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マスログ

2022/07/17

アルキメデスの功績から学ぼう-浮力編-


みなさんこんにちは。和からの数学講師の伊藤です。前回、アルキメデスの記事の続編ということで円周率のお話をしました。今回は、アルキメデスのもう一つの功績である浮力についても考えてみようと思います。

1.浮力のナゾ

まず浮力について考えるために、水中に物体が浮かんでいるとはどういう状態なのかを考えてみましょう。

そもそも地球には重力がはたらいているので、普通はどんな物体でも下に落ちていくことになります。下に落ちないためには、何らかの力が重力と逆向きにかかっていなければなりません。物体が水に浮いているということは、液体の中(もしくは流体の中)でだけはたらく力が存在しているということになります。この力こそが浮力なのですが、では浮力の大きさってどれくらいなのかというと、これが意外と曲者なんです。

浮力の大きさは何で決まるの?と聞かれたら、皆さんは何と答えるでしょうか。理科の授業で浮力の正体を知るまでは、私は物体の密度で決まると思っていました。理由は簡単、なんとなくそんな気がするからです。

ただ、このように考えると、矛盾する現象があるのです。それは、鉄製のボールは水に沈むのに、鉄でできている船は水に浮かぶということです。ということは、大切なのは物体の密度ではなく、むしろ体積なのではないか、という考え方ができるのです。こういった浮力の疑問を解決したのが、古代ギリシャの天才アルキメデスだったわけです。

2.アルキメデスの原理

さて、アルキメデスは、浮力の大きさについてこんな法則を発見しました。

物体が流体から受ける力(つまり浮力の大きさ)は、物体が押し出した流体が受ける重力に等しい

これだけだとイメージがつかないかもしれないので、先ほどの鉄のボールと船の例で見てみましょう。

鉄のボールを水槽に沈めると、水槽の水位がちょっとだけ上がります。この増えた体積が、鉄のボールが押し出した水の量ということになります。アルキメデスが言っているのは、この押し出された水が本来受けていた重力を、鉄のボールが上向きに浮けているということです。

では鉄の船はなぜ水に浮くのかというと、船の中には空洞になっている部分がたくさんあって、同じ鉄でできている船でも押し出す水の量が非常に多いからです。鉄の船が余分に水を押し出せば押し出すほど、それに伴って強い浮力を受けていることになり、おかげで水に浮くことができているということですね。

3.身の回りの浮力を考えてみる

では、私たちの身近なところで浮力の性質を実感できる現象を考えてみましょう。

・風呂桶をお風呂に沈めるには力がいる。

お風呂に入っているときに、水が入った風呂桶は簡単に沈むのに、水が入っていない風呂桶は沈めるのに力がいりますよね。これは、まさに先ほどの船と同じことが起こっています。

風呂桶は軽いので、そもそもかかっている重力が大したことありません。しかし水に沈めるとなると空洞部分の水まで押しのけてしまうことになり、結果的に大きな浮力を受けることになるのです。ところが風呂桶の中に水が入っていると、浮力はそのままに、受ける重力だけが水の分だけ大きくなります。これによって下向きの力が浮力を上回って、風呂桶が沈んでいくというわけですね。

・息を吐くと沈んで、息を吸うと浮く

人間は息を吸った状態だと水に浮けるのに、息を全部吐き出すと沈む、なんてことがありませんか?実はこれも、アルキメデスが提唱した浮力の原理から説明ができます。というのも、本来人間の体の密度は水に近く、ギリギリ水に浮かないくらいにできているそうです。この状態で息をめいっぱい吸い込むと、胸やおなかあたりが膨らみますよね。すると若干体の体積が大きくなるため、押し出す水の量が増えて、それに伴って浮力が大きくなるというわけです。

ちなみにヨーロッパに死海という海があるのですが、ここは通常の海よりも塩分濃度が高くなっています。この海だと、人間は沈むことが難しいと言われています。アルキメデスの原理を思い出してみると、押し出した液体が受けていた重力が浮力になるということでした。ということは、液体が水よりも重い物質であれば、それだけ浮力も大きいということになるです。

死海は塩分濃度が非常に高いので、その分だけ密度が高い液体で、つまり浮力が大きいのです。浮き輪なしでもぷかぷか浮かんで本を読んでいる人の写真を見たことがある方も多いのではないでしょうか。

4.ちなみになんで氷は水に浮くの?

さて、では最後に、氷が水に浮くことについて考えてみましょう。ご存じの通り氷は水からできているのですが、水が状態変化して固体になった氷は、体積が減るのだとしたら押し出す水の量は減るはずです。すると浮力が小さくなるので、氷は水に沈むはずなのです。

ではなぜ氷が沈まないかというと、水という物質が特別な性質を持っているからです。それが、固体になったときに体積が大きくなるという性質です。ペットボトルの飲み物には、よく「凍らせないでください」と書いてありますよね。あれは、水よりも氷の方が体積が大きいから、そのまま凍らせたら中に入っている液体の体積が大きくなって、ペットボトルが破裂してしまう恐れがあるからなんです。

ということで、氷は水よりも体積が大きいので、押し出す水の量が増えてしまって浮力が強まる、というのが、氷が水に浮く理由でした。

5.まとめ

いかがでしたでしょうか。浮力を決める要因は、物体の体積(正確には沈んでいる部分の体積)と、その液体の密度だったというお話でした。日常生活で何気なく目にしている現象の中にも、浮力の考え方で見てみると意外と不思議なことが起こっていた…というものがあるかもしれません。ところで、重たい金属と言えば水銀が思いつくのですが、仮に水銀のお風呂があったとしたら、人間はその上を歩いたりできるのでしょうか?これはちょっと気になりますね(笑)

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<文/伊藤智也>


死海の塩 500g