テキストデータ分析のキホン-第3回:商品レビューから“売れなかった本当の理由”が分かった話【統計学をやさしく解説】
公開日
2026年2月1日
更新日
2026年5月6日
この記事の主な内容
この記事のポイント
・★3.5の「悪くないけど売れない」商品の 本当の原因 をレビューから特定した実例
・分析手順は 「分ける → 見つける → まとめる」 の3ステップだけ
・改善したのは 商品そのものではなく「商品説明文」 1か所
・記事を読み終わると、自社レビューに今日から使える視点が身につく
★3.5、悪くないはずの商品がなぜ伸びないのか
あるECサイトで、ある商品の評価が ★3.5/5.0 に張りついていました。星の数で言えば「悪くない」。けれど売上は伸びず、リピート率も低い。担当者の頭にあったのは、こんな疑問です。
「機能には満足してもらえているはずなのに、なぜ売れないのか?」
顧客の声――そのなかでも 商品レビュー は、購入後の本音が出やすいデータです。消費者庁「令和4年度消費者意識基本調査」によると、ECで予約・購入する消費者のうち 「口コミや評価を判断材料にする」人は84.6% にのぼり、購入判断におけるレビューの重要性が公的調査でも裏付けられています。
このとき手元にあったのは、レビュー約300件。担当者はこう感じていました。
「全部目を通すのは大変だし、そもそも何を見ればいいのか……」
使ったデータは「レビュー300件」だけ
| データ | 内容 | 取得コスト |
|---|---|---|
| 星評価 | 平均3.5 | 既に集計済み |
| レビュー本文 | 約300件のテキスト | 追加コストゼロ |
新たな調査もインタビューも行いません。すでに集まっている口コミ を読み直すだけで分析が始まります。
ステップ①:ポジティブとネガティブを「分ける」
まず行ったのは レビューを2分類すること です。
・★1〜2 = 不満レビュー(約60件)
・★4〜5 = 満足レビュー(約180件)
・★3 = 中間レビュー(約60件)
ここで重要なのは、★3の「どっちつかず」レビューに目を向ける ことです。「悪くないけど売れない」商品の答えは、極端な評価より 「微妙な納得感のなさ」 に表れます。
ステップ②:「良いけど○○」のパターンに「絞る」
中間レビューを読み込むと、ある共通パターンが見えてきました。
・「機能は 良いけど、思っていたのと違った」
・「品質は 良いけど、サイズが想像より大きい」
・「使いやすい けど、説明文と印象が違う」
つまり「商品自体への不満」ではなく、「期待値とのズレ」 が中心テーマだったのです。

図1:「良いけど○○」レビューで頻出する不満ワードの棒グラフ
ステップ③:似た不満を「まとめる」
頻出する不満ワードを内容別にグルーピングしました。
| 分類 | 件数 | 具体例 |
|---|---|---|
| イメージとのズレ | 22 | 「写真より地味だった」 |
| サイズ感の誤算 | 18 | 「思ったより大きい/小さい」 |
| 使用シーンの想定違い | 10 | 「アウトドア向けと思ったら違った」 |
| 機能そのものへの不満 | 5 | 「○○できなかった」 |
| その他 | 5 | 梱包・配送など |

図2:レビュー不満内容をカテゴリ別にまとめた円グラフ
不満60件のうち 約42件(7割)が「イメージとのズレ」関連。商品そのものより、購入前の期待値 をどう作るかが本質的な課題でした。
結論:直したのは商品ではなく「商品説明文」
分析結果をもとに、会社が実施したのは「商品説明文の修正」だけでした。
| 当初の想定 | 実際にやったこと |
|---|---|
| 商品仕様の変更 | → しなかった |
| 新機能の追加 | → しなかった |
| — | 商品写真を実物に近い色味に差し替え |
| — | サイズを「手のひらと比較した写真」で明示 |
| — | 想定する使用シーンを文章で具体化 |
変更点は商品ページ1か所のみ。それでも 3か月後:
・★3レビューが減少、★4以上の比率が上昇
・「思っていたのと違った」コメントが大幅に減少
・返品率も低下
売れなかった原因は「商品力」ではなく、商品ページが伝えていたイメージとのギャップ でした。
このケースから学べる3つのこと
1. ★3レビューに本音が眠る
ポジ・ネガの両端だけを見ても見落とす。「微妙な納得感のなさ」が市場のホンネを語ります。
2. 「良いけど○○」を拾う
「○○」の部分にこそ、購入前後のギャップ=改善の種があります。
3. 商品ではなく「伝え方」を疑う
売れない理由を機能不足や品質と決めつけず、まず「期待値の作り方」を点検しましょう。
明日からできる3つのアクション
① 自社のレビューを★ごとに3分類
★1-2/★3/★4-5に分けるだけで、見え方が変わります。
② 中間レビュー(★3)から読む
極端な評価より、「中間」の言葉に伸びしろがあります。
③ 「○○けど△△」表現を抜き書き
ノートに10個並べるだけで、隠れた不満カテゴリが見えてきます。
次回予告
次回は「日報」を題材にします。「残業が減らない、でも理由が分からない」――よくある悩みに、テキストデータ分析がどう答えるかを見ていきましょう。
<文/岡崎 凌>
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