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教養としての力学-第2回:3秒で時速100kmに達するテスラ、その加速の正体を高校物理で説明してみた【高校物理をやさしく解説】

公開日

2026年4月30日

更新日

2026年4月13日

「テスラって速いらしいね」という会話の中で耳にすることがあります。

しかし、テスラが「速い」と言っているのは速度、つまり最高速度ではありません。発進してから時速100kmに達するまでの時間、つまり「加速性能」が圧倒的だということです。

テスラのモデルSというモデルは、なんと約2〜3秒で時速100kmに達します。これはスーパーカーと呼ばれる高級スポーツカーに匹敵するレベルです。

では、なぜ電気自動車はこれほどの加速ができるのでしょうか。その答えは「加速度」という物理の概念にあります。今回はこれをやさしく解説します。

「速い」と「加速が速い」は全然違う

まず、大事な言葉の整理をしましょう。

日常会話では「速い」という言葉を何にでも使いがちですが、物理の世界では「速さ」と「加速」は明確に区別されます。

たとえばこんな場面を想像してください。

新幹線は時速285kmで走ります。テスラは時速200km程度が最高速度です。つまり最高速度だけで比べると、新幹線の方がはるかに速いのです。

では、なぜテスラが「速い」と話題になるのでしょうか。

それは発進してから速度が上がるまでの鋭さ、つまり加速性能が突出しているからです。信号が青になった瞬間、グッと背中が押しつけられるような感覚で加速する。この「変化の鋭さ」こそが、テスラが注目される理由です。

加速度とは何か?

ここで「加速度」という言葉を正式に説明します。

加速度とは、速度がどれだけ速く変化するかを表す数値です。

【専門用語の解説】加速度(かそくど)
「加速」+「度」という言葉の通り、加速の”度合い”を表します。
速度の変化が大きいほど、加速度は大きくなります。
単位は「m/s²(メートル毎秒毎秒)」ですが、今回は数式なしでイメージだけつかんでください。

たとえば、こんなふうに考えてみましょう。

停車中のA車とB車が同時に発進しました。

A車は10秒かけて時速60kmに達しました。
B車は3秒で時速60kmに達しました。

同じ「時速60kmに達した」という結果でも、B車の方が短い時間で同じ速度に達しています。つまりB車の方が加速度が大きいということです。

【図1】テスラ車と一般車の加速の比較

なぜEVは加速が鋭いのか?

では本題に入りましょう。なぜテスラをはじめとする電気自動車(EV)は、ガソリン車よりも加速が鋭いのでしょうか。

その答えは「力を生み出す仕組みの違い」にあります。

ガソリン車の場合

ガソリン車はエンジンの中でガソリンを爆発させ、その力で車輪を回します。しかしこのエンジン、最大の力を発揮できる回転数が決まっています。

発進直後はエンジンがまだ十分に回っていないため、力が出にくい状態です。アクセルを踏んでもじわじわとしか加速しません。最大の力が出るのは、エンジンがある程度の回転数に達してから。そのため、ギアを何段階にも切り替えながら、少しずつ加速していく必要があります。

EVの場合

一方、電気自動車のモーターは発進した瞬間から最大の力を出せます。

電気はスイッチを入れた瞬間に流れます。エンジンのように「温まるまで待つ」必要がありません。アクセルを踏んだその瞬間から、モーターは全力で回転し、強い力を車輪に伝えます。

この「最初から全力を出せる」という特性が、EVの加速が鋭い最大の理由です。

【専門用語の解説】トルク(torque)
物体を回転させる力の強さのことです。
EVのモーターは発進した瞬間から最大トルクを発揮できます。
ガソリン車はエンジンが回転数を上げないと最大トルクに達しません。
この差が、発進時の加速の鋭さに直結しています。

加速度と「力」はどんな関係がある?

ここで少し視野を広げてみましょう。

加速度が大きいということは、それだけ大きな力が働いているということです。テスラが猛烈に加速できるのは、モーターが発進の瞬間から強い力を出せるから。これは物理の言葉で言い換えると、「大きな力が働くことで、大きな加速度が生まれている」ということです。

【図2】力と加速度の関係

この「力と加速度の関係」を体系的にまとめたのが、次回解説するニュートンの法則です。

「力が大きいほど加速度も大きくなる」「重いものほど同じ力では加速しにくい」といった、私たちが直感的に知っている現象を、ニュートンは数百年前に見事に法則としてまとめました。


まとめ:「加速度」で世界が違って見える

今回学んだことを整理しましょう。

「速さ」と「加速度」は別物です。最高速度が高くなくても、加速度が大きければ「速い」と感じます。テスラが話題になるのは最高速度ではなく、この加速度の大きさです。

そしてEVの加速が鋭い理由は、モーターが発進の瞬間から最大の力(トルク)を出せるという、ガソリン車にはない特性にあります。

物理の言葉を一つ知るだけで、ニュースの見え方が変わってきませんか?「テスラが速い」という話題が、今日から少し違って聞こえるはずです。

次回予告

第3回は、いよいよニュートンの3法則を取り上げます。「力と加速度の関係」を体系化したこの法則は、ロケットが宇宙へ飛び出す仕組みにも直結しています。

イーロン・マスクのSpaceXが使っている物理の基本を、一緒に覗いてみましょう。

<文/岡崎 凌>

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