テキストデータ分析のキホン-第2回:アンケートの自由回答から“本当の改善点”を見つけた話【統計学をやさしく解説】
公開日
2026年1月31日
更新日
2026年4月25日
この記事の主な内容
この記事のポイント
・自由回答100件から「本当の改善点」を見つけた実例
・難しい統計やAIではなく 「絞る → 数える → まとめる」3ステップ で完結
・「機能不足だと思っていたら、本当の問題はオンボーディングだった」という発見
・読み終わったあと、自社のアンケート自由回答にすぐ適用できる手順
満足度3.8、でも「どこを直せばいい?」が分からない
あるサービス企業で、顧客アンケートを実施しました。結果は 満足度3.8/5.0。「悪くないが、突出して良くもない」という、よくある数字です。
報告会で上司が問いかけます。「で、どこを改善すればいいの?」
グラフはある。平均値もある。でも 改善アクションにつながる根拠 がない。これは多くのアンケート分析が陥る典型パターンです。IPA「DX白書2023」によると、データ利活用の取り組みについて、日本企業の約半数が「成果を測定できていない」と回答しており、データはあっても効果が見えにくい状態が広く見られます。
このとき、アンケートには「ご意見・ご要望を自由にお書きください」という自由回答欄がありました。件数は約100件。担当者は最初、こう感じていたといいます。「全部読むのは大変だし、意見もバラバラだし……」
使ったデータは「自由回答100件」だけ
今回のケースで使ったのは、特別な調査でもAI専用データでもありません。
| データ | 内容 | 取得コスト |
|---|---|---|
| 満足度(5段階) | 平均3.8 | 既に集計済み |
| 自由回答欄 | 約100件のテキスト | 追加コストゼロ |
つまり 誰の手元にもある「自由回答テキスト」 こそが、この分析の主役です。
ステップ①:不満コメントだけに「絞る」
最初にやったのは、全件を分析することではありません。100件の中から、
・明らかに不満が書かれているもの
・改善要望が含まれているもの
だけを抜き出しました。結果、約40件が「何らかの不満」を含んでいることが分かりました。
ポイントは、いきなり全件を相手にしないこと。見るべきデータを絞るのが第一歩です。
ステップ②:頻出する言葉を「数える」
次に、不満40件の中で よく使われている言葉 を数えました。専門的には「単語頻度分析」と呼ばれますが、やっていることは単純です。
・同じ言葉が何度も出てこないか
・似た表現が固まっていないか
集計してみると、特定の表現が突出していました。

図1:不満が記録されたコメントの単語頻度集計
「分かりにくい」「最初」「設定」「不安」――。機能の悪口より、「使い始め」の戸惑いを訴える言葉が上位を占めていたのです。
ステップ③:似た意見を「まとめる」
不満コメントを内容ごとにグルーピングします。
| 分類 | 件数 | 例 |
|---|---|---|
| 初期設定が分かりにくい | 14 | 「最初の設定でつまずく」 |
| 操作手順が不安 | 10 | 「どこを押せばいいか不明」 |
| 始め方が分からない | 8 | 「何から手をつければいいか…」 |
| 機能不足 | 5 | 「○○機能が欲しい」 |
| その他 | 3 | 料金・連携など |

図2:不満内容をカテゴリ別に集計した円グラフ
不満40件のうち 約32件(8割)が「使い始め=オンボーディング」に集中 していたのです。当初は「機能追加が必要かも」と疑われていた問題が、実は 機能ではなく導入体験の問題 だったと分かりました。
意外な結論:機能追加でもUI刷新でもなかった
この結果をもとに会社が実施したのは、意外と地味な施策です。
| 当初の想定 | 実際にやったこと |
|---|---|
| 新機能の追加 | → しなかった |
| UI大幅刷新 | → しなかった |
| — | 初回利用時の画面説明を追加 |
| — | つまずきポイントに補足文を追加 |
| — | 「最初にやること」ガイドを作成 |
結果、3か月後 には次の変化が起きました。
・サポートへの問い合わせ件数が減少
・「分かりにくい」という不満が減少
・改善内容を 「お客様の声」を根拠に説明できる ようになった
重要なのは 3つ目。「なぜこの改善をするのか」を、感覚ではなくデータで答えられるようになったことが、社内の合意形成を一気に速くしました。
このケースから学べる3つのこと
1. 難しい統計モデルもAIも不要
やっていることは「絞る → 数える → まとめる」の3ステップ。Excelとメモ帳でできます。
2. データは新しく取らない
すでにあるアンケートの自由回答欄。その「読まれずに眠っているテキスト」が改善の宝庫です。
3. 数字に「理由」を添える
満足度3.8という数字は「何が起きたか」しか語りません。テキストは「なぜそうなったか」を語ります。両方そろってはじめて、改善アクションにつながります。
明日からできる3つのアクション
① 自由回答欄を一度見直す
過去のアンケートに自由回答があれば、まず眺めるだけでOK。読まれていない宝が眠っているはずです。
② 「不満」だけ抜き出す
ポジティブもネガティブも一緒に分析せず、まず不満コメントだけを集めます。
③ 同じ言葉が3回以上出たら印をつける
これだけで、頻出テーマが浮かび上がります。
次回予告
次回は「アンケート」ではなく 商品レビュー・口コミ を題材にします。
「悪くない評価なのに、なぜ売れないのか?」
というよくある疑問に、テキストデータ分析がどう答えるかを見ていきましょう。
<文/岡崎 凌>
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