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歯車計算機械の歴史ー後編【NUMERACYトークライブ】

公開日

2022年5月31日

更新日

2022年5月31日

2021年6月24日、工学院大客員研究員である前山和喜さんをお呼びし、コラボイベント第2弾「計算とは何か―歯車計算機械編-」を開催しました。その一部zoomでのセミナーの様子を記事にして公開します!様々な計算キ、タイガー計算機などの歴史とその魅力とは。前山和喜さんの多様な知識と大人の数トレ教室堀口智之との対談をぜひお楽しみください!

こちらは「コンピューターとは何か―歯車計算機械の歴史編-前編【NUMERACYトークライブ】」の後編になります。
前編は以下のリンクからご覧になれます。⇒「歯車計算機械の歴史編-前編【NUMERACYトークライブ】

計算時代

前山:計算時代について。時代として”計算をする”という時代ですね。
これを見てみると計算の需要があって、それが何かしらの計算手段になって計算の結果が出てくるわけです。

何でもあります。そろばんから手計算、統計機械、交流計算盤、シミュレーター、分類機・ソーター、パンチカードシステム、微分解析機、これはコンピューターでが電子計算機。もうデジタルもアナログもあって、最近で言えば量子コンピューターみたいなものもここに入っているかもしれないわけです。


もう少し歴史学的に捉えてみると、解を得たい対象を持っているデータと、それに対して純数学的にやるのか、数値計算的にやるのか、図を使って計算する図形算か、手回し計算機のような計算機械、あと数表と呼ばれるものを使って数値解を得るというのが近現代性だという話なんです。

つまり、統計とかを取るっていうのが近代ぐらいから始まるんですが、そういう統計とかを大切にする。そういう風に数を使って社会を理解しようとか、社会の問題を解決しようとなったときに、数値を得る。
そういうような枠組みからすると、計算方法の分類は何でもいいんです。

適切に正しく計算の結果さえ出ればいいので、誤差とか計算の精度とか以外は問題にならないんです。ここをブラックボックスとして考えるっていうのが、現代の時代の実践としての計算ですね。

例えば、これは1903年の貯金局のそろばん競技会というもので、女性が多いんですよね。


堀口:ほんとですね。

前川:はい。最近では競技プログラミングというものをやっていたり、基本情報技術者試験とかITパスポートとか、いろんなコンピューターを使う資格があると思うんですが、それは技能を高めることによってコンピューター計算というものを社会の中で実践的にできるようにしようという社会的な枠組みがあるというわけです。

こういう取り組みがあったので日本は計算が得意だったんです。なので、海外と比較したときに同じ時代に同じそろばんが海外にあったとしても日本ほど計算できなかったんです。
日本はこういう競技会とかを行っていたので計算の仕方のノウハウがあったんです

同じように機械式計算機にもあるんですよね。海外だとやっぱり機械式計算機の方が主流になってみんな手回し計算機を使うんですよ。

日本はそろばんのスキルが高かったのでそろばんがやっぱり強いんです。
その観点から、例えば、そろばんと手回し計算機ではどっちの方が信頼できるかという認識があったわけです。

機械の仕組みは、当時の西洋的な考え方からすると強く捉えられていたので機械にやらせることはいいことだという感覚があるんです。ですが、日本においてはその認識が弱かったこともあって、そろばんの方が信頼できるということは当時から書かれていたりします。

堀口:みんなそろばんをできるから、新しい技術に対して少し否定的なところがあったんですね。
逆に、その手回し計算機で計算したときの計算誤差みたいなものは発生しうる状況だったんでしょうか。
もちろん故障によって発生することはあったと思うんですが、その故障もどのぐらいの頻度で起こったんでしょうか。

前山:手回し計算機はほとんど壊れないです。

堀口:そうなんですか、かなり正確なんですね。

前山:もし誤差が出るとしたら計算機がおかしいのではなくて、人間側がおかしいです(笑)

堀口:入力する値がおかしいってことですね。

前山:そうです。それでこういう話なんですよ。


計算の行為をざっくり分解してみると、初めにデータというものがあると認識する足し算引き算などのどの演算の選択するのかどういう計算機を使うのかはすべて人間ですね。
あとは手計算なら全部人間、機械計算のときには、データの入力は人間がやっているものもあれば、だんだんとコンピューターが機械としてやるようになってくるわけです。

ところでみなさん、最近買い物に行った時にQR決済増えていていませんかね。レジでスマホとかをかざすと精算されてそれで支払うような。
バーコードもそうなんですけど、実はバーコードって数字で、頑張れば手計算できるんですよ。
それで、コンピューティング史っていう分野があるんですけど、そこではバーコードの歴史とかも研究されてるんですよ。

堀口:なるほど。確かに、最後にチェックデジット(数の並びお誤りを検知するための検査用の数字のこと)とかってあるじゃないですか。間違えないようにするための仕組みとか、その歴史とかすごく気になりますね。

前山:そうなんです。そこがある種本質だと思っていて、例えば、1とかって難しい漢字で書けるじゃないですか。(壱)
なぜ難しい字を使っているかというと、人間が数を見間違えないようになんです。だから、数をどう扱うかのノウハウって、コンピューター的にチェックデジットを使うことだったり、後は、バーコードでは誤り訂正という考え方を使って一部が欠けていても読見込めることだったりするんです。
これを使うことによってコンピューターが間違えないように読み込むことができるようになっていたりするわけです。

それはできる限り計算というのを機械にやらせたいっていう思想からきているので演算の部分は手計算でなければ機械がやっているし、データの出力の部分も基本的には機械ですけど、例えば、手回し計算機だとこれは人間が見るんですよね。
だから機械計算で書いてありますけど、手回し計算機の場合は人間が見ているので、そこで間違いが多かったりするんです。

堀口:なるほど。

前山:コンピューターの五大要素というものがあるんですが、それを見るとコンピューターの要素として入力と出力っていうのがあるんです。これは結局コンピューターで精度よく計算しても、数字を人間が書いたりするときに、書き間違えるというのが一番多かったということなんです。
なので、コンピューターの要素として入力と出力も含めようというのが、アイデアとして使われているわけです。データの解釈は今のところ人間ですけど、これも全部コンピューターがやるようになってきましたよね。
結局この3つですね。

計算における機械をどれくらい使うかという話で、逆説的に言えば、計算における人間の介在を出来る限り減らすという大きな思想があるわけです。

それはなぜかというと、そもそも人間は計算間違えるし入出力も大変だからという話です。だから、もう計算を含めた数を扱うっていうのは機械がやった方がいいという話になったわけです。なので、自然な流れでだんだん計算っていうものが機械がやるものになってきていると思いますね。

AIとかもそうですね。計算の解釈のところも、コンピューターがやると言った方が人間の変な解釈が入らないからいいっていう考え方になってきているという現代性があります。
つまり、人間の考え方や、想いのが変わってきているというところですね。

堀口:いろいろな解釈がありますね。一局面においていえばある意味AIの出力っていうのも、よかったりしますからね。

前山:これからだんだんとAIが増えてくるじゃないですか。AIが増えているってことが何を意味するのかを歴史家としては考えたいわけですよ。もっと広い計算機械っていうところから見れば、人間が介在を減らしているというふうに理解ができる。

歯車の計算機械とかを見ていくと、時代によってちょっとずつ変化しているんですが、何が変化してるかというと、できる限り人間が機械の入力とか出力をやらないでいいように変化してるんです。

大切なのは「計算」という「行為」だというふうに見て、それを分解するっていうことと、どれだけ拡張されているかという視点で見ることです。

計算機というのは、もともと人間の計算という行為を機械でもできるようにしただけなんだというふうに捉えることができますよね。ですが、コンピューターとか、情報っていう分野で人間中心型の人工知能(人間の思想を取り戻そうとして作られたAI)とか最近よく言われますが、そういうのは歴史的に考えてみれば人間というものの介在を減らそうと機械を発展してきたっていう流れからすると、人間という思想を取り戻そうというのは歴史を知らない人たちが言っている言葉なんじゃないか、というふうにも捉えられるんじゃないかなと僕は思います。

 


 

今回公開する対談の一部はこれで以上となります。お楽しみいただけましたでしょうか。またの対談の機会をぜひお楽しみに!

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<文/尾崎>

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