体調が悪くなった時コロナウイルスに感染している確率を計算してみた(確率的思考入門)
公開日
2020年3月10日
更新日
2024年8月4日
それはふとした出来事から始まりました。
私の知人から相談を受けたのですが、その知人は「花粉症」で咳やくしゃみが頻繁に出てしまうそうで、
「もしかしてコロナ?」
と、仲の良い友人疑われてしまったそうです・・・。
もちろん、その方は毎年季節柄このような症状が出るそうで、
「新型コロナウイルスに感染はしていないと思います。」
とのことです。熱はないし、ふしぶしもいたくないし、症状も花粉症そのもの・・・と考えると、100%ではないにしろ、「99%以上、感染はしていないと思います・・・。」としか答えることのできない状況ではあります。(PCR検査自体をしたとしても陽性判断の精度が100%ではないのです。)
今のマスメディアを通してコロナウイルスのニュースを見てみると、非常に危険で周りにあふれてきている印象しか感じません。「コロナ?」と疑いたくなる気持ちもわかります。直接本人に聞かなくても心の中では、「あの人、コロナなのかな・・・」と疑ってしまうののがむしろ普通になってしまっているのかも。咳をする人からは遠ざかりたくなるこの頃ですので、電車内で咳をした人と周りの人でいざこざがあったとかそういうものもニュースで出てきました(※4)
ということで、体調が悪くなったときにコロナかどうかの確率を計算してみたいと思います。
この記事の主な内容
■体調の悪い人は、コロナなのか?
計算するときには、数字を明確にしないとわかりませんが、わかりやすくお伝えするため簡単な数字で確率の計算を試みたいと思います。(※精密な計算は専門家に任せるとして、あくまでわかりやすく記述します)
まず、「体調の悪さ」がすべて「インフルエンザ」or「花粉症」or「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)」が原因と仮定します。この3つが原因だけ、とはありえないことなんですが(笑)ありえないとしても、仮定するとわかりやすくなるので一旦そのように考えてみましょう。
先日、「コロナウイルスの地域別・年齢別の危険性を数字で分析してみた」記事でも、公開したんですが、「インフルエンザ」にかかる人と言うのは大体日本国内で年間1000万人いるといわれています。今年はちょっと少なめ、約700万人程度(※2)で、例年に比べ数百万人少ないとされております。
そして、今流行時期でもある「花粉症(アレルギー性鼻炎)」。東京都安全研究センターの報告によると、東京都民の花粉症有病率は平成28年のデータで48.8%(※3)で、全国で見ても同程度であると考えられます。なんと5割近い人が花粉症に悩まされています。花粉症になると、くしゃみ、くしゃみ、鼻みず、鼻づまり、目のかゆみ、頭痛も起こります。(人によって症状が違います。)場合によっては「咳」も出たり、熱はほとんど出ないそうですが、出ても微熱程度です。
今のコロナウィルスの感染者状況から見ると現在日本国内に513人(3月9日現在(※1))います。もちろん、この人数はPCR検査を用いて陽性が確定している人数であって、潜在的感染者数を入れた人数ではないので”正確”な人数ではありませんが、一旦500人と仮定して考えていきます。
では、確率を求めてみましょう。体調が悪くなったときに、それがコロナウイルスである条件付き確率は、下記の通り簡単な数式で算出できます。
=「新型コロナウイルス感染陽性の人数」÷「体調が悪くなった人数」
つまり、500÷約6700万=1/約13万人
つまり、13万人体調の悪い人がいたときに、たったの1人がコロナウイルス原因であるというのが現状です。
13万分の1は、非常に小さな確率で、ほぼ起こらないと言っても過言ではないくらい小さな確率です。
(上記の通り、この計算は大胆な計算であり、感染時期がずれていたり、同時期の感染者の計測など行っていないこと、花粉症であれば全員体調が悪いと仮定してしまっていることなど、大きく数字がずれている可能性があります。また、ベイズの定理でいえば、コロナウイルスであるときに体調が悪くなる確率は100%、1である仮定していたりしています。あくまで確率の少なさを感じてもらうのに行っていますのでご了承ください。)
■ゼロではない、という曖昧さ
「13万分の1」・・・、「10万分の1」をも下回る非常に低い確率ですね。もちろん、ネックなのは「ゼロではない」と言うことです。ゼロではないので、100万人も体調が悪い人がいれば、7、8人くらいはコロナウイルスに感染していますが、「体調の悪くなった身近な人」が新型コロナウイルスが原因であるのは非常に小さい確率であると言ってよいと思います。
大切なことは、パニックを起こさないことです。確率的に妥当な判断をすることです。非常に低い確率だということを念頭に捉えておくと、冷静な判断ができるのではないでしょうか。もちろん、小さな確率と言っているだけで、ゼロではありません。この「ゼロではない」というのが非常に厄介で、何事もゼロではないんですよね。
例えば、今日地球にものすごい大きさの隕石が落ちてくる確率と言うのもゼロでは無いわけです。ただ限りなくゼロに近いと言う形です。私やあなたが今日道を歩いていたら突然人に殴られる(笑)確率もゼロではありませんし、今日の帰り道たまたま拾った宝くじで10億円当たる!!確率もゼロではないわけです。
こういう事例を出していくと、非常に小さな確率に翻弄されるのが「意味がありそうか」or「意味がなさそうか」を判断できる目安になるのではないでしょうか。
■実例での確率的思考がなされていない
今回新型コロナウイルスの様々なニュース、情報が行きかう中で浮き彫りになった問題が、「確率的に物事を捉えることの難しさ」です。マスメディアを通してあれだけ危険性を放送されてしまうと、誰しも、危険であると思ってしまうわけです。体調が悪くなればすぐにコロナウイルスかも、と思ってしまうという。
そもそも、義務教育の過程の中で確率的に物事を捉えると言うことを我々はちゃんと学んできていません。いや、正確には、「確率論」は中学、高校のときに少しは学んできています。順列・組み合わせ・樹形図の書き方、コインの表裏の確率、宝くじの当たる確率などなど、多少勉強したのではないでしょうか。
しかし、弊社のような「大人向け数学塾」をさせていただいて感じることは、現実の数字というのが社会の数字とどのぐらいかみ合っているのかという視点で考える方の少なさです。そのため「国内感染者が500人!!」と言われたときにものすごく多いと勘違いしまう方も多いのではないでしょうか。
他、先程からお伝えの通り「感染確率がゼロではない」ところも1つ恐怖の原因になっていると思われます。様々な事故の確率だとか言うのもゼロでは無いですし、それこそ今日、もしかしたら心臓の病、あるいは、脳卒中で倒れてしまうことや交通事故にあう確率もゼロではありません。そんな中1日1日を皆がしっかり生きてるわけです。
「この確率的に物事を捉える」というのちゃんと学べるような社会人向け数字のセミナーを我々でやってるんですが、現実の問題に対する確率で考えることの「難しさ」を感じます。具体的には、こんな問題。
「1%は大きいか、小さいか?」。
即答できる方ってどのくらいいるでしょうか。例えば「100人中1人」という表現です。100人いたら1人起こることではあるのですが、これは元々の人数が「100万人いたら1万人」が対象になってしまう。1%と言うともの小さく聞こえるんですが、1万人といえば非常に大きな人数になるわけですね。
このように、「割合」と「量」を両方とらえていくことが大切なのです。
■まとめ
まとめると、今回コロナに感染する確率はもちろんゼロではないのでその辺は注意が十分必要なのですが、「現時点では混乱するほどではない」と言える数字範囲であることを念頭に置いておきましょう。
これは「新型コロナウイルス」は安全だ・・・、ということでは全くなくて、繰り返している通りウイルスと言うのは指数関数的に増加しパンデミックを起こす・・・というのは特徴ですので、「初動」が非常に大事なのです。1日経つと患者が10%の増加する、というのをどれだけ下げられるか。1%とか、2%とか。できるだけ下げるというのが大切です。そのための自粛活動が行われています。
例え、感染者数が10倍の5000人になったとしても確率が非常に低いことであるには変わりありません。計算してみてください。
日々やることは変わることはないでしょう。「手洗い、うがいの徹底など」しっかりと気をつける点を実施しながら、パニックにならずに日々を過ごしていくのが良いのではないかと思います。
今回は、確率的に物事を考えるという確率的思考を行うことを、コロナウイルスという社会的・世界的課題を通して学びました。
<文/堀口智之>
■参考リンク
(1)新型コロナウイルスに関連した患者の発生について(439~457例目)-厚生労働省
(2)インフルエンザ昨年比400万人減 新型ウイルス対策と暖冬の効果か(ウェザーニュース)
(4)新型コロナ予防でピリピリムードの電車内…そんな中、堂々と咳き込むマスクおじさん その衝撃の姿とは?(Yahoo!ニュース)