マスログ

7月22日は「円周率の日」です。

公開日

2024年7月22日

更新日

2024年7月22日


みなさんこんにちは!和からの数学講師の岡本です。7月22日といえば、そうですね!毎年恒例の「円周率の日」ですね!「え!?なんで円周率?」そんな声も聞こえてきそうなので、今回のマスログでは7月22日がなぜ「円周率の日」なのかを解説していきたいと思います。

1.円周率

まず、キーワードになっている「円周率」について簡単に紹介しておきましょう。これは、「円周の長さが円の直径に比例する」という事実に基づき、直径に掛ける数として登場します。つまり比例定数です。この数は具体的に3.14159265358979…という具合に無限に続く数で、小数では表現しきれません。ちなみに、分数でも表現できないことが知られています。このような数を「無理数」といい、円周率はその代表的な例になります。小数や分数でも正確に表現できないので、数学の世界ではギリシャ文字の\(\pi \)を使って表現します。ちなみに、なぜ\(\pi \)を使うのかというと、「周囲」を表す「perimeter」の頭文字pに由来します(アルファベット\(p\)に対応するギリシャ文字は\(\pi \)です)。

2.何も考えず、22÷7を計算してみてください

さて、突然ですが「22÷7(=22/7)」という割り算を計算してみましょう。
\begin{align*}
22\div 7=3.14285714285714\cdots
\end{align*}
なんと、最初の部分が「3.14」となり、円周率に非常に近い数字となりました!ヨーロッパでは「7月22日」を「22/7」と表記されることから、「7/22」は世界的に「円周率の日」と言われています(なお、大人気漫画「ONE PIECE」の連載開始が1997年7月22日であることから、7月22日は「ONE PIECEの日」とも言われています)。

3.円周率に近い分数は22/7以外にある?

円周率\(\pi \)に近い分数は22/7以外にももちろんあります。しかし、円周率に最も近い2桁以下の既約分数は22/7であることが知られています!実はこのようにうまく分数(整数/整数)で近似できるものに関する数学的な理論が存在します。このほかにも3桁以上の整数を使えば、355/113=3.14159292…や431302721/137287920=3.14159265…といった近似値が知られています。これらの数値は「積分計算」「連分数展開」といった数学的手法を用いることで求めることができます。今回は22/7がどのぐらい良い近似になっているのかを積分を用いて計算する方法をご紹介します。

4.22/7はどれぐらい円周率の良い近似になっているのか?

※以降の話は具体的な計算の話であり、「22/7が円周率にどれぐらい近いのか気になって寝れない…!」という方向けです。
気にならない方はスルーしてもかまいません。

 さて、またもや突然ですが、\(f(x):=\frac{x^4(1-x)^4}{1+x^2}\)という関数を区間\([0, 1]\)で積分してみます。
\begin{align*}
\int_{0}^{1}f(x)dx&=\int_0^1\frac{x^4(1-x)^4}{1+x^2}dx\\
&=\int_0^1\frac{x^8-4x^7+6x^6-4x^5+x^4}{1+x^2}dx\\
&=\int_0^1\frac{(x^2+1)(x^6-4x^5+5x^4-4x^2+4)-4}{1+x^2}dx\\
&=\int_0^1(x^6-4x^5+5x^4-4x^2+4-\frac{4}{1+x^2})dx\\
&=\Big[\frac{1}{7}x^7-\frac{4}{6}x^6+\frac{5}{5}x^5-\frac{4}{3}x^3+4x\Big]_0^1-4\int_0^1\frac{1}{1+x^2}dx\\
&=\frac{1}{7}-\frac{2}{3}+1-\frac{4}{3}+4-4\int_0^1\frac{1}{1+x^2}dx\\
&=\frac{22}{7}-4\int_0^1\frac{1}{1+x^2}dx
\end{align*}
ここで、最後の項の積分は高校数学において重要な計算になります。せっかくなので、解説をしておくと、\(x=\tan\theta\)と置換することで積分区間は\([0, \frac{\pi}{4}]\)となり、\(\frac{dx}{d\theta}=1+\tan^2\theta\)であることから、
\begin{align*}
\int_0^1\frac{1}{1+x^2}dx=\int_0^{\frac{\pi}{4}}\frac{1}{1+\tan^2\theta}\cdot (1+\tan^2 \theta)d\theta=\int_0^{\frac{\pi}{4}}d \theta=\frac{\pi}{4}
\end{align*}
と計算できます。したがって
\begin{align*}
\int_{0}^{1}f(x)dx=\frac{22}{7}-4\int_0^1\frac{1}{1+x^2}dx=\frac{22}{7}-4\cdot \frac{\pi}{4}=\frac{22}{7}-\pi
\end{align*}
という値が得られました。さらに、区間\([0, 1]\)に対して、\(1< 1+x^2 < 2\)が成り立つことから、次のような不等式が成り立ちます。 \begin{align*} \frac{x^4(1-x)^4}{2}< \frac{x^4(1-x)^4}{1+x^2} < \frac{x^4(1-x)^4}{1} \end{align*} ここで\(x^4(1-x)^4\)の、区間\([0, 1]\)における積分は \begin{align*} \int_0^1x^4(1-x)^4dx&=\int_0^1(x^8-4x^7+6x^6-4x^5+x^4)dx\\ &=\Big[\frac{1}{9}x^9-\frac{4}{8}x^8+\frac{6}{7}x^7-\frac{4}{6}x^6+\frac{1}{5}x^5 \Big]_0^1\\ &=\frac{1}{9}-\frac{1}{2}+\frac{6}{7}-\frac{2}{3}+\frac{1}{5}\\ &=\frac{1}{630} \end{align*} となります(なお、これはベータ関数を使って簡単に求めることもできます)。したがって、\(f(x)\)の積分から次のような不等式が得られます。
\begin{align*}
&\frac{1}{2}\int_0^1x^4(1-x)^4dx < \int_0^1\frac{x^4(1-x)^4}{1+x^2}dx < \int_0^1x^4(1-x)^4dx\\ &\Leftrightarrow \frac{1}{1260}<\frac{22}{7}-\pi <\frac{1}{630}\\ &\Leftrightarrow \frac{22}{7}-\frac{1}{630}<\pi<\frac{22}{7}-\frac{1}{1260}\\ &\Leftrightarrow 3.141269841\ldots <\pi<3.142063492\ldots \end{align*} となり、\(22/7\)と\(\pi\)の誤差を具体的に求めることができます!

5.さいごに

いかがでしたでしょうか。この世には2種類の人がいます。7月22日に円周率に想いをはせる人と、そうでない人です。今回の記事を読んでいただいたことで、少しでも前者の割合が大きくなることを切に祈っています。
また、和からでは、算数、中学数学、高校数学、そして大学以降の数学や物理学、統計学の個別授業を実施しています。数学の奥深さを基礎からきっちり学びたい、生涯学習や趣味として数学と接していきたいという方はぜひとも個別カウンセリングにお越しください! 

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<文/岡本健太郎>

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