ベルヌーイ分布とは?期待値・分散の求め方と二項分布との違いをやさしく解説
公開日
2023年1月7日
更新日
2026年7月26日
統計学を学び始めると、最初のほうで出会うのがベルヌーイ分布です。名前は少しいかめしいものの、中身は「成功か失敗か、2通りしかない出来事」を数式で表しただけの、もっともシンプルな確率分布です。
シンプルでありながら、二項分布・幾何分布・負の二項分布といった多くの確率分布の土台になっており、実務ではA/Bテストやコンバージョン率の分析、ロジスティック回帰の前提としても登場します。この記事では、定義から期待値・分散の求め方、二項分布との違いまでをやさしく解説します。
この記事の主な内容
この記事のポイント
・ベルヌーイ分布とは、結果が2通りしかない試行(ベルヌーイ試行)を表す確率分布
・1回の試行で「成功する確率」pだけがパラメータ。とてもシンプル
・期待値はp、分散はp(1−p)。分散はp=0.5のときに最大となる
・ベルヌーイ試行をn回くり返したときの成功回数の分布が、二項分布
結論|ベルヌーイ分布は「1回だけのコイン投げ」の分布
ベルヌーイ分布は、コインを1回だけ投げたときの結果を表す分布だと考えれば十分です。表なら1、裏なら0。表が出る確率をpとすると、それがそのままパラメータになります。期待値はp、分散はp(1−p)。この2つを覚えておけば、統計学の入り口としては合格です。
ベルヌーイ試行とは
まず前提となるベルヌーイ試行から確認しましょう。ベルヌーイ試行とは、結果がちょうど2通りしかない試行のことです。
| ベルヌーイ試行の例 | 結果1(成功=1) | 結果0(失敗=0) |
|---|---|---|
| コインを1回投げる | 表が出る | 裏が出る |
| 試合を1回する | 勝つ | 負ける |
| 製品を1個検査する | 良品である | 不良品である |
| 広告を1回表示する | クリックされる | クリックされない |
| アンケートに1人が回答する | 「はい」と答える | 「いいえ」と答える |
さらに厳密には、ベルヌーイ試行には次の条件が求められます。
・結果が2つだけである
・成功する確率pが毎回同じである
・各試行が互いに影響しない(独立している)
「引いたカードを戻さずに次を引く」ような場合は、確率が毎回変わるためベルヌーイ試行の条件を満たしません。この点は実務でデータを扱うときの重要なチェックポイントになります。
ベルヌーイ分布の定義
ベルヌーイ試行の結果に、成功なら1、失敗なら0という数値を割り当てます。この数値を確率変数Xとしたとき、Xが従う分布がベルヌーイ分布です。
成功する確率をpとすると、確率関数(確率質量関数)は次のように書けます。
P(X=1)=p / P(X=0)=1−p
(それ以外のXでは確率は0)
この2行をひとつの式にまとめると、次のようにも表せます。
P(X=x)=px(1−p)1−x (x=0, 1)
x=1を代入すればp、x=0を代入すれば1−pになることを確かめてみてください。
よく確率密度関数と書かれることがありますが、ベルヌーイ分布は値がとびとび(離散型)なので、正しくは確率質量関数(または確率関数)と呼びます。密度関数は正規分布のような連続型の分布に使う言葉です。
累積分布関数
「X以下になる確率」を表す累積分布関数は、階段状になります。
| xの範囲 | F(x)=P(X≦x) |
|---|---|
| x<0 | 0 |
| 0≦x<1 | 1−p |
| 1≦x | 1 |
ベルヌーイ分布の期待値と分散
期待値は p
期待値(平均)は「値×その確率」をすべて足し合わせたものです。ベルヌーイ分布は値が0と1しかないので、計算はあっという間に終わります。
E(X)=0×(1−p)+1×p=p
0を掛けた項は消えるので、結局pだけが残ります。「表が出る確率が0.3のコインなら、1回投げたときの平均は0.3」——直感どおりの結果です。
分散は p(1−p)
分散は「V(X)=E(X²)−E(X)²」の関係を使うと簡単です。まずE(X²)を求めます。
E(X²)=0²×(1−p)+1²×p=p
Xが0か1しかとらないため、X²もやはり0か1。つまりE(X²)はE(X)と同じpになります。したがって、
V(X)=p−p²=p(1−p)
分散が最大になるのはp=0.5のとき
p(1−p)という式をよく見ると、pが0や1に近いときは小さく、p=0.5のときに最大値0.25をとることが分かります。
| 成功確率 p | 分散 p(1−p) | どういう状態か |
|---|---|---|
| 0.01 | 0.0099 | ほぼ必ず失敗する=結果が読める |
| 0.25 | 0.1875 | やや失敗寄り |
| 0.50 | 0.2500 | まったく予想がつかない(最大) |
| 0.75 | 0.1875 | やや成功寄り |
| 0.99 | 0.0099 | ほぼ必ず成功する=結果が読める |
五分五分のときがいちばんばらつく——これは直感とも一致します。ほぼ確実に起こる(または起こらない)ことは結果が読めるのでばらつきが小さく、五分五分のときこそ結果が読めない。分散はこの「読めなさ」を数値にしたものだと言えます。
モーメント母関数
分布の性質を調べるときに使うモーメント母関数も、同じように2項を足すだけで求まります。
E(etX)=e0×(1−p)+et×p=1−p+pet
このように、ベルヌーイ分布の統計量はX=0の場合とX=1の場合を足すだけで求められます。これがベルヌーイ分布の扱いやすさの理由です。
二項分布との違い
ベルヌーイ分布と混同されやすいのが二項分布です。関係は単純で、ベルヌーイ試行をn回くり返したときの成功回数の分布が二項分布です。
| ベルヌーイ分布 | 二項分布 | |
|---|---|---|
| 何回試行するか | 1回 | n回 |
| Xが表すもの | 成功したか(0か1) | 成功した回数(0〜n) |
| パラメータ | p | n と p |
| 期待値 | p | np |
| 分散 | p(1−p) | np(1−p) |
| 例 | コインを1回投げる | コインを10回投げて表の回数を数える |
言い換えれば、n=1の二項分布がベルヌーイ分布です。この関係が見えると、二項分布の期待値npや分散np(1−p)が「ベルヌーイ分布のp、p(1−p)をn倍しただけ」だと分かり、暗記せずに済みます。
他の分布とのつながり
| 分布 | ベルヌーイ試行との関係 |
|---|---|
| 二項分布 | n回のうち何回成功するか |
| 幾何分布 | 初めて成功するまでに何回かかるか |
| 負の二項分布 | r回成功するまでに何回かかるか |
| ポアソン分布 | 二項分布でnを大きく、pを小さくした極限 |
このように、ベルヌーイ分布は多くの離散分布の出発点になっています。名前は17〜18世紀スイスの数学者ヤコブ・ベルヌーイに由来し、彼の死後1713年に出版された『推測法(Ars Conjectandi)』は、大数の法則を初めて証明した書物としても知られています。
実務ではどこで使うのか
「コイン投げの分布」と聞くと机上の話に思えますが、ビジネスの現場でも次のような場面で顔を出します。
| 場面 | 1回の試行 | 成功確率p |
|---|---|---|
| Webサイトのコンバージョン分析 | 訪問者1人が申し込むかどうか | CVR(申込率) |
| A/Bテスト | 1人がクリックするかどうか | クリック率 |
| 品質管理 | 製品1個が不良かどうか | 不良率 |
| ロジスティック回帰 | 1件が「該当」か「非該当」か | モデルが予測する確率 |
特にロジスティック回帰は、目的変数がベルヌーイ分布に従うと仮定したうえで、成功確率pを説明変数から予測するモデルです。「解約するかしないか」「成約するかしないか」といった二択の予測に広く使われており、ベルヌーイ分布はその理論的な土台になっています。
よくある質問(FAQ)
Q1. ベルヌーイ分布と二項分布の違いは何ですか?
試行回数が違います。ベルヌーイ分布は1回だけの試行の結果(0か1)を表し、二項分布はn回くり返したときの成功回数(0からn)を表します。n=1の二項分布がベルヌーイ分布にあたるため、二項分布の期待値npと分散np(1−p)は、ベルヌーイ分布のpとp(1−p)をn倍したものになっています。
Q2. ベルヌーイ分布の期待値と分散はなぜあの形になるのですか?
Xが0か1しかとらないためです。期待値は0×(1−p)+1×p=pとなり、0を掛けた項が消えてpだけが残ります。分散はV(X)=E(X²)−E(X)²を使い、X²も0か1なのでE(X²)=p。よってp−p²=p(1−p)となります。
Q3. 分散p(1−p)が最大になるのはどんなときですか?
p=0.5のときで、値は0.25です。成功と失敗が五分五分のときにもっとも結果が読めない=ばらつきが大きい、という意味になります。逆にpが0や1に近いほど結果が読めるため、分散は小さくなります。
Q4. ベルヌーイ分布は実務でどう役立ちますか?
コンバージョン率やクリック率、不良率など「起こるか起こらないか」を扱う場面すべてが該当します。特にA/Bテストの結果を統計的に判断するときや、ロジスティック回帰で二択を予測するときの理論的な前提になっています。
まとめ|すべての離散分布の出発点
ベルヌーイ分布は、結果が2通りしかない試行を表す、もっともシンプルな確率分布です。パラメータは成功確率pだけ。期待値はp、分散はp(1−p)、モーメント母関数は1−p+pet。いずれもX=0の場合とX=1の場合を足し合わせるだけで求められます。
そのシンプルさゆえに、ベルヌーイ分布は二項分布・幾何分布・負の二項分布・ポアソン分布といった多くの離散型分布の考え方に応用されています。ここをしっかり押さえておくことが、確率分布を学ぶうえでの確かな第一歩になります。
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<文/須藤>
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