テキストデータ分析のキホン-第2回:アンケートの自由回答から“本当の改善点”を見つけた話【統計学をやさしく解説】
公開日
2026年1月31日
更新日
2026年1月24日
前回は、「テキストデータ分析とは何か」「数字だけでは分からない“理由”を扱う分析」であることをお話ししました。
今回は、実際の仕事でどう役に立ったのかを、具体的なケースで見ていきます。
舞台は、市場調査や顧客満足度調査を行っている、よくある企業です。
この記事の主な内容
アンケートは取った。でも、次に何をすればいいか分からない
あるサービス企業で、顧客アンケートが実施されました。
・満足度(5段階評価):平均3.8
・「まあ悪くはないが、突出して良いわけでもない」
報告会で上司から出たのは、こんな一言です。
「で、どこを改善すればいいの?」
数字はある。
グラフもある。
でも、改善アクションにつながらない。
実はこのとき、アンケートには「ご意見・ご要望を自由にお書きください」という自由回答欄がありました。
件数は100件ほど。
しかし担当者は、こう感じていました。
「全部読むのは大変だし、意見もバラバラだし……」
ここで使われたのが、テキストデータ分析です。
今回使ったデータは「自由回答の文章」だけ
使ったデータは、とてもシンプルです。
・アンケートの自由回答欄(テキスト)
・件数:約100件
特別な調査でも、AI専用データでもありません。
普段の業務で、誰でも持っているデータです。
まずやったこと①:不満の声だけを取り出す
最初にやったのは、全体を分析することではありません。
自由回答を読んでいき、
・明らかに不満が書かれているもの
・改善要望が含まれているもの
だけを抜き出しました。
すると、100件中およそ40件が「何らかの不満」を含んでいることが分かりました。
ポイント
いきなり難しい分析はしない。
見るべきデータを絞るのが最初の一歩です。
まずやったこと②:よく出てくる言葉を並べてみる
次に、不満コメントの中でよく使われている言葉を数えてみました。
専門用語では「単語頻度分析」と呼ばれますが、やっていることは単純です。
・同じ言葉が何度も出てこないか?
・似た表現が多くないか?
すると、ある言葉が目立っていることに気づきました。
・「分かりにくい」
・「最初が不安」
・「設定が難しい」

【図1:不満が記録されたコメントの単語頻度集計】
見えてきた意外な事実
ここで、担当者はあることに気づきます。
「機能そのものへの不満は、実はそんなに多くない」
当初は、
・機能追加が必要なのでは?
・性能が足りないのでは?
と思われていました。
しかし自由回答を整理してみると、不満の約6割が
「最初の使い方が分からない」ことに集中していたのです。
似た意見をまとめると、改善点が“見える”
次に、不満コメントを内容ごとにまとめました。
・初期設定が分かりにくい
・操作手順が不安
・どこから始めればいいか分からない
すると、不満の大半が
「使い始めの体験(オンボーディング)」に集中していることが明確になりました。

【図2:不満内容をカテゴリ別に集計した円グラフ】
実際に何が変わったのか
この分析結果をもとに、会社がやったことは意外と地味です。
・新機能の追加 → しなかった
・UIの大幅刷新 → しなかった
代わりに、
・初回利用時の画面説明を追加
・よくつまずくポイントに補足文を追加
・「最初にやること」ガイドを作成
を行いました。
その結果、
・問い合わせ件数が減少
・「分かりにくい」という不満が減少
・改善内容をお客様の声を根拠に説明できた
という変化が起きました。
このケースから分かること
この事例で重要なのは、
・難しい統計モデルは使っていない
・AIの専門知識も不要
・既にあるデータしか使っていない
という点です。
それでも、
「何を改善すべきか」
という問いに、
感覚ではなく、根拠を持って答えられるようになりました。
次回予告
次回は、
・アンケートではなく
・商品レビューや口コミ
を使って、
「悪くない評価なのに、なぜ売れないのか?」
が分かったケースを紹介します。
テキストデータ分析が、商品開発や改善にどうつながるのかを見ていきましょう。
<文/岡崎 凌>





