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数理モデル事始続編~モデルのご利益~

公開日

2021年5月18日

更新日

2021年5月18日


こんにちは。和からの数学講師の岡本です。今日は前回に引き続き、「数理モデル」について考えていこうと思います。前回の内容はこちら

数理モデル事始~あなたはなぜ傘を持ってきたのか~

前回は「傘を持っていくかどうか」という問題について「傘を持つコスト」「雨に濡れるコスト」を使って切り込んでいきました。今回は、ここまでの内容を踏まえて一般化を行い、そこから得られる「ご利益」について解説していきます。

1.前回の設定(復習)

まず、雨に濡れるコストを「10」としました。さらに、傘を持つことのコストはその1/5である「2」と設定し、降水確率60%の日において期待されるコストを、「傘を持つ場合」と「傘を持たない場合」のそれぞれについて計算をしてみました。結果は傘を持つ場合

\begin{align*}
E_{\text{傘あり}}=0.6\times 2+0.4\times 2=2
\end{align*}

であり、傘を持たない場合、

\begin{align*}
E_{\text{傘なし}}0.6\times 10+0.4\times 0=6
\end{align*}

と計算され、「傘を持つ」という選択の方がコストが低く済むことがわかります。
それでは、天気予報がどのようなとき、傘を持って行かない方がいいのかを考えてみましょう。

2.降水確率を\(p\)とする

表題にあるように、降水確率を文字\(p\)でおくことにします。そうすると雨が降らない確率は\(1-p\)となるので、コストの期待値はそれぞれ

\begin{align*}
E_{\text{傘あり}}&=p\times 2+(1-p)\times 2=2\\
E_{\text{傘なし}}&=p\times 10+(1-p)\times 0=10p
\end{align*}

となります。「傘を持っていかない」という判断は傘なしのコストの期待値の方が傘ありの場合より小さいときになります。つまり

\begin{align*}
E_{\text{傘あり}}>E_{\text{傘なし}}\Longleftrightarrow 2>10p \Longleftrightarrow 0.2>p
\end{align*}

と整理され、結論として「降水確率が20%未満の場合、傘を持って行かない方がいい」ということがわかります。このように、「数学モデル」を使うことで、行動や判断を分析することができます。

3.コストを文字で考える

次にコストを一般化してみましょう。たとえば、雨に濡れるコストを\(c\)とおきます。そして傘を持っていくことのコストは\(c\)に比べてどれぐらいの割合かを決めます。通常、雨に濡れるコストより大きくなることはないので、0以上、1以下の実数\(a\)を使ってコストを\(ac\)とすることにします。つまり\(a\)は雨に濡れるコストと傘を持つコストの割合を表し、先ほどの例では\(c=10, a=1/5\)でした。ではこの設定で傘を持って行かないでいい条件を導いてみましょう。

まず、それぞれの期待されるコスト\(E_{\text{傘あり}},E_{\text{傘なし}}\)は

\begin{align*}
E_{\text{傘あり}}&=&p\times ac+(1-p)\times ac=ac\\
E_{\text{傘なし}}&=&p\times c+(1-p)\times 0=pc
\end{align*}

と計算されます。これにより傘を持って行かないでいい条件は

\begin{align*}
E_{\text{傘あり}}>E_{\text{傘なし}}\Longleftrightarrow ac>pc \Longleftrightarrow a>p
\end{align*}

となり、結論は「降水確率\(p\)がコストの比\(a\)未満とき、傘を持って行かない方がいい」ということになります!なんと雨に濡れるコスト\(c\)に直接依存せず、コストの割合と降水確率のみで判断できることがわかりました!

4.さいごに

いかがでしたでしょうか?数理モデルを一般化することにより、\(a>p\)という具合に、全く非自明な条件が判断のカギとなることがわかりました。数理モデルを考えることで、効率よく最適な選択や判断が可能になります。このような数理モデルの理論を学びたい方は和からの個別授業がオススメです。以下のテキストを使って数理モデルの基礎を高校数学程度から進めることができます。

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<文/岡本健太郎>

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