テキストデータ分析のキホン-第4回:日報を分析したら“忙しさの正体”が見えてきた話【統計学をやさしく解説】
公開日
2026年2月2日
更新日
2026年5月6日
この記事の主な内容
この記事のポイント
・「残業が減らない」原因を 日報の自由記述 から特定した実例
・特別なツール不要、「キーワードで絞る → 数える → まとめる」 の3ステップ
・対策は人を増やすことでも仕事を減らすことでもなく 「業務の偏りを直す」 一択
・読み終わったあと、自社の日報をすぐ同じ視点で見直せる
残業が減らない、でも理由が分からない
あるチームで、こんな悩みがありました。月平均の残業時間が減らない。でもメンバーに「忙しい?」と聞くと、返ってくる答えはバラバラ。
・「会議が多くて」
・「資料作成に時間がかかって」
・「問い合わせ対応で手が止まって」
「で、結局どこから手をつければ?」という問いに答えられない――。これは多くの管理職が直面する典型的な状況です。厚生労働省『働き方改革グッドプラクティス2020』でも、働き方改革の出発点は 「労働時間など勤務実態を正確に把握して”見える化”すること」 とされており、業務の見直しに先立って実態の可視化が推奨されています。
このとき担当者の手元にあったのは、毎日メンバーが書いている日報。直近1か月で約100件分のテキストです。
使ったデータは「日報の自由記述100件」
| データ | 内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 勤怠記録 | 出退勤時刻のみ | 「忙しさの中身」は分からない |
| 日報の自由記述 | 1日5〜10行 × 約100件 | すでに毎日蓄積されている |
新しいアンケートを取る必要はありません。毎日積み重なっている日報こそ、忙しさの実態を語る一次データです。
ステップ①:「時間がかかった」表現を「絞る」
最初にやったのは、すべての日報を分析することではありません。次のような表現を含む日報だけを抜き出しました。
・時間がかかった/手間取った
・予定より遅れた
・想定外に時間を取られた
この絞り込みで、100件中およそ45件が「時間がかかった」何かを記録していると分かりました。
ステップ②:頻出する作業内容を「数える」
次に、その45件の中で 「何に」時間がかかっていたか を数えました。

図1:日報内で「時間がかかった」と一緒に出てくる作業内容の頻度
最多は 「資料修正」。会議や問い合わせの数倍の頻度で登場していました。「忙しさの体感」と「実際の時間消費」は、思っていたほど一致していなかったのです。
ステップ③:似た内容を「まとめる」
時間消費の中身をカテゴリ別にグルーピングしました。
| 分類 | 件数 | 具体例 |
|---|---|---|
| 資料の修正・差し替え | 20 | 「上司レビュー後の修正で2時間」 |
| 会議の準備・後処理 | 10 | 「議事録と宿題整理で1時間」 |
| 問い合わせ・割込み対応 | 8 | 「メール対応で30分中断」 |
| 仕様確認・社内調整 | 5 | 「他チームと仕様すり合わせ」 |
| その他 | 2 | 環境構築・出張など |

図2:「忙しさの原因」をカテゴリ別にまとめた円グラフ
時間消費の 約45%が「資料の修正・差し替え」。会議や問い合わせよりも、「いったん作った資料を直す」工数が圧倒的に大きかったのです。
結論:人を増やすのでも、仕事を減らすのでもなかった
チームが選んだ対策は、意外なものでした。
| 当初の想定 | 実際にやったこと |
|---|---|
| 増員 | → しなかった |
| 会議削減 | → しなかった |
| — | 資料テンプレを統一(修正回数を減らす) |
| — | レビュー前に「観点リスト」を共有 |
| — | 初稿時に上司が10分だけチェックする運用 |
変えたのは「資料修正の作り方」だけ。それでも 2か月後 には:
・「修正で時間を取られた」記述が 半減
・残業時間が前月比で減少
・若手メンバーから「方向性が早く見えるようになった」という声
本当の問題は「仕事量」ではなく「仕事の作り方」だったのです。
このケースから学べる3つのこと
1. 体感と実態は一致しない
「忙しい」という主観だけで動くと、的外れな打ち手になります。日報の自由記述が、現場の実態を補正してくれます。
2. キーワード絞り込みは万能
「時間がかかった」「想定外」など、負荷を表す動詞・形容詞 を絞り込み軸に使うのが定石です。
3. 業務量を減らさず、構造を変える
減らすより前に「どこに偏っているか」を可視化し、流れを整える方が早く効きます。
明日からできる3つのアクション
① 自分の日報の検索
過去1か月の日報で「時間がかかった」「予定より」を検索するだけで、傾向が見えます。
② チームメンバーに同じ作業を依頼
1人の傾向は偏ります。チーム全体で集計してこそ、本当のボトルネックが浮かびます。
③ 数値(残業時間)と並べる
日報のテキスト分類と勤怠記録を並べると、「どの活動が時間を食っているか」がはっきり見えます。
次回予告
次回は 顧客からの問い合わせ を題材にします。「丁寧に対応しているのに、問い合わせが減らない」――よくあるサポート業務の悩みに、テキストデータ分析がどう切り込むかを見ていきましょう。
<文/岡崎 凌>
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