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SPI対策で得られる実践的な仕事力

公開日

2017年3月31日

更新日

2017年3月31日

SPI対策で得られる実践的な仕事力

こんにちは。マスログライターのキグロです。
皆さんはSPIというテストをご存知でしょうか。リクルート社より多くの企業に提供されている適性検査です。受験者の潜在能力が測れると言われているもので、就職試験や転職試験、企業内の昇進試験などに活用されています。

大人のための数学教室「和」では、主に数学の授業を行っていますが、実はSPI非言語分野の対策授業も行っています。
今回は、その対策授業ではどのようなことを教えてもらえるのか、その対策によってどんな能力が身につくのか、実際に授業を行っている先生にインタビューをしてきました。

お話を聞いてきたのは、長年塾講師などをされており、「和」では今年3年目になる山田聖二郎先生です。

《今回お話を伺った山田聖二郎先生》

キグロ:よろしくお願いいたします。

山田先生:よろしくお願いいたします。

キグロ:早速なのですが、SPI対策授業って、どのような人が受けに来ているのでしょうか?

山田先生:新卒でSPIを受ける大学生の方や、正社員への昇格を目指すアルバイトや契約社員の方、あとは社内での昇進や昇給試験を受けようとしている方です。

キグロ:やはりそういう試験では、SPIがよく使われているんですね。

山田先生:そうですね。ですが実は、SPIのような適性検査はSPI以外にもたくさんあるんですよ。

キグロ:そうなんですか?

山田先生:ええ、全部で70種類くらい。

キグロ:多い(笑)。

山田先生:「和」にいらっしゃるお客様では、SPIのほかに「玉手箱」という試験の対策にいらっしゃる方もおります。
※玉手箱:日本エス・エイチ・エル社が実施している適性検査。

山田先生:それで、「玉手箱」では電卓を使える場合が多いので、電卓の使い方を授業で教えたりもしています。

キグロ:電卓の使い方?

山田先生:例えばメモリー機能というのがあるのですが、これをちゃんと使うと、電卓から手を離さずに計算することができるんです。

キグロ:と、いうと?

山田先生:つまり、一度電卓を使い始めたら、計算の途中結果を紙に書いたりせずに、一発で答えが出せるんです。いちいちメモしていたら時間がかかりますから。

キグロ:へえ、そうなんですね!

山田先生:「玉手箱」もSPIも、企業によって電卓がOKだったりNGだったりします。さらに言うと、出題される問題の分野や試験の時間も、場合によって異なるんです。

キグロ:え、そうなんですか? SPIって内容が全部決まっているんじゃ……。

山田先生:内容は決まっているんですが……(資料を取り出す)SPIだけでも、実はこれだけ色んな種類があるんです。

《山田先生が作成したSPIの種類一覧》

山田先生:まず、新卒向けのSPI-Uや社会人向けのSPI-Gなどがあります。それぞれで出題分野が少しずつ変わり、ペーパーテストかWebテストかで試験時間が変わります。「玉手箱」も同じような感じです。

キグロ:なるほど、場合によって違うというのは、こういう意味ですか。

山田先生:それに人によって、必要な目標点が違う場合もあります。なので授業前に、必ずお客様にどの試験を受けるのか、聞き取りを行います。でないと、違う試験の対策授業をしてしまうかもしれませんから。

キグロ:試験によって対策の仕方も違うんですね。

山田先生:そうです。しかも市販されているテキストですと、これらの種類にあまり細かく対応していないんですよ。なので「和」の授業では、まずは全体的な授業を行いますが、途中からは各試験に合わせた授業をしています。

SPIは時間との勝負

キグロ:これ(先ほどのSPIの種類)を見ると、試験時間がかなり短いですよね。

山田先生:そうです。なので対策授業の半分くらいは、計算の工夫の仕方を教えています。

キグロ:例えば?

山田先生:例えば、なるべく方程式を使わないで解くようにしたりとか、小数が出てこないようにしたりとか、1から10までの数の計算で済むようにしたりとか、ですね。

キグロ:それはなんというか、普通の数学の試験とはだいぶ違う考え方が必要になるんですね(笑)。

山田先生:そうですね(笑)。

キグロ:何か例題とかあれば教えて頂ければ……。

山田先生:ええと……(ホワイトボードに式を書き始める)多くのお客様が、普段数学に触れていない方なので、面倒な計算をしてしまうことが多いんですね。例えば、
 13×6×5
を計算するときに、まず13×6=78を計算して、次に78×5を計算しようとします。でもこれは、6×5から計算した方が楽なわけですよ。6×5=30なので、計算上考慮するのは、「3」という小さな数ひとつで済みます。

キグロ:ああ、なるほど。それなら、6×5=30、13×30=390と暗算でも出せますね。繰り上がりの計算もありませんし。

《式を書く山田先生》

山田先生:ほかにも、計算の途中で「10分の6」とかが出てきたときは、約分して「5分の3」とはせず、10分の6のままで置いておくよう指導します。5よりも10の方が、色々と計算が楽ですから。

キグロ:そういうところから教えてくださるんですね。

山田先生:あと面白いのはですね、SPIって選択式なので、それを利用した計算の工夫もできるんです。

キグロ:え、どういうことですか?

山田先生:例えばこんな問題があったんです。
『2600円で仕入れた商品を、定価の4%引きで売ったら、760円の利益になりました。この商品の定価はいくらでしょうか』
普通ならどう解きますか?

キグロ:ええと、「仕入れ値の2600円」と「利益の760円」を足した3360円が「定価の4%引き」の値段ですから、これを0.96で割る……とか。

山田先生:そうですよね、でも3360÷0.96なんて、計算が大変じゃないですか。

キグロ:はい。

山田先生:ところがこれの選択肢が、
 A.2600 B.2800 C.3000 D.3200 E.3500
だったんです。すると、これはもう計算する必要がないんです。

キグロ:あー、なるほど! 3360÷0.96は、(1より小さい数で割るので)3360より大きくなりますが、3360より大きい選択肢はひとつしかないから、それが答えになるんですね。

山田先生:そういうことです。他にも、一の位だけ計算すれば答えがわかっちゃうようなものもあります。だから、真面目に計算しちゃダメなんです(笑)。

キグロ:つまり、ズルができるかどうかを試していると(笑)。

山田先生:そうかもしれません(笑)。

キグロ:でも、なんでそんな問題があるんでしょう? 最後まで計算させた方が良いんじゃ……。

山田先生:おそらく、仕事の現場で実力を発揮できるかどうかを測るためだと思います。例えば会議の時などに必要なのは、細かい計算をすることよりも、大まかな数を把握することじゃないですか。

キグロ:確かに、概数をパッと計算できた方が、会議もスムーズに進みますからね。

山田先生:ええ、なのでそういうことができるかどうかを測るために、こうなっているのだと思います。

キグロ:学校のテストとはだいぶ違う雰囲気の試験なんですね。

山田先生:そうですね。SPIの試験問題は、以前は中学入試のような内容が多かったんですが、最近少しずつ変わってきていて、あまり学校で見かけないような問題が増えています。おそらく現場に即した問題を増やそうとしているためだと思います。

《楽しそうに解説する山田先生》

SPIに必要なのは、計算力より「数の感覚」?

キグロ:先ほど、「授業の半分くらいは計算の工夫を教えている」と仰ってましたけど、そもそも授業の期間はどのくらいなんですか?

山田先生:もちろんお客様によって違いますが……。SPIは範囲が広い上に、先ほどのように特殊な考え方も必要になるので、人によりますがあまり短期間では難しいです。できれば、半年くらい期間が欲しいですね。

キグロ:週1で?

山田先生:ええ。仕事をしながら通って頂いて、最初の半分くらいはSPIの全分野をざっと学習します。そこで一度模擬試験をして習熟度を測り、そこから計算の工夫を教えたり、目標点や試験の種類に合わせた授業をしたりしていきます。

キグロ:でも半年は長いですよね。1ヶ月くらいじゃ無理なんですか?

山田先生:(苦笑)SPIは……これはリクルート社が言っていることですが……少し対策したくらいでは、成績が伸びないんです。というのは、現場で培われた能力とか、その人の潜在能力を測る試験だからです。

キグロ:現場で培われた能力、というのは?

山田先生:例えば、さっきの話と似ていますが、「800円の20%は?」と聞かれたら、真面目に計算しようと思ったら、800×0.2を計算するわけですよね。でも頭の中では、「8×2」しか計算してないわけですよ。

キグロ:まあ……そうですね。

山田先生:ほかにも、「何かの2割が300円でした。元の値段は?」と聞かれたら、これも本来は300÷0.2を計算しなきゃいけませんが、実際は300×5を計算すれば済むわけです。

キグロ:0.2で割るのと、5倍するのは、同じ計算だからですね。

山田先生:SPIでは、こういうことにすぐに気付ける能力を測っているんです。ほら、よく「7割」のことを「7掛け」とか言うじゃないですか。だからみんな、現場ではこういう計算の仕方をしているんですよ。

キグロ:言われてみれば、そういう言い方ありますね。なるほど。

山田先生:ちなみに今パーセントの話をしましたが、パーセントでもほとんど計算しなくて済む問題もあるんです。

キグロ:どういうことですか?

山田先生:例えばよくあるのが、400人の何%が28人になるかを計算する問題などです。これも真面目にやろうとすると、28÷400をやって100倍しなきゃいけないですが、現場では誰もこんなことをやっていません。パーセントは「100に対していくら」という意味ですから、400を100にしてしまえば良いんですね。つまり4で割れば良い。すると28を4で割って、7%だとすぐわかります。

《パーセントの計算を図解する山田先生》

山田先生:学校ではパーセントの計算は、3つの要素のうち2つがわかっていて、残りの1つを計算する、という風に教わるんですね。

キグロ:ええと……ああ、なんでしたっけ、「もとにする量」「比べる量」「%」でしたっけ。

山田先生:そうです、そうです。「そのうち2つがわかっていて、あとの1つを出す」と習うんですが、実はそう考えない方が良い。図に描いたように、4つあるうち3つわかっていると考えた方が良いんですね。

キグロ:言われてみると、私もいつの間にかにそうやって考えていましたね。

山田先生:これがわかっている人は、4つのうち1つが変わったとき、他がどのくらい変わるのか、感覚的にわかります。そういう「数の感覚」のようなものがSPIには必要なんです。

キグロ:難しいですね。数学のようで数学でないというか……。

山田先生:ええ、ええ。お客様の中には、数学はそんなに得意ではないのに、こういう計算は得意な方もいらっしゃいます。おそらく現場で働くうちに、数の感覚が身についているのだと思います。

終わりに~こうした能力を身につけるにはどうしたらよいか

キグロ:ここまでお話頂いたような、SPIに必要な独特の能力というのは、どうやったら身につくものなんでしょうか?

山田先生:う~ん……実は、あまり人の説明を聞いて身につくものではないんですよね。例えばあるお客様は、なかなか計算の工夫の仕方が身につかなかったんです。そもそも数学がものすごく嫌いな方でもありました。
ですが、ある時ついに、それが身についたんですね。ただ、その方法は私が教えた方法ではなかったんです。それでそのお客様が、「こういう理解をしたんだが、これで正しいか」と私に聞いてきまして、私が「完璧に正しいです」と答えたら、パッと笑顔になられました。

キグロ:つまり……教わって理解するというより、自分で考えて理解するようなタイプのものであると。

山田先生:もちろん、教わって理解できる方もたくさんいらっしゃいますが、中にはそういう方もいます。

キグロ:でも自分なりの方法を考えついた方が、忘れにくそうですね。人によっては愛着も沸いて、しっかり身に付きそうです。

山田先生:ええ、そうかもしれませんね。

キグロ:では、今日は長々とありがとうございました。

山田先生:どういたしまして。

以上、SPI非言語分野の対策授業を行っている山田先生へのインタビューでした。
いわゆる「数学」とはちょっと毛色の違う試験ですが、実際に仕事で計算をするときに役立つ能力を測る試験のようですね。
私は「一の位だけ計算して選択肢を選ぶ」のような要領の良い解法がなかなか思いつかない人間なので、こういう要領の良さを測る試験でもあるのかな、と感じました。
対策授業を受けることで、試験の通過はもちろんのこと、仕事にも使える発想が育めそうですね。

(文=キグロ/写真=西原洋佑・キグロ)

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