛け算から始められます。専攻だけで判断せず、用語の説明、練習問題、電卓や表計算の利用を用意し、出典・時点・単位を確認できたかを見ます。
Q3. 内定者と新入社員をまとめて実施できますか
合同実施はできますが、参加条件、アカウント、扱える情報、評価利用を内定者側に合わせます。社員向けに社内データや業務システムを扱う場合は、別セッションに分けます。
Q4. 人数が少なくても実施できますか
少人数でも実施できます。グループ対抗を前提にせず、個人演習と講師との対話を中心に組み替えます。人数より、目的と参加条件に合う構成かを確認します。
まとめ|内定者研修は、入社後の学びにつなげる時間
入社前に詰め込めることは多くありません。だからこそ、何を扱うかを慎重に選ぶ必要があります。
入社前に実施するなら、公開情報を使った短い確認演習とし、入社後の研修へどうつながるかを説明します。実施しない選択も含め、参加条件と目的が釣り合っているかを先に判断します。
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<監修/和から株式会社 堀口智之>
→ 新入社員・内定者向けAI研修|AIを正しく使い、数字を疑える力を育てる
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